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56.それぞれ

「ルーカスさん!」


部屋で呆然とアリスのエプロンを握りしめていると、ラキが家に慌てた様子でやってきた。


「ラキ…?」


ルーカスは顔をあげると…


「大変です!今団長から呼びだしが…アリスちゃんの事で!」


「アリスの!?何かあったのか!?」


「ルーカスの後見人が取り消されて、バーンズ侯爵が後見人になったそうです!」


「バーンズ侯爵…あの胡散臭いジジイか!?」


「とりあえず団長のところに!」


ルーカスは頷くとラキと団長の元に向かった!







ルーカスが行くと既に騎士団のみんなが集まっていた…


「団長、どういう事でしょうか!?アリスとリナが何処にもいなくて…」


「え!?二人が居ないのか…クソ…もう既に動かれたか…」


団長が渋い顔をしていると、医師の先生が駆けつけてきた。


「ルーカスさん!アリスちゃんとリナは?」


「先生!リナ達はやっぱり俺の家に向かったんですか!?」


「そ、そうなんだ…もう僕の怪我も良くなったから家に帰るように言うと、ルーカスさんを驚かせたいからと内緒にして欲しいと…すまないこんな事になるとは…」


先生が申し訳ないと頭を下げる。


「いえ、先生のせいではありません…二人の気持ちが嬉しいですから…家に行ったら作りかけの料理とこのエプロンが落ちていて二人は居ませんでした」


「バーンズ侯爵がアリスちゃんの事を何処かで嗅ぎつけたようだ…ルーカスではアリスちゃんの面倒を見られないと申し立てて…」


「確かに俺一人では無理だったかも知れませんが…今ならリナが居るのに」


「そのリナさんもアリスちゃんといる時に問題を起こしたと…しかもまだ庶民だからと信用もなかったようだ…」


団長が苦々しげに顔をしかめる。


「じゃあアリスはバーンズ侯爵のところに?」


「そうかもしれん…この書状がきた」


団長から渡された紙を見ると、アリスの後見人をバーンズ侯爵にするとの内容だった。


「私はこれからこの書状の申し立てを再度してくる!お前はバーンズのところに行け、あれはいい噂を聞かない男だ!」


「すぐに!それで…リナは?」


「リナもバーンズのところに連れていかれたのか…」


「俺はすぐに向かいます!」


「俺も行きます!何かあれば…許さない」


ラキがギュッと拳を握りしめる。


「俺達も行こう!」


「みんな…すまない」


「ルーカスさんの為だけじゃ無いです!俺達だってアリスちゃんとリナちゃんにはお世話になってますから!」


ラキの言葉に騎士団の皆が頷いた。


「それでも言わせてくれ、ありがとう」


ルーカスはみんなに頭を下げた。


「俺は…ちょっと気になることがあるから先に行っててくれ」


シモンは一人思案顔をしていたと思うと別行動を取ると言う。


「わかった」


ルーカスはすぐに頷いた。


シモンがこう言う顔をする時は何か考えがある時で、それはいつも当たっているからだ。


ルーカス達とシモン、それに団長は各々自分の取るべき事に走り出した。

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