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54.疑念

「はじめまして、お嬢さん…」


リナは突然やってきた身なりのいい男性を睨みつけた。


「申し訳ありませんがその子を離して頂けますか?」


その男性は扉を開けたアリスちゃんを掴むと一緒に来ていた従者らしき男達に預けていた。


「んー!んー!」


アリスちゃんは必死に抵抗しようとしているが子供の力ではどうする事も出来ないようだ。


暴れるアリスちゃんを従者は軽々と捕まえている。


「それは出来ないね、この子は今日から私が預かる事になっている。ちゃんと裁判所の許可も貰っているよ」


そういうと一枚の紙を見せた。


私はそれをじっと見つめる。


「ああ、庶民の君には読めないかな?なら教えてあげよう、これはねぇアリス・ラッセルの身柄をこの私、ロナウド・バーンズが後見人とする。とね書いてあるんだ」


「馬鹿にしないで下さい!そのくらい読めます…ですがアリスちゃんはルーカスさんが後見人になっているはずです!」


「この女!バーンズ侯爵になんて口の利き方だ!」


隣の従者が手を振りあげると、それをバーンズ侯爵が止めた。


「待ちなさい、まぁ知らないようだから今回は許そう…だが次はないぞ」


くっ…


侯爵の冷たく見下すような声に体が強ばる。


「そうそう、そのルーカスくんだが勝手にアリスの後見人になってね…しかも最近何度も危ない目に合わせたそうじゃないか…こんな幼い子供を一人にするなんてありえない」


信じられないと大袈裟に首を振っている。


「そ、それは…私が…」


「そういえば君が本来なら面倒を見る立場だったらしいね…これだから若いのは自分達に夢中になり過ぎて子供を蔑ろにしたんだな…」


「ち、違います!ルーカスさんも私もアリスちゃんを大切に大事に思ってます!」


「ならなんでこの子は口が利けない」


侯爵に睨まれて口を噤んだ…


「ちゃんと治療も受けさせずにこんな馬小屋みたいな所で侯爵令嬢を育てるなんて…この事を報告したら後見人に是非とも私をと言って頂いたんだよ…安心しなさい。アリスは私が大切に大切に…可愛がるからね」


ニタリと笑い口を広げるバーンズにリナは寒気がした。


「待って下さい!せめてルーカスさんに会って下さい、そしたらどれだけアリスちゃんを可愛がっているかわかりますから!」


「その必要はない、上からのお達しだ。騎士なら受け入れざるを得ないだろ」


「んー!」


「アリスちゃん…」


私は怯えるアリスちゃんに駆け寄ろうとする!


「おっと…私のアリスに触らないでいただきたい」


するとバーンズ侯爵が行く手を阻んだ。


「アリスちゃんが嫌がってます!離して下さい!」


「この子は何も言ってないが?やれやれこの女が何をするかわかったもんじゃない、アリスは先に連れていくんだ」


「はい!」


従者はアリスちゃんを抱いて外に停めていた馬車に乗ってしまった。


「アリスちゃん!」


バーンズ侯爵の横を通ろうとすると、その腕を掴まれた。


「おっと、まだ話は終わってないぞ」


ギュッと腕を掴まれると痛みに顔を顰めた。


「なんでもお前はルーカスの婚約者になったそうだな…庶民が身の程を知れ。お前のせいであの男の将来が絶たれるぞ」


「え?」


ルーカスさんの事を言われて思わず立ち止まる。


「騎士たる者、結婚する相手は大切だ。お前みたいな女がなれるとでも?」


「でもルーカスさんは…私がいいと…それにブライアン侯爵様に養子にしていただく予定で…」


「なんと!!ブライアン侯爵の養子にだと!?どこまで厚かましいんだ!恥ずかしくないのか?そこまでして騎士の嫁と言う立場を手に入れたいのか?」


「ち、違います!騎士とかではなく私はルーカスさん自身が…」


「ルーカスが好きなら彼を貶めるような真似をするな、彼が大事なら自分から身を引け…」


ルーカスさんの邪魔に私はなっている?


「私が言った意味をよく考える事だ。ああアリスの事は心配するな、ちゃんとルーカスの方にも書状が行ってるはずだからな」


バーンズ侯爵は呆然と立ち尽くすリナに勝ち誇ったようにクスッと笑いかけて出て行った…


リナはどうする事も出来ずにその場から動けずにいた。

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