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王都にようやく着きました。

これから王都・学園編になります。


太陽が西の山の影に隠れる前に、僕たちが乗って来た馬車は王都に入る東門の前まで到着していた。

皆、無事に王都に着けた事を喜び、感謝する人が僕やカーリーとジュード、ラモナに握手を求め何度もお辞儀して来た。道中では、どうやって撃退したのかと、ひつこく聞いてくる人もいたが、まさかカーリーが投げ飛ばして勝ったなんて言っても信じて貰えないし、言う気も無いので、エルと白狼王を神獣に従う聖獣として、何処からともなく現れた聖獣白狼王と僕の使役聖獣のエルが協力して魔獣白狼を撃退したと誤魔化す事にした。そして、何故かカーリーの事を聖獣が気に入ってしまい使役されたとも話している。なので実際に撃退したのはエルと白狼という事なので、僕たちが感謝されるのは違うと言っているのだが、皆の言うには、それでもたった4人であの凶悪な魔獣に立ち向かう事自体が凄い事なので感謝するのが当たり前なのだそうだ。まあ感謝されて悪い気はしないので、取り合えず素直に受けることにしといた。ただその道中の中で一人暗く落ち込んでいる者がいた。ミッシェル君こと、ミッシェル・ヘイズだ。


「いいか!今回はお前に花を持たせてやったことを忘れるなよ! 俺が、本気を出していたらもっと簡単に魔獣なんか撃退出来たんだからな!」


王都の門の前に着いて馬車を降りるなり騒ぎ出すミッシェル君。もしミッシェル君があの時外に出ていたら真っ先に殺されていただろう。たから馬車の中でじっとしているのは適切な判断だったと思っていたんだが、単に怖くて動けなかったんだな。そうやって騒ぐと自分の負けを認めているのと同義なんだという事が判らないんだろうか?


「今度、会うときはタクミなんかよりずっと強くなっているからな! 覚悟しておけ!」


捨て台詞を吐いて、東門へと一人で、あ、違った。従者の様な人が一人ミッシェル君の後を大きな荷物を持って着いていったぞ。その男の人はこちらをチラリと振り返り小さく会釈し、そのままミッシェル君と門の中へと消えて行った。


僕とカーリーは何も言い返す事もなくただ見送るだけだった。


『カーリー、はくろ・・・あ、待てよ。白狼王の事なんて言えばいいんだ?』


カーリーに白狼王の名前を問い掛ける。まさか白狼王なんて人前では到底言えないしね


『シロなんてどうかな?』


センスの欠片もないぞカーリー。


『タクミ君、今、センス無いとか思ってない?』


超能力者か!


『そんな事無いって。でも、本人にも聞いてみないといけないんじゃないか?』


『オー、なんと素晴らしい名前だ! 今日から私の事はシロとお呼び下さい。カーリー様!』


尻尾をブンブン振り回して上機嫌な白狼王。君は今日からシロだそうだ。良いのかよ。


「まあ取り合えず門で入国審査して、さっさと王都に入ろうぜ。」


確かに、もうじき日が完全に沈む事だし、入国審査を済ませて王都に入る事にしますか。僕たちは荷物を纏めて東門の入国審査の手続きをする事にした。で、案の定と言うべきか、僕達は今、入国審査で引っ掛かり取調室に居た。


「だ・か・ら、俺と、ラモナが保証するから大丈夫だって言ってるだろ?」


ジュードが半ば投げやりに入国監査管に何度目かのお願いをしていた。


「ですから、いくら黒鷲の爪のジュードさんでも入国監査の手順は曲げれません。」


このやり取りが、かれこれ1時間は続いていた。つまり、僕の白狐、カーリーの白狼は聖獣はとても高位な存在であり、簡単に王都に入れて何か問題が有った時困るし、もしかしたら聖獣を密売する組織の者かもとか調べる必要があるらしい。なので、僕とカーリー、エルとシロはこの入出国の門の直ぐ横に建つ、詰め所に当分居なきゃいけないらしい。それを可哀相だと、ジュードが交渉してくれていた。

どうもこの二人、黒鷲の爪というパーティーの所属らしく、そのパーティーがこの王都では有名みたいで特にこの二人は人気があるらしい。特にラモナの方がだが。


「いいよ、ジュード。監査官の人も儀礼的なものだって言うし、一晩ここでお世話になっても何の問題も無いよ。」


このままでは埒が明かないので僕たちは監査官の言う通りにすると答えた。


「本当にいいのか? こんな小汚い所に二人を置いて行ってしまうのが、どうにも我慢ならないんだが。」


ジュードはやっぱりお人好しで面倒見が良いんだろうな。その横で小声で話すカーリーとラモナさん。


「いい?せっかくの二人きりのチャンスなんだから、頑張るのよ!」


「う、うん!頑張るね!」


何を頑張るんだ?カーリーは?


「それでジュード、お願いがあるんだけど良い?」


「おう!なんでも言ってくれ。」


「大学の方には一日到着が遅れる事を伝えてくれないかな?」


「了解だ、それくらいどうって事ないぜ。それと、明日は俺らがまた来てやるからな。」


「ありがとう助かります。できたら冒険者ギルドとかにも行ってみたいし案内してもらえる?」


「おう!了解だ。それじゃ俺らは依頼完了の報告とかあるんで行くからな。」


そう言って、ジュードとラモナの二人は街の方へと向かって行った。それから、詰め所で幾つかの質問を受け今日の所はこれで終了らしい。明日、専門の魔導士が来て、エルやシロが聖獣であることの判定と僕とカーリーがそれぞれの使役獣と契約がちゃんと正規通りにされているかのチェックもされるようだ。


『エル、シロ、その辺の偽装は大丈夫なのか?』


監査官には判らないように念話で話す。


『はい、お任せ下さい。それに、従属の関係は本当に主従契約がされていますので偽装も何もないですよ。』


普通に言ってくれる、エルの奴。方や神様、方や神獣、それを従える7才の僕とカーリー。普通じゃないよね。多分? 今更かな? などと考えていると、監査官の人が食事の用意をしてくれた。

白い柔らかなパンと、具沢山のトマトスープにメインの水牛の香味焼きが僕たちの前に並べられていく。

結構豪華だよこれ。カーリーも目を爛々とさせている。涎がちょっと出てますよ。エルやシロにも同じ肉が出されている。聖獣という事もあり、良いものを出してくれたのかな? 二匹とも、出されたと同時に、もうがっついている。聖獣がそんなんで良いのか?僕たちは美味しい食事を食べさせてもらった後、カーリーは詰め所内にある簡易の風呂場を借りる事になり、僕は監査官の人に色々聞きたいことがあったのでお願いしたら快く了承してもらったので、談話室で話をする事になった。


「それで聞きたい事とは何かな?」


歳の頃は35は過ぎてるかな?黒髪で背が高く、監査官と言っても何か武道でもしているのかと思えるほどの大柄な体つきの男性だ。


「はい、実はこの王国で最年少で天位魔導士になられたテレジア様の事なんですが。行方不明とお聞きしましたが、未だにその行方については判ってないのでしょうか?」


僕の質問に、うんと一つ頷く監査官。


「そうだな、全く判っていないというのが現状だね。」


そうか、手掛かりは簡単には見つけれそうにないな。


「18年前、突如、そのお姿を王宮から消されたテレジア様を王宮は捜索隊を編成し、数年に渡って探されたらしいのだが、全く手がかりさえ見つけらなかったらしいよ。なので色んな噂が当時流れてね。悪魔の仕業とか、神の要る神域に昇られたのだとか。今では、亡くなられたと言うのが一般的な説だろうね。」


「そうですか。」


エル曰く、転生させた人間が死んでいれば天界に一度は魂が戻るので生きているか死んでいるかは判るらしい。今のところ、そういう報告は無いようだ。ただそうすると、行方知れずで王国の調査団を使っても見つけ出せないのなら、僕一人では捜すのは苦労しそうだ。


「ただ、今から3年前、それこそ突然にテレジア様の弟子と名乗る少女が現れたんだ。」


突然、監査官がテリジア関連の新たな情報を話し出してきた。


「しかも王宮の魔導士試験をトップで合格した才女だったので、天才魔導士の出現に色めきたったんだが。」


ここで監査官が溜息一つついて間をとった。


「残念な事に元素魔法を一つしか持っていなかったんだ。国は落胆したが体内魔素の保有限界が非常に大きいみたいだったので王宮魔導士には取立られたという事だ。」


うーんその女の子は怪しいが、元素が一つと言うのが解らないな?


『エル、確かうちの奥さんは魔法元素を5つを持っているんだよね?』


『はい、それは確実です。』


取り合えず他の手掛かりが無いんだからその女の子にあってみるしかないのか。


「それでその魔導士の名前と居場所とかご存知ないです?」


「あー知ってるよ。というより、王宮魔導士として研究開発をしながら君達の今度通うラングトン魔法大学で講師もされているよ。だからいずれ君達とも会う機会は多いんじゃないかな?」


おーなら、このままでいればその女の子に会うのは難しくないか。何か知ってれば良いんだけど。


「それでその方の名前は?」


「あー確か、ヴェルデ・カーナイン魔導士だ。」

読んでいただきありがとうございます。

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