17.ルーカス視点 お昼
「ルーカス、なんか今日から仕事なのに嫌にご機嫌じゃないか？」
同僚のシモンが剣を打ち合いながら声をかけてくる。
今は二人で組を作って打ち合いの鍛錬中だった。
「そうか？久しぶりに体を動かすから楽しいのかもしれない」
「その割には気が散ってさっきから時間を気にしてないか？」
「え？」
言われて見れば気がつくと時計を見ていた。
「ああ、昼に人が来るからそれを気にしてるんだ」
さっきからお腹が空いてきているのもあるのかもしれない。
「お前に人が？なんだ…また結婚してくれとか言う令嬢じゃないだろうな…」
シモンが心配そうに聞いてくるがそんな者ではない！
「いや、リナ…家政婦が昼飯を届けてくれることになっているんだ。朝を抜いたから待ち遠しくてな」
リナとの関係は家政婦として雇う事になっていた。これもリナが提案した事だった。
「なに！例の家政婦が今から来るのか！？」
「例の？ああそうだが…」
「なら俺にも挨拶させろよ…」
同僚のシモンが打ち付ける力を強めた。
「なんでシモンに！？」
俺はそれを跳ね返す。
「どんな奴かちゃんと確かめてやらないと」
シモンは剣を下ろすとなにやら一人ブツブツと言っていた。
そして、午前の鍛錬を終えて昼になると…
「おーい、ルーカス！家政婦さんが来てるぞ！」
団長の大声にみんなが注目した。
見ると、縮こまった様子の女の子がもっと小さな女の子を連れて団長の後ろに隠れていた。
「リナさん、アリス、来てくれてありがとう。向こうに休憩用のテーブルがあるからそっちに行こう」
俺は二人の姿に顔を綻ばせた。
「ル、ルーカスさん…すみませんがここって王宮の騎士団ですよね？ルーカスさんのお仕事って…まさか…」
リナが顔を真っ青にしながら小声で伺ってきた。
「ここは王宮騎士団で俺はここの騎士だ。言ってなかったか？」
「聞いてないです！護衛の仕事って言ってたじゃないですか！てっきり民間のかと思ってたのに…まさか騎士様…」
リナの顔がみるみる青くなる。
「なんだ、ルーカスお前ちゃんと自分の仕事を説明してないのか？これは雇用違反になるぞ、お嬢ちゃんなんならこの仕事断ってもいいんだぞ」
話をそばで聞いていた団長がニヤニヤと笑いながらそんなことを言った。
「それは困る！」
俺がすぐに答えると…ギュッ！！
アリスも同じ気持ちなのかリナの体にギュッと抱きついた。
「アリスちゃん…団長様ありがとうございます。でも一度受けた仕事です、責任を持って務めさせていただきます…がその前に今までのご無礼をお許し下さい…ルーカス様…」
リナは地面に伏せて頭を下げた。
「や、やめてくれ！」
俺は慌ててリナを抱き上げる。
「謝る事はない、言葉遣いも今のままでいいんだ。変える必要なんてない」
「あ、ありがとうございます…では…ルーカスさんおろして下さい…恥ずかしいです」
「あっ！」
俺はリナを子供のように抱き上げたまま話していた。
リナは耳まで真っ赤になっていた。
「全くルーカスは仕事は出来るがそれ以外はダメだなぁ…リナさんだったかな？ルーカスの事を頼むよ」
団長が笑ってリナに俺の事を頼んだ。
「はい、仕事ですから」
ズキッ…
「ん？」
なんか今胸が少し痛くなった？
俺はなんの痛みだと胸をさすった。
