14.ルーカス視点 初めての食事
「美味い!」
俺は用意された食事に夢中になってかきこんでいた。
「アリスちゃんも手伝ってくれたんですよ!おかわりがまだまだありますので、たくさん食べてくださいね」
リナの言葉に早速おかわりを頼む。
リナはそれをよそうと、部屋の隅で嬉しそうに食べている様子を見つめてニコニコとしていた。
「ん?なぜ座らないんだ?」
リナが立っていて食事を取っていないことに今気がついた。
「私は家政婦ですよ。ご主人様と一緒に食べる訳にはいきませんから」
リナは苦笑しているが、アリスは不満そうにスプーンを置いてしまった。
それを見て俺は考える。
「君も一緒に食事をとってくれ。アリスもそれがいいだろ?」
アリスはいい考えだと言わんばかりに頷いた。
この子はこんなにもわかりやすかったのか…
アリスの変わりように驚いていると、リナが困ったように答える。
「しかし、立場が違うのに一緒に食べるのはどうかと思いますよ…」
リナは一緒に食べることに躊躇しているようだった。
「なら、これは仕事として頼む。食事は一緒に取ってくれ、アリスの為にも」
「え!?」
俺の頼みにリナは驚くがすぐにその顔を崩した。
「はい…」
嬉しそう笑うと、アリスの隣に座った…
ドキッ…
リナの笑顔になぜが胸がザワついた。
しかしアリスの嬉しそうな顔を見ると気にするのをやめた。
「ではいただきます」
リナが改めて挨拶をすると…
「いただきます」
!!
俺ももう一度手を合わせた。
アリスも同じように手を合わせると、三人の初めての食事が始まった。
みんなで食べる食事は店で食べるよりもはるかに美味く感じる。
事実リナの食事は美味かったが、それとはまた違った温かさを感じていた。
たくさんあった料理をほとんど食べ切ってしまった。
「実はデザートも作ったんです。ルーカスさんはまだ食べられますか?」
リナが窺うように上目遣いで聞いてくる。
「食べられる」
考える間もなく答えていた。
いや、実際食べられるから問題ないが…何故かリナの顔を見ていると全て肯定してしまいそうになる。
なんなんだ?
俺は自分の胸を触った。
「よかった~アリスちゃんと飾り付けしたんだよね」
「へぇ、アリスも作ったのか?すごいな!」
楽しみに待っているとリナが奥からそれを持ってきた。
「ケーキです!パンケーキを重ねてクリームでデコレーションしただけですけど…」
リナが手抜きだと言うが全然そんな感じはしなかった。
綺麗に切り分けて俺とアリスの分を皿にのせてくれる。
「もちろん、君も食べるよな」
リナに確認すると、困ったように笑って頷いた。
言わなければ用意しなかったかもしれない…これは契約書に新たに書き足しておいた方が良さそうだ。
アリスが美味しそうに食べる姿をみて自分も食べてみる。
甘い味が口に広がる…美味い…なんだか疲れが取れていく様な気がした。
食べ終えると、リナはテキパキと片付けをしてしまった。
「すごいな…部屋が見違えるようだ」
感心してその様子を眺めていた。
「後回しにするとどんどん大変な事になりますからね、気がついたらやる癖をつけた方がいいですよ」
「わかっているが…自分の家の事となると…」
「一人ならいいですけどアリスちゃんがいるんですから気をつけて下さいね」
「わかった、気をつける」
俺は素直に頷いた。