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ロラン対ベリアル

 ロランとベリアルが対峙する。ロランはあの時よりも腕を上げ、聖剣にも選ばれた。


「ロラン!」

 魔王と対峙するロランの元へ、レヴィが駆けつけた。


「レヴィ、君は引き続き領民の避難をサポートしてやってくれ、ベリアルは私に任せてほしい」

「え……でもロラン」

「頼む……私を信じてくれ」

 レヴィは何か言いたそうだったが、言葉を飲んだ。


「……ちっ、しゃーねーな、今回は特別に譲ってやる、絶対負けんなよ」

「ああ、任せてくれ」

 レヴィもあの時は辛酸を舐めさせられたのだ、本音では戦いたかった筈だ。


「あら、お友達に手伝ってもらわなくてよかったの?」

「ああ、貴様の相手は私1人で充分だ」

「言ってくれるわね……」


 とは言うものの、相手は3大魔王の1人ベリアル。

 僕がこれまでに相手をして来た魔王とは格が違う。


 一定の距離を保ち、睨み合う2人。

 戦場の中にあって、2人だけが異空間に居るかのようだ。


 既に戦いは始まっているのにも関わらず、2人は全く動こうとしない。達人の領域に達しているであろう、2人だからなのかも知れない。


 先に仕掛けたのはベリアルだ。レイピアの連撃がロランを襲う。ロランはこれを軽くいなした。


「チッ」舌打ちをするベリアルの腕に血が流れる。


 この攻防を皮切りに、ベリアルが動く。目にも留まらぬ無数の突きが、レイピアから繰り出される。ロランはこの無数の突きを、剣を交える事なく紙一重で交わす。


 この攻防はしばらく続いた。


 焦りが見えはじめたベリアルの切っ先が、一瞬乱れた。

 ロランはこれを逃さず、すかさず反撃に転じる。


 ロランの剣舞に翻弄されるベリアル。その身体に、見る見るうちに傷が刻まれる。


 剣技の実力差は明白だ。


「んもぉ!」ベリアルはたまらず、バックステップで距離を取るも、ロランはそれを逃さず追撃する。ベリアルはシールドを展開し、何とかしのぐ。


「どうした?魔王の実力とは、こんなもんか」

「なっ、小娘が、調子に乗るんじゃないわよ!」

「まあ、貴様もオバサンにしては動ける方だな」

「だ、誰がオバサンよ!」

 魔王もオバサン扱いは嫌なようだ。

 実際のところベリアルは綺麗なセクシー姉さんだ。

 この点に置いては、僕はベリアルを擁護する。


(……おかしい、あの小娘と以前戦ってからそんなに時は経っていない……

なのに何故これ程の実力を……

それに、私の身体がこうも簡単に傷つくなんて……)

 そして、ようやくベリアルは気付く。


「そ、そうか、その剣は!」

「ああ、ご推察通り」

「聖剣……」

「デュランダルだ」


「へー、あなたも勇者になったって事ね……だったら!」


 ベリアルの魔力が一気に膨らみロランに襲いかかる。

 先ほどまでとは別人のような動きで、今度はロランが防戦一方となった。

 

 膨れ上がったベリアルの魔力にファフが反応した。

「この魔力、魔王か!」


 ファフは上空に舞い上がり、ベリアルにブレスを放つ。


「チッ、神竜!本当に厄介ね……」

 ベリアルは攻撃をかわし、ファフ、ロランと大きく距離を取った。


「ファフ、手出しは無用だ」

「何でやねん、コイツいてもうたら、勝負有りやんけ!」

「ベリアルには借りがあるんだ……頼む!」

「せやかてロラン……」

 ロランの目に迷いは無い。


「っんまに、しゃーないなぁ、絶対しばいたれよ!」


「ああ、任せてくれ」


「神竜とお友達とはね……あの神竜は、彼の眷属かしら?」


「お前が知る必要は無い」


「レーヴァテイン、クレイヴソリッシュ、ファフニール……サマエル……差し詰め、彼の正体はソールってところかしら……」


 ベリアルはそう呟くと戦いを再開した。


 助けはいらないと言ったものの、本気になったベリアルの実力は、魔王の名に相応しく、剣技で圧倒していたロランも徐々に押されはじめた。


「あれ?さっき迄の余裕は何処に行ったのかしら?勇者さん」


「これからだ、ベリアル、焦るなよ」

 ロランの言葉に嘘はなかった。ロランを包み込む光の輝きが増し、ロランの動きは先程とは見違えるものになった。


「私相手に実力を隠していたのね……」

「お互い様だろうが」

「小娘が、生意気なのよ!」

 ベリアルは更に魔力を高めた。ベリアルにはまだ余力があった。


 しかしロランも負けてはいない。ベリアルが高めた魔力に合わせ、ロランも強化を強める。


「ベリアル!!!」「小娘が!!!」


 激しく打ち合いが続き、ついに2人も肩で息をしはじめた。


「本当に忌々しい小娘ね……でも、コレはどうかしら」

 ベリアルは上空に舞い上がり、強大な魔力球を作りはじめた。


 この技は僕との戦いで披露した技だ。


「彼には破られた技だけど、あなたに彼と同じ事ができるかしら!」

 勝利を確信し、笑みを浮かべるベリアル。状況的に絶体絶命に思えたロランだが……。


「ベリアル、あまり私を舐めるなよ」

 ロランはベリアルを取り囲む形で複数のエスクプロージョンを放った。


 どうやらロランも、アレイスター先生が使っていた、発動点コントロールを会得していたようだ。


「くっ!」


 完全に無防備だったところに、複数の上級魔法を食らったのだ。流石の魔王とは言え、それなりに効いている。


「……あなたは剣士じゃなかったの!」


「悪いな、私は人類の中で2番目に魔法が得意なんだ」

 ベリアルは、苦虫を噛み潰したような顔をしている。


「あなた、もう1人の勇者より強いんじゃないの……」

「さあな、だが彼女とはずっとライバルだった。同じ土俵にたった今、私に敗北は許されない」

「言ってなさい!」


 ベリアルは、攻撃に牽制の魔法を絡めた。僕と戦った時よりも数段に数が多い。


 優勢に戦いを進めていたロランだったが、流石にこの攻撃は厄介だったようで、ダメージを受けはじめた。奇をてらさず、正攻法で攻めてくるベリアルは強かった。


 魔法を絡めならが攻撃してくるベリアルに、ロランも魔法を絡め対抗したが、魔力量が桁違いのベリアル相手には、上策と言えなかった。

 

 そして遂に、ベリアルの攻撃がロランを捉えた。


「ぐあっ……」


 ベリアルのレイピアがロランの左肩に突き刺さる。


「あなたもよく頑張ったけど、ここが限界のようね」

「フッ、……これしきのダメージを与えて勝ったつもりか?片腹痛いぞ」

「可愛くないわね、あなた」

 ベリアルはロランの肩からレイピアを抜き、左の太ももに突き刺した。


「うぐっ……」

「どう?、これでご自慢の機動力も使えないわ?

んーあれ?

出血も酷そうね」

 ロランはなりふり構わず、ベリアルを振り払いった。


「そんな攻撃当たりやしないわよ」


「ロラン!!!」

 様子を伺っていたファフが今にもベリアルに襲い掛かりそうだ。

「大丈夫だ、ファフ……私はまだ負けていない……」

 ロランはファフを制止した。


(……レヴィやファフと力を合わせれば、確かにベリアルに勝てるだろう。

だが、それではダメだ……

1人で戦う事、これは私の我儘だ……

これによって仲間が窮地に陥るかも知れない。


それでも私は聖剣デュランダルに選ばれた勇者だ。

魔王を倒す義務がある!)


「デュランダルよ!私に力を貸せ!」

 デュランダルがレイラの叫びに呼応する。

 今までとは違った輝きを放ち、エナジーが溢れ出る。


「こ、これは……力が……」

 デュランダルが覚醒した。


「何なのよ、あの忌々しい光は!」

 ベリアルがロランとの距離を詰め、トドメを急ぐ。


「キィーン」金属音が鳴り響き、ベリアルのレイピアが宙を舞う。


「勝たせてもらうぞ!ベリアル!」

「グフッ……」

 デュランダルがベリアルの心臓を貫いた。


「ロラン!遂にやりよった!」

 様子を見守っていた帝国民からも大歓声が上がった。

 

「ま……まさか、私が、あなたみたいな小娘に負けるとはね……」


「聖剣のおかげだ」


「ううん……実力よ……」


「ベリアル……」


「ねえ……あの彼と、ウンディーネは一緒なんでしょ……」


「ああ」


「ウンディーネに伝えて……ごめんね……って……」


「分かった伝えておくよ」


 それがベリアル最期の言葉であり、

 3大魔王を倒した歴史的な瞬間であった。



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