101.デート
皆で馬車に乗り、一度屋敷に戻ろうということになったが…
「あれ?定員オーバーだな」
ブライアンお父様にフレアお母様、エーデルお姉様とセーラ様にアリスちゃんと私…乗れないこともない気がする。
「アリスちゃんを膝に乗せれば…」
子供達が小さいからなんとでもなりそうだったが…
「人が多いからリナは違うものに乗ってもらおうかな」
ブライアン様がそう言うとちらっと外を見つめた…するとその先に慌てた様子で馬で駆けつけたルーカスさんが見えた。
「リナはあいつに送ってもらいなさい。まぁ少しくらいなら遅くなっても構わないよ…でも必ず帰ってくること!」
「は、はい」
ブライアン様に念を押されて思わず慌てて頷いた。
ブライアン様はルーカスさんと少し話すと言い、その場を離れて彼の元に向かった。
私はアリスちゃんに話をしに行った。
「アリスちゃん、ルーカスさんと別に帰るけど…アリスちゃんも私達と行く?」
ルーカスさんならアリスちゃんも一緒に乗せるのはわけなさそうだった。
「ん……。いい!!アリスセーラちゃんとかえってる!」
アリスちゃんは少し考えた後に首を振って、一緒に帰らないと言った。
「えっ…」
てっきり一緒に帰りたいと言うと思い少し寂しくなる。
「アリスちゃん…本当にいいの?」
「うん!でも…ちゃんとかえってきてね…」
アリスちゃんが不安そうに下から覗き込んだ。
「もちろんだよ!すぐに帰るよ」
「すぐは…いいよ…ちゃんとかえってきてね」
「わかった…じゃあ約束」
私は小指を差し出した。
アリスちゃんはその指を見つめると、自分の指を絡めた。
「約束、絶対アリスちゃんの元に帰るよ」
そう言って小指を離すと、アリスちゃんは自分の指を嬉しそうに見つめる。
「うん!」
アリスちゃんと約束をしている時、ルーカスさんはブライアン様と話をしていた…
「リナを少し貸してやろう。アリスちゃんは私達が見ておくから安心しろ」
「団長!!いえ…お父様ありがとうございます!」
「うっ…お前にお父様と呼ばれるのはなんか嫌だな…今まで通り団長で構わない」
「でも本当の父になる訳ですからね、俺はなんとでも…」
ルーカスの気にする様子の無さにブライアンは苦笑した。
そして肩を組んで近づくと…
「いいか、まだ婚姻前なんだ…手は出すなよ」
「は、はい…手って…何処までは大丈夫なんでしょうか?」
「それは…リナが嫌がる事は全部駄目だ!」
「えっと…リナがいいならなんでも大丈夫って事でしょうか?」
「ん?」
ブライアンは少し考えると…
「最後までは駄目だぞ…」
「わかってます…残念ですが…」
ルーカスは聞こえないように呟いた。
話を終えたルーカスさん達がこちらに歩いて来た。
「話は終わりましたか?」
「ああ、お待たせ。アリスは大丈夫かな?」
「はい、セーラ様達と帰りたいと…少し寂しいですね」
「そうだな…でもリナと二人と言うのも俺は嬉しい」
ルーカスさんにそっと腰を持たれると…
「おっほん…そういうのは私達が居なくなってからやって貰えるかな?」
「す、すみません!ブライアン様…アリスちゃんをよろしくお願いします。私達も後ろからついて行きますので…」
「アリスちゃんの事は心配せずに任せなさい、たまには恋人らしくゆっくりと帰ってくればいい」
ブライアン様の優しい気遣いにリナはポッと頬を染めた。