115.無邪気
リナ達がシスターの部屋に行ってしまったので、シモンは少女達を怯えさせないようにと自分も部屋を出ていこうとすると…
「待って…別に中にいてもいい…よ」
ターニャが恐る恐る話しかけてきた。
「い、いいのかしら?」
シモンは高い声でボソボソっと答えると、じーっと顔を見つめられる。
強い視線に、シモンは女装という嘘に罪悪感を感じて目を逸らしてしまった。
「や、やっぱり外で待ちます」
シモンは居心地が悪くなり、扉に手をかけると急いで部屋を出ていった。
扉に背をつけてはぁーっと深く息を吐く。
シモンが落ち着くと、外から楽しそうに笑う子供達の声が聞こえてきた。
窓に近づいて外を眺めると…
「あいつ…何やってんだ」
見れば、ラキがスカートをたくしあげて子供達を追いかけまわしていた。
「ギャハハ!」
「捕まえてみろ~!」
「このぉ~!待てー!」
子供達に煽られて、ラキは笑いながら子供達を追いかけている。
その姿はどう見ても男の子だった。
「女装してること完全に忘れてるな…」
しかし子供達はそんな事には気がついていないのか…それともわかってても気にしていないのか楽しそうにラキと遊んでいた。
最初は様子を伺い気味だった被害者の子供達もいつの間にか輪に混ざっている。
「ラキは中身が一緒だからな…」
「それって子供って事ですか?」
「まぁな…ってえっ!?」
いきなりの声に振り向けば、ターニャ達が廊下にでて一緒に外を眺めていた。
「あっ…いえ。楽しそうだな…って思って…」
慌てて取り繕うが先程思いっきり地声で返事を返してしまった。
ターニャ達がしばらく無言で見つめていると口を開いた。
「パンが焼けたんです。よかったら食べて感想聞かせてください」
「え?あっ…はい」
気がついていなかったのか?
シモンはほっと胸を撫で下ろしてターニャ達と部屋へと戻った。
「ん!いい香りだ…ね!」
部屋には香ばしい美味しそうな香りが漂っていた。
「こちらにどうぞ…」
席を用意されてシモンは座るとパンを目の前に用意させる。
「美味しそうだね!じゃあいただきます」
豪快にパクっ!っと一口食べる。
「ん!!これはうまい!いや…美味しいです」
「そうですか…まだあるけど…食べます?」
「え!?そうなの?食べてもいいの?」
シモンが笑顔で聞くと
「は、はい…」
ターニャ達が用意してくると背を向けた。
それを見ていると、ターニャの頬と耳が少し赤い事に気がついた。
「まさか!?」
シモンはガタっ!と席を立ちターニャに声をかける。
「ターニャ!顔が赤い、熱でもあるんじゃ…」
心配になってリナがやるようにおでこで熱を計るが、別に熱が高いわけではなかった。
しかし顔を見ればみるみると頬が赤くそまる。
「大変だ…すまない、少し抱いて運ぶよ」
シモンはターニャを抱き上げるとリナ達が向かった部屋に急いだ!