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96.シスター

彼女達の説得を続けていると、先に子供達を届けてくれたシモンさんが戻ってきた。


トントン…


軽く扉をノックする音がして声をかけてくる。


「リナちゃん…入るよ…」


シモンさんがそっと扉を開くと…


「だ、大丈夫か!?」


リナの服が乱れている事に驚き声をかけた。


「はい、問題ないですよ…みんなは大丈夫でしたか?」


「ああ、あそこのシスターはすごいな…いや、すごいね。子供達と打ち解けてすぐに仲良くなってたよ…」


ゴホッゴホッと声を整えて説明してくれる。


「さすがシスターです」


「それで…まだ来れない子がいるって言ったら手伝いに来てくれて…アリスちゃん達は修道院でみんなと遊んで…くれてます」


エーデル様達が修道院に残ってくれたのだろう、ラキさんも居ないのを見るとエーデル様達の護衛として残ったのかもしれない。


「シスターが!」


私は心強い味方に顔を輝かせた!


「シスター、お願いします」


シモンさんが手を取って中まで案内すると…


「綺麗なお嬢さんありがとう~」


シスターはシモンさんにお礼を言うと部屋の中に入ってきた。


「リナ、久しぶりね。元気そうでよかったわ」


シスターは私の姿をみてにっこりと微笑む。


シスターの笑顔をみて、ほっと肩の荷が降りるような安心感がした。


「そ、その人…誰?」


女の子達がシスターに警戒する。


「あなた達が行く予定だった修道院のシスターですよ」


「あら…行く予定ってもう来れなくなったって事かしら…」


シスターは私達の話を聞いて困り顔を浮かべる。


「そ、それがどうしたの…私達は好きにするから!」


「そうなのね…でも困ったわ。修道院に子供達がたくさん増えてしまって…リナも居なくなったから手伝える子が来てくれるって聞いて本当に助かるって喜んでたのに…」


シスターがはぁ…と眉を下げて大袈裟にため息をついた。


「わ、私達はなんの役にもたたないわ…」


「そうなの?でも同じ気持ちの子供達のそばにいてくれるだけでも嬉しいわ。私はもうこんなおばあちゃんだから、若い子が来てくれると本当に助かるの…ねぇ、少しだけでいいから手伝ってくれないかしら…」


シスターは助けを求めるように彼女達を見つめる。


「でも…」


「もし少しの間だけでも来てくれたら、おいしいパンの作り方を教えてあげるわ!あと甘いジャムもね。作り方を覚えれば町に出て働く事も出来るかも知れないわよ」


「シスターのパンは最高ですからね!」


リナも太鼓判をおす。


「どうかしら?悪くない取り引きよ。私はあなた達が来てくれて助かる。みんなは仕事を覚えて好きな時に出ていく。修道院に内側に鍵なんて無いから好きな時に出てっていいのよ」


シスターはにっこりと笑いかけて、助けて欲しいと三人に手を伸ばした。


「ほ、本当に好きな時に出てくわよ…」


「ええ、もちろん」


「パン…作れるようになるの?」


「とびっきり美味しいのを教えるわ」


「ジャムって…どうやって…」


「ふふ、裏の森にたくさんのベリーが実ってるのよ。それをみんなで摘んでジャムにするのよ」


「ジャムは町で売ったりするのよ。結構評判いいんだから」


リナが付け加えると、目の奥が少し光を取り戻したような気がする。


「それ…楽しそう」


「ええ、楽しかったらいつまでもいてくれていいのよ。私がとっても助かるからね」


「しょ、しょうが無いから少しだけ…手伝ってあげるわ…」


「私も…」


「うん」


彼女達は頷き合うとシスターと行くことを決めた。


「ありがとう~みんなとっても優しくていい子達ね」


シスターは三人を引き寄せると優しく抱きしめた。


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