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59.光

ルーカスはバーンズ侯爵の屋敷に早馬で駆けつけた。


「すみません!!バーンズ侯爵にお目通り願いたい!」


馬を降りるなり門番に駆け寄った!


「すみませんが約束のない方はお帰りください。今日はこの後来客の予定はありません」


門番達は固くその門を閉じた。


「このっ!騎士のルーカスがアリスの件で来たと言ってくれ!それでわかるはずだ!」


「すみませんが今日は誰も通すなと言われております」


「アリス!アリスいるんだろ!俺だ!ルーカスだ!」


ルーカスは止める門番を無視して屋敷に向かって大声をあげた。


「おい!いい加減にしろよ」


「こいつを捕まえろ!」


門番達はルーカスを両脇から押さえつけた。


「おい!離せ!アリス!リナ!居るんだろ!?」


ルーカスは両腕を振り回すと門番達が吹き飛ばされる。


「ぎゃ!」


「ルーカスさん!落ち着いて下さい!」


暴れるルーカスを遅れて到着した騎士達が取り押さえた。


「全く…なんの騒ぎだ…」


すると騒ぎにバーンズ侯爵が門を開けて出てきた。


「この野郎…」


ルーカスはバーンズを睨みつけると大声をあげる!


「アリスは何処だ!」


「これはこれは…騎士様が子供一人に酷いもんだ。こちらはちゃんと手続きをして彼女を迎え入れたんだが?」


「勝手に攫うように連れて行って何を言う!俺がアリスを育てられないとでも!?」


「実際君はアリスを迷子にして、しかも怪我をさせたと聞いたが?それに使えない使用人のせいで危ない目にも遭わせたとか…」


「使えない使用人?まさか…リナの事を言ってるんじゃないだろうな…」


ルーカスは拳を震わせてギロッとバーンズを睨みつける。


その顔に押さえていた仲間達も背筋が寒くなった。


ゾクッと変な汗が背中を伝う。


「と、突然やってきて本当に無礼な若者だ…騎士としてもどうなのだ」


バーンズも顔を引きつらせながらもどうにか悪態をついていた。


「アリスを出せ…」


唸るような低い声にさすがのバーンズも顔色を変えた。


「い、いい加減にしてもらいたいな…こういう輩は本人から言ってもらうのに限るな、おい!アリスを呼べ」


バーンズは隣で怯えていた従者に声をかけた。


すると屋敷から綺麗なドレスに身を包んだアリスが従者に連れられて無表情で出てきた。


「アリス!」


ルーカスはアリスの姿を見てホッとすると声をかけた…


アリスは一瞬ピクっと反応するが目を合わせようとはしない…


「アリス?どうした、迎えに来たぞ一緒に帰ろう!」


ルーカスの問いかけにアリスは反応を示さない。


するとバーンズはアリスの横に立ってその小さな肩に手を置いた。


「アリス、このわからず屋に言ってやりなさい。どこに居たいのかを…ああ、そう言えば声が出せなかったね。なら頷いてあげなさい、お前は望んで私のところにいるのだと…」


アリスは一瞬躊躇った後に顔をあげるとルーカスを見つめた、そしてコクリと頷く。


「は?アリス…それ本気で言ってるのか?」


コクっと小さくアリスは今一度頷く。


「俺よりそいつがいいのか…」


「ん…」


アリスの肯定する小さな声にルーカスは心臓がギュッと握りつぶされるような気持ちがした。


「君の馬小屋のような家は令嬢が暮らすようなところではない!あんなみすぼらしい格好をさせて…可哀想に。ここにいればなんでも買ってなんでも与えてあげるからね」


バーンズはニコニコと笑いながらよく出来ましたとアリスの頭を何度も撫でた。


その度にアリスの瞳から光が失われていくようだった。

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