プロローグ1
今から当たり前の事を言おう。
誰しも他人から罵られたり、暴力を振るわれたら不快な気持ちになるだろう。
それが幼稚園児の頃は、泣けば先生が駆けつけて悪い方に謝らさせる。
そして喧嘩になった時は互いの言いたい事を散々言ってまた大人が解決する。
歳が経つにつれてそれはどんどん陰湿になってゆく。
そして、それは次第に自分の身体の芯の芯を蝕んでゆく。
行動は空気という名の線路に制限をされ、少しでも誤った行動をすると文句が飛び交い、ついには他人の視線を気にする日々になり変わる。
家に帰っても、苦しみを紛らわす為に趣味や勉学に没頭する。
時間はあっという間に過ぎ、また日が昇ると一日の始まりを告げる。
そしてまた周囲の目を気にする日々。
人はいつから言いたいことも言えなくなり、こうして辛く苦しまなければならないのか。
だがそれを耐えて成人をし、好きな事が出来ると思ったらまた会社や上司に縛られる日々。
仕方ないと思う。
そうしなきゃお金は入ってこないからまた出勤をする。
だが度々思うんだよ。
「僕の想像をしていた大人とはもっと違うモノだったと」
話は変わるがこういうニュースを見た事はないか?
高校生が自殺。中学生が自殺。小学生が虐待により死亡。
まだ成人もしていない若い命が命を絶ってしまう。
自殺については全てがイジメが原因では無いが、多くはそれであろう。
自分のストレスをぶつける為に自分よりも弱い者を見つけては痛めつけている。
それは人として最悪だと思う。
被害者は、どんなに絶望の淵に立たされても踠き助けを求める。
なのに周りは見て見ぬ振り、もしくはそれを見て楽しんでいる。
苦しい、辛い、助けて、誰か、お願い助けてよ。
だがそんな声も届く筈も無く、心にこだまして終わる。
次第に心は変化をしていく。
助けを求めることを諦め、何も感じなくなる。
誰もがこんな思いをするわけじゃないだろう。
だが俺は、違った。
―――昔、母が死んだ。
死因は薬による自殺だった。
母は昔から自分に優しくしてくれていた。
それが仇となり自分の辛い苦悩や、家計の事で頭がいっぱいだったと思う。
そんな中、俺が何も知らなかったガキの頃。
母は俺の前だけでも自分を偽っていなければと思ったのだろう。
死体の横には、遺書があった。
「ごめんね、私もう疲れちゃった。私、母親として無責任だよね。息子を残して一人だけ楽になるなんて、でも許して。私もう我慢の限界だったの。お父さんだってもう出ていっちゃって…。
ずっと戻って来ない筈なのに信じて待ってた。
本当にごめんね。何もしてやれなくて、でも私みたいな大人にはならないでね。歩は強く生きて―――」
最後の文には涙の跡が残り文字が滲んでいた。
遺書の裏にして置くとそこにも文字が書いてあった。
「今までありがとう。歩のこれからの幸せを願っています。愛しています」
父は、母と喧嘩をして離婚届を提出していた。
母はその離婚届をずっと持っていたらしく、遺書の隣に置かれていた。
自分の事を父が引き取った。
この事があった以来、俺は友人と話す事も少なくなった。
次第に友人も離れてゆき、クラスからも浮いた存在になった。
もはや空気みたいな扱いを受けたり、陰で散々言われたり、ましてや物を隠されたりなど酷い仕打ちをされた。
その度に父を恨んだ。
心の中で何度も何度も。
なぜ自分がこんな目に遭わないといけないのかと。
家に帰り、俺に出来た痣を見ると父はいつも
「歩、ごめんな……。僕があんな事をしていなければ、ごめん。お父さん頑張るからさ、だから、せめてもの、罪滅しをさ、うっ……」
父はいつも泣き始めてしまう。
それが逆に鬱陶しくて、こっちが泣きたい気分なのに、
何故?だってそうなったのはお前が悪いんだろ?
中学一年の時に俺はこの街から引っ越した。
久々に遠くまで行く楽しみが無邪気だった頃の俺を思い出させてくれた。
新しい生活が始まると思った矢先、俺はまたその中学校でイジメを受けた。
それは無視だけでなく、トイレに呼び出され3人くらいから殴られ蹴られ、さらには俺の給食をワザと落としたり、痛かった。苦しかった。
こんなに辛いのに頼れる人は誰一人いなかった。
もう誰も俺に見向きなんてしてくれなかった。
皆は笑顔で暮らしていて、大切な友人が居て、家族が居て、羨ましかった。
だが自分はどうだ?
身体の芯という芯は、空っぽで何も詰まっていない、ただ憎悪や恨みだけが詰まっている。
またこの学校でも居場所がなくなった。
友達が欲しい。
本音を言い合える親友が欲しい。
叶わない、願ってはいけない希望のように思えた。
こんな人生なら……。
この頃、家に帰ると見慣れない女性が居た。
多分再婚するであろう相手と思われる。
だがそれが許せない気持ちが出てくる。
まるで母を裏切るみたいだ。
元から父は女なら誰でも良かったのか?
疑問が脳を全身を蝕んでゆく。
吐き気が襲う。
気持ち悪い。
俺にはもう居場所なんてない。
出来るなら母が生きていた頃に戻りたい。
望んだって出来はしない。
中学2年の夏付近、イジメはさらにエスカレートした。
朝登校すると席が無くなっていたり、わざわざ近くまで来て、「お前早くしろよ。トロいぞ」
一人が言うと、「あー悪い。それじゃまるで歩みたいで気持ち悪いな」
と笑いながら過ぎって行った。
もう嫌になり、カウセリングに相談をした。
しかしそれは解決をする訳がなく、ひたすらに出来もしない事を担任と相談するだとか。
ふざけんな。なんで俺が厄介扱いされなきゃいけないんだよ。
と思うが、確かにそうかもしれない。
俺が居たから母は無理に気を遣って精神を滅ぼし死んだ。
元から邪魔で迷惑な存在だった。
―――死んだ方がマシだ。
気付けば屋上に足を運んでいた。
夏の涼しい風が身体に当たる。
死ぬには丁度いい日だ。
柵を乗り越えて落ちようとする。
だが中々手を離せない。
足は小刻みに震えている。
死にたい、死にたいんだ、死なせてくれよ!!
何を怖がっているんだ俺は。
「おーい、其処で何やってんの君?」
背後で声が聞こえる。
関係ないと思い無視をする。
「もしかして今から自殺すんの?」
関係ない。
別に死のうがどうだって良いだろう。俺の事情だこれは。
「よいしょっと」
柵を飛び越えて、俺の隣に女子が来た。
「なんで今日に限って屋上に人が居るかなぁ」
チッと舌打ちをしている。
「さっきから躊躇してるけど、君怖いの?」
怖いのは誰だってそうだろう。
まだ生きていたいでもその意思とは逆に、現実は不条理なのだから。
「ねぇ、ちょっと話しない?」
柵から元に戻ってベンチに座る。
「なんで俺と話したいんですか……。別に話しても何も出ないですよ」
引き止められた所為で死にぞこなった。
「君、中々死ねなかったからもしかしたら生きていたいって希望があるんだろうなって思ったんだ」
「別に良いじゃないですか……。誰だって生きていたいですよそれが無理だから言ってるんじゃないですか」
バッと急にその女子は立ち上がった。
「実はさ!私も死にたくて此処に来たんだ。でも気分が変わった!」
自殺を考えていたらしい。
だが気分が変わって死ななくて済むのはおめでたい事だ。
「君、学年と名前は?」
「はぁ……。2年の白崎 歩ですけど……」
「私は、3年の川上 誓。歩くんは後輩なんだなぁ」
何か納得をしている様子だった。
「じゃあさ、私達死なないで一緒に生きてみない?」
―――彼女と出会った事で少年の何かは変化する。
初めてこういう系書きました。
ですが気づいたら手が止まらず投稿です。
皆さんも人生についてもう一度深く考えてみて下さい。