43.大盛況
「先生！次のこの方はどうすればいいでしょうか？」
「どれ…おい！お前このくらいの怪我で医務室に来るんじゃない！」
先生は騎士の怪我の具合をベッドから遠目に見て顔を顰めた。
私と先生は、途切れる事なく医務室に訪れる騎士様達の手当てに追われていた。
ほぼ半分は擦り傷程度なので、そうするとアリスちゃんの方に並んで貰い、アリスちゃんに傷薬を少し塗る作業をしてもらった。
「アリスちゃん、ありがとう！なんか痛くなくなったよ！」
「アリスちゃん、ここもお願い出来る？」
騎士様達は怪我をしてるはずなのに、ニコニコとご機嫌に笑いながら傷を手当てしてもらっている。
「リナ…俺もいいか？」
すると今度はルーカスさんまでやってきた。
「ルーカスさんも怪我を！？」
慌てて怪我の具合を見る、手を差し出して来たので確認すると手の甲が青くなっていた。
「剣が当たってしまって…」
「嘘…大丈夫ですか…」
冷たいタオルでそっと怪我の上に当てて冷やしながら、心配になり手をにぎりしめる。
「リナに手当てしてもらったら嘘の様に痛みが引いた…」
信じられないと自分の怪我を見つめている。
「ルーカスさん、大袈裟です。でも…心配しますからあんまり怪我しないで下さいね」
顔を見上げると少し頬を赤らめて頷いてくれた。
「ゴッホン！！」
すると後ろに並んでいたシモンさんが咳払いをする。
私は見られていた事に慌てて手を離した。
「つ、次はシモン様ですね…どうしました？」
「リナちゃんよろしく～、ルーカスが介抱を目当てに行く騎士たちが気になって無茶苦茶本気で剣を振ってきたんだよね！だからこっちもムキになってさー」
シモンさんを見ると腕にルーカスさんと同じように青アザが出来ていた！
「シモン様も痛そうじゃ無いですか！大丈夫ですか？」
ルーカスさんと同じように腕を冷やして薬を塗って包帯を巻こうとすると…
「リナちゃん…さっきからルーカスが睨みつけてくるんだが…どうにか言ってくれない？」
シモンさんが私の横に立っていたルーカスさんを見上げて笑っている。
「え？」
私もシモンさんの視線にルーカスさんを見ると、
「リナ…そんなに丁寧にやらなくてもいいんだぞ。お前達もそれくらいの怪我でここに来るんじゃない！リナと先生はお前達より酷い怪我をしてるんだからな！」
ルーカスさんが手当てに並ぶ騎士達に睨みをきかせる。
「ルーカスさんだって手当てしてもらってるだろ！」
「そうだ！そうだ！独り占めは狡いぞ！」
騎士達からブーイングがあがる。
「リナとアリスは俺の家族なんだからいいんだ！ほら！さっさと行くぞ！訓練の再開だ！」
ルーカスさんはごねる騎士達を医務室から追い出した。
「リナ、アリス。無理するなよ」
ルーカスさんは最後に優しい笑顔で微笑み、そっと声をかけて部屋を出て行く。
私は笑顔でわかったと手を振った。
「ふー…何とか一息つきましたね。先生いつもこんな激務なんて、これでは毎日大変ですね」
私達は人が居なくなりやっとゆっくり椅子に座る。
「いや…いつもは来ても数人なんだけどなぁ…」
先生の呆れた呟きがため息と共に漏れ出た。
