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105/124

105.理由

「何が嫌だった?キスか?それともこんなにもがっつく俺が怖い…とか」


恐る恐る理由を聞く。


リナは違う違うと首を振る…そして悲しそうに見つめると…


「ルーカスさんが好きです…ルーカスのキスも逞しいのに私に触れる時だけは優しいその手も…ルーカスさんで嫌いなところなんてない」


「なら…」


リナの言葉にたまらなくなり、掴んでいた手の力が強くなる。


「怖いのは…私…ルーカスさんは大丈夫だって言ってくれたけどやっぱり私の傷を見て、嫌いになられたら…嫌になったらどうしようって…」


リナは震えながら自分の体を隠すように抱きしめた。


「馬鹿だなぁ…」


俺は震えるリナをすっぽりと腕の中で包み込む、するとリナがビクッと震えた。


しかし構うことなくリナの服をそっと下ろすと、その傷を見る。


「ル、ルーカスさん…」


怯えるリナに構わずに、リナの背中を優しく撫でた…


まだうっすらと傷痕が残っているが、それも含めて愛おしいと思った。


震える肩も、うっすらと紅葉する首筋も、痛々しい傷痕も…リナの全てが愛おしかった。


チュッ…


前と同じように…いやそれ以上に愛を込めてリナの背中にキスをすると…


「甘い…」


ペロッとたまらずに舐めてしまった。


「キャッ!」


リナは突然の感触に驚き声が漏れる。


「い、今…舐めた!?」


「すまない…あまりに可愛くて…それに何故か甘いんだ…リナ、もっとキスしていいか?」


「ルーカスさん…」


リナは熱い眼差しでじっと見つめてくる。


だから本心で伝えた。


「リナがどんなだろうと愛しさは変わらない…それよりも…今そんな顔をしないでくれ…止まらなくなる」


これ以上熱い瞳で見つめられたら本当に止まらなくなりそうで、そっと目をそらすと服を戻した。


「嬉しい…です。いつかあなたのものになれるのを楽しみにしてていいですか?」


ばっ!とリナを見ると幸せそうに微笑んでいた…そしてその体からは震えが止まっていた。


「もちろんだ…」


ルーカスはまだ少し乱れたリナの胸元に唇を寄せる…


「んっ…」


ピリッとした痛みにリナが声を出すと…


「俺のものだ…」


服を着れば見えないであろう場所に、ルーカスは自分のものだと印をつけた。


「この続きは…婚約してからだな。痕が消える前に…また上塗りさせてくれ」


そっと印を指の腹でなぞるとリナが甘くよじった。


目に毒だとリナの服をキチンと正すと…


「じゃあ…名残惜しいが戻ろうか?」


立ち上がってリナを見下ろして、手を差し出した。


リナは動揺しながらその手を掴むが…起き上がらない…


「どうした?」


声をかけると…


「す、すみません…足に力が入らなくて…」


リナは腰が抜けてしまって立てないようだった。


「ふふ…」


「わ、笑わないで下さい…ルーカスさんのせいです…あんな事して…」


恥ずかしそうに下を向くリナを抱き上げた!


「きゃあ!」


「家まで運ばせてくれ」


「でも…」


「こうなったのは俺のせいだろ?なら責任は取らないとな…」


「うぅ…じゃあお願いします」


申し訳ないと謝るリナだったが、自分には役得しかないと鼻歌でも歌いそうになりながらリナを運ぶ。


その様子にリナは苦笑して、俺の首に腕を絡めて身を預けた。


そして、遠ざかる風景を眺めながら…


「また…今度はアリスちゃんも連れて来たいですね…」


「そうだな、次は三人で…」


アリスの嬉しそうに喜ぶ顔を想像して、俺達は再び馬に跨り屋敷へと向かった。

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