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30.無言の時間

ルーカスさんが少し焦がした料理を部屋に運んで来ると…


「ルーカスさん、私向こうの部屋で食べれますよ?」


私が動かないですむように近くにテーブルを持ってきてくれてそこで一緒に食べることになったのだが…至れり尽くせりで申し訳ない。


「しばらくは動かない…って決めただろ?」


そうだけど…


「ほら食べよう。もう俺もアリスも我慢の限界だよな?」


私が渋っていると二人は手を合わせていた。


私もそれならと手を合わせる。


「ではありがたくいただきます」


料理に手を伸ばそうと右手を出すと


「うっ…」


右手を伸ばしすぎて傷がつってしまい顔をしかめる。


「リナさん!」


ルーカスさんが慌てて席を立つと駆け寄ってきた。


「すみません、少し傷がつっただけですから…」


私は笑って誤魔化した。


「やはり動かない方がいいな…今日は俺が食べさせるからリナさんは極力そのままで!」


食器を下げられてルーカスさんがすぐ隣に座った、そしてスープをすくうと…


「はい、口を開けて…」


私に向かってスプーンを差し出してきた。


こ、これを食べろと?恥ずかしすぎる!


しかしルーカスさんは真剣な顔でじっとこちらを見つめている。


食べるまで手を置くつもりは無いようだ。


「は、はむっ…!ん美味しいです」


恥ずかしかったが思い切ってかぶりついた。


少し焦げていたが、香ばしく感じて味に満足して思わず笑顔を向けた!


「そうか…よかった」


ルーカスさんはホッとしたのか凄い眩しい笑顔で微笑んでいた。


その笑顔に胸がトクンッと鳴った…


私は熱くなった頬を隠すように少し俯くと…


「でも…これは少し恥ずかしいですね…」


誤魔化すように笑ってルーカスさんを見上げた。


「うっ…こ、これは…そうだな…良くないな…」


ルーカスさんはようやく距離感に気がついたのか、急に慌て出すとスプーンを置いた。


「アリス、リナさんに食べさせられるか?」


「アリスちゃんが?なら自分で…」


そう言ってスプーンを取ろうとするとアリスちゃんがサッと私のスプーンを取り上げた。


そして、出来るとスプーンを握りしめて鼻息荒く私を見つめる。


「じゃあお願いしようかな?」


ルーカスさんがアリスちゃんを膝に乗せて支えると、スープを持ってアリスちゃんがそれをすくった。


私はそっと口を近づけてそれを飲む。


「んっ…美味しい、アリスちゃん、ルーカスさんありがとう」


優しい二人を見て微笑む。


アリスちゃんは上手く出来て嬉しそうに頬を赤らめた。


何だかいつもとは逆の夕食に倍の時間がかかってしまったが、楽しく夕食を終えた。


すると…コックリ…コックリ…


アリスちゃんはお腹がいっぱいになって眠そうに頭を傾げていた。


「アリスちゃん、今日は色々手伝ってくれたから眠くなっちゃったかな…」


私の隣に座っていたアリスちゃんを引き寄せて膝に頭を乗せてあげる。


そして優しくその頭を撫でていると…


スースー…


穏やかな寝息が聞こえてきた。


「リナさん食器はどこにしまえばいいかな…」


あと片付けをしていてくれたルーカスさんが部屋に来て、私はシッと指を唇に当てた。


ルーカスさんは慌てて口を噤んだ。


そしてそっと近づいてきてアリスちゃんの寝顔を覗き込む。


「寝てしまったのか…今日はたくさん動いたからな…」


優しい顔でアリスちゃんの頭を撫でた…


「はい、ルーカスさんも本当にありがとうございます…お二人に仕えさせていただいて私は本当に幸せです」


アリスちゃんを見ていた顔をあげると…


「「!!」」


ルーカスさんの顔が思いのほか近くにあり、二人で見つめ合い固まってしまった。


二人の間に無言の時間が流れた。


何か言わなきゃと思うのだが目が離せず言葉が出てこない…ルーカスさんの瞳が力強く自分を見つめている気がした。


するとルーカスさんの手がそっと動き私の顔に近づいて来る…


頬を優しく撫でられ、そっと顎を上向けられる。


あっ…と思い、思わず目を閉じてしまった。

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