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魔王と一緒に空を飛んで、王国を目指す。
やっとだ。前の分と今回邪魔された分もしっかり仕返しさせてもらおう。
王国の城壁を通り過ぎて一直線に国王がいる城を目指す。
下に視線を向けると、城下街がある。街には何も知らず平和そうに暮らす国民達が見えた。俺らが上空にいるなんて誰も気づかない。数刻後、この街は混乱に陥るんだろう。俺のせいで。
城下町から目を逸らし城に視線を移した。
「魔王、門の前で降りよう。正面から入ってやろうじゃないか。勇者らしくな。」
魔王はハッっと嘲笑したように笑って、門の前に着地する。
城門の横には門番が2人。突然空から降りてきた俺達を見て驚いているようだった。そうして武器をこちらに向けて警戒している。
1人の門番が声を張り上げて言う。
「止まれ!貴様何者だ!」
「俺は勇者だ。魔王討伐にいく為、国王に謁見したいんだがどうして貰えないだろうか。」
門番に右手にある勇者の紋章を見せながら、前のような何も知らない少年を演じる。そんな俺の後ろで笑いを堪えるように小刻みに震える魔王に多少の怒りを感じたが、これまで助けて貰った分殴らないでおいてやろう。
「はっ、貴様のようなものが勇者なわけないだろう」
2人の門番の1人がバカにするように笑って言う。
「大体、勇者というのは――」
「一旦確認してみましょう。この者は勇者の紋章を持っているのですから。」
言葉を被せるようにしてもう1人の門番が口を開いた。
俺たちが聞こえない程度の音量で会話をした後、門番の1人が奥へ入っていった。
「確認を致しますので少々お待ちください。何分急な訪問なので。」
少しトゲのある言い方だ。このままこいつを殺して中に入ることは出来るが、国王に逃げてもらっては困る為、もう1人が確認を取ってくるのを待つことにしよう。
俺は申し訳なさそうな表情を作って門番にお礼を言った。
堪えきれなかったのか、後ろにいる魔王がとうとう声を出して笑いだしたので、さすがに肘打ちを食らわせた。