旅立ち 2
投稿いたします。
第一部王都編を完結いたします。
あとはカルディナなんだけど。
「タクミ様、やはり私は残った方が良いと思ってるのですよね?」
カルディナの方から言い出してきてくれた。
僕はカルディナも一緒に旅に出てもらいたい気持ちはあるんだけど、それ以上に今この国にはカルディナが必要だと思っている。
国王は在位しているが、鬼に操られていた事もあり精神的にかなり疲労が有るようで公務に耐えれるとは言い難いようだ。
その際、グランディール公爵家が代行するようだが、カルディナの父であるルディオレ・グランディール公爵より、カルディナの方が国民には人気があり、そのカリスマ性は今のシルフィテリア王国には必要なはずだ。
「ごめん。」
「タクミ様が謝る必要はありませんよ。公爵家に生まれた者としての努めは果たさなくてはいけませんから。」
僕を真っ直ぐに見つめるカルディナは何の気負いもなく自然とした表情だ。
「でも、本当はタッ君と一緒に行きたいんでしょ?」
「そんなの決まってるじゃないですか! この国の事が無かったら絶対について行きますよ!」
そんな握りこぶし作りながら力説しなくても良いからね。
「まってて下さい! 国の事が安定したら直ぐに追いつきますから!」
「うん、わかった。待ってるから。」
僕がカルディナに返事をするろ、クロちゃんが手を上げていた。
「じゃあ、わしは残ってカルディナ嬢の手伝いをするわ。こう見えてわしは魔族の中でも王族に繋がる血筋じゃからの国政については些か知恵は持っておるので役に立つと思うぞ。」
「いいんですか? クロさん。」
「いいって、それに何かあってもわしがいれば転移魔術が使えるから、タクミのところに瞬時で到達する事がかのうだしの。」
「助かるよ。それなら国から出ても安心出来るよ。」
僕はクロちゃんの意見に乗ることにした。
その方が色々安心だからね。
「それじゃあ、カルディナとクロちゃん、そしてルゼリアは留守番を頼む。後は僕と一緒に鬼退治に出発だ。」
それから、旅の準備やら何やらで10日程経ち王都を離れる日となった。
僕たちは北にある城門をくぐり抜け、城郭の外に立ち、門から見える町並みを目に焼き付けた。
まだ朝早く城門が開いたばかりなのに、多くの商人や冒険者達が行き来し始めていた。
「そういえば、カーリーとこの王都に来て、まだ半年くらいなんだよね。」
「あれ? そうだっけ? 私もっとながく居た様な気がするよ?」
カーリーが不思議そうに言っていた。
僕ももっとながく居た様な気はするけど実際はそんなものだ。
あまりにも色々な事が有ったせいだろうね。
僕達はグランディール家から移動用の馬車を借りている。
結構大きな馬車で5人くらいが乗るのには十分な広さだ。
ただ大きすぎるので普通の馬だと4頭立てぐらい必要なのだが、シロから同族の白狼なら2頭で十分と申し出があったのでお願いしたんだけど。
「これって結構目立つよね?」
「いいんじゃない? 威圧感はこれ以上ないくらいにあるんだから道中、山賊や盗賊に襲われなくて済みそうよ?」
ヴェルデは問題無いと言ってくれる。
まあ、良いけどこれだと馬車じゃなくて狼車だね。
とにかくこれで当分、王都から離れるんだ。最後に街を良く見ておこう。
「ねえ、タッ君?最初はどこへ行くの?」
フラムが何気に聞いてきた。
ただ僕の中では最初に訪れる場所は決まっている。
「トネ村に行こうと思う。母さんに皆の事を紹介したいし今後の事も色々話しておきたいからね。」
「久し振りだね。タクミ君。」
「そうだね。」
「タクミのお母様、な、何故か緊張してきた。」
「ヴェルデ、今更緊張してどうすんの? 若いわけじゃないのに。」
「そうじゃぞ! わらわなんか前世も含めると優に100才超えとるわ!」
「姉様達とは違って、私は記憶に無いから、8才のままだね。」
「「「それはずるいぞ!カーリー!!」」」
アハハ! 皆母さんと会うの楽しみにしてくれてるみたいで良かった。
「それじゃあ、行こうか!」
「「「「はい!」」」」
こうして僕らは、まずトネ村を目指して出発した。
第一部王都編 完
ながらく読んでいただき有り難うございます。これで一部の完結とさせていただきます。また少し時間をおいて、もう少しまとめてから再スタートする予定ではいます。
有り難うございました。