87.安心する場所
リナは赤くなった頬を押さえながら騎士団での事を説明すると…
「それは大変ね、でもリナさんなら適任だわ」
「ええ、アリスちゃんの事は私達が見ておくわ」
二人とも快くアリスちゃんの事を預かってくれると言う。
「ありがとうございます。アリスちゃん…私少し用事があるんだけど…お留守番できるかな?」
心配そうに見つめるアリスちゃんに目線を合わせて聞いてみる。
アリスちゃんは少し寂しそうな顔をすると…
「アリスちゃん、私がいるから平気よね!?今日は一緒に寝ましょ!」
セーラちゃんがナイスアシストをしてくれた。
「セーラおねえちゃんと…ねるの?」
少しワクワクした顔を見せる。
「うん!一緒にお風呂に入って一緒に寝るの!それでね…夜にこっそりお菓子食べましょ…」
セーラ様がアリスちゃんに何か耳打ちすると、アリスちゃんの顔が輝いた!
「うん!たべる!リナ、アリスセーラおねえちゃんといいこにまってる」
「アリスちゃんいいこだね!セーラ様ありがとうございます」
リナはセーラ様に深く頭を下げた。
「私はアリスちゃんのお姉さんだから、リナは気にしないで行ってきてね」
「まぁこの子ったらリナさんの真似をしてるのね」
「本当にしっかりして…」
フレア様とエーデル様もセーラ様の成長に感動していた。
「ありがとう、じゃあアリスちゃん必ず帰ってくるから待っててね。あっそうだ!これ預かってくれる?」
リナは髪を縛るのに使っていたリボンを解くとアリスちゃんの腕に巻いた。
「リナの?」
アリスちゃんは腕に巻かれたリボンを見つめる。
「うん、必ず帰ってくるって約束のお守り」
「わかった…まってる!」
アリスちゃんは嬉しそうにリボンを触った。
フレア様達にアリスちゃんを任せてリナは急いでルーカスの元に戻った。
「おまたせしました!」
「え?あっ…も、もう来たのか?」
ルーカスさんはぼーっとしていて、リナが声をかけるとハッと我に返った。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫…じゃあ馬で行くが問題ないか?」
「う、馬ですか…」
ルーカスが馬を引いてくるとその大きさにたじろぐ。
「俺の前に乗せる、絶対に落とさないから安心してくれ」
「はい、ルーカスさんの事は信じてますが…馬に乗るのは後にも前にも初めてで…」
ルーカスは少し怯えてるリナを見て笑うと、ヒョイッと馬に跨った。
上から見下ろして手を差し出す。
「さぁ」
爽やかな笑顔で手を出されて思わずその手を掴むと、グイッと持ち上げられた。
そのまま馬の背に乗せられると、何処に掴まればいいのかわからずにルーカスさんに抱きついた。
「ど、何処を持てば!?」
「えっ!?あっ!いや…馬のたてがみ…いやそのまま俺に掴まってればいい」
ルーカスさんのたくましい腕がリナを抱きしめた。
その腕に抱かれてようやくほっとする。
ルーカスさんの腕の中がとっても安心する場所になっていた。
「じゃあ急ぐぞ」
「はい…」
真っ直ぐに前を向いて走り出すルーカスさんの顔を見上げると…頬の赤らみを隠せそうになかった。