28.傷跡
ルーカスさんは私を抱き上げて先生の方を見ると
「先生すみませんが今日はこのまま帰ります。団長はわかってくれると思うので…」
「ああ、言っとくよ」
先生が私達を笑顔で送り出した。
「先生!治療、ありがとうございました!あの…お金は後日必ず持ってきますので…」
まだ治療代を払っていなかった事が気になっていた。
ルーカスさんの肩越しに先生に声をかける。
「そんなの必要ない、私の職場での事だから私が払います」
ルーカスさんがそれを認めてくれなかった。
「ルーカスさんは怪我の事は関係ないですよね?これは私の事ですから…」
そこまで甘えられないと断っていると…
「リナちゃん!」
「大丈夫か!?」
他の騎士団のみんなが心配そうに駆け付けてきた。
「あっ、皆さんまで…すみません、お騒がせして…もう大丈夫なのでお仕事に戻ってください」
何だかみんなの足を止めてしまい申し訳ない。
「そんなのはいいんだ、それよりルーカスどうなんだ怪我の具合は?」
「先生が手当てしてくれたから大丈夫だ…」
「はい、問題無いです」
私も頷く。
「傷とかは…」
ラキさんが伺うように聞いてくるので
「大丈夫です、そんなに深くない傷なので綺麗に治りますよ」
私は笑って、少しだけ嘘をつかせてもらった…
「リナ…さん」
ルーカスさんが何か言いたそうに私を見つめてくる。
「だからそんなに心配しないでください、自分で歩けますし…」
眉を下げて心配性なみんなに苦笑いする。
「でも…その格好で歩くのはおすすめしないぞ?よその男にジロジロ見られるぞ」
シモンさんが私のいつもより出ている足を見つめた。
「おい!見るな!」
するとルーカスさんが私を隠すように抱き上げてみんなに背中を向ける。
「全く、そんな自分の服を纏わせてなんの威嚇だよ…まぁリナちゃんも今日は大人しくルーカスに抱かれてた方がいいぞ。そいつは離す気は無いようだし」
ルーカスさんを見上げると当たり前だと頷いている。
「では…今日だけはよろしくお願いします」
私はお言葉に甘える事にした。
「でもアリスちゃんは大丈夫?」
「なんならアリスだって抱っこしてやるぞ」
「そんな!二人も?」
「リナさんとアリスなんて軽すぎて重さなんて感じない。ずっと抱いていられるよ」
ルーカスさんが笑ってそう言うがずっとは困る。
「へぇ~なら俺にも抱かせて見せろよ。本当か確認するから」
シモンさんが手を差し出して来た。
するとルーカスさんがそれは絶対に駄目だといい、そそくさと騎士団を逃げるように飛び出して行った。
「クックック…なんだあれ?もろ独占欲の塊だったな…」
シモンはルーカス達がいなくなったあと腹を抱えて笑いだした。
「シモンさん趣味が悪いですよ、あんなにからかって…」
ラキがため息をつくと…
「でも傷が大したことなくてよかったです」
リナの傷が治るときいてみんなでほっとしていると先生が声をかけた。
「ルーカス達は帰ったか?」
「はい、いま宝物を大事そうに抱えて帰りましたよ」
「そうか…宝物か…なら尚のこと許せんだろうな」
先生が悲しそうな顔をした。
「どう言う事ですか?」
シモンが先生に詰め寄った!
「あの傷だ、もしかしたら傷跡が残るかもしれないからな…」
「え!?だって今リナちゃんが傷は残らないって…」
ラキが驚いている。
「みんなに心配かけないようにする為かもしれないな…そのことはルーカスは?」
「伝えてある」
「ルーカスもリナちゃんの嘘に気がついたからあんな顔をしたのか…」
「彼女がそう言うなら…話を合わせてやろう」
シモンの言葉に騎士団員達は頷きあった。