カーリーの災難? 1
久しぶりに投稿致しました。
「ん~! スッキリしたあ!」
カーリーがご機嫌だった。
「ご機嫌だね、カーリー。おばさんと真っ向勝負出来て良かったね。」
「うん! 結構自分でも良い感じだったし、お母さんも結構本気で来てくれたからね。満足だよ!」
僕達は、Aクラスへの昇級手続きや、報酬の受け取り等をギルド本部の応接室で受けてそれがほぼ終わろうとしていた。
「はい、これで手続きは終了です。お疲れ様でした。」
ギルドの受付嬢のルイルさんが笑顔で僕に手続きの完了を告げ、書類を渡してくれた。
この書類は、Aクラスの証明書や、今回の賭け報酬についてとか色々な事が纏められている書類なのだけど、それを全部僕にだ。皆も分も。
「これ? 全員分ですか?」
「はい、全員分ですね。取り合えず保護者である、タクミ様にお預けするようギルマスから伺っておりますので。」
机の上に置かれた書類の山は、よく漫画なんかに出てくる、鬼畜な会社の中間管理職の人の机に置かれている一昔前の状況と同じような積み上げ方がされていた。
だいたい保護者ってなんで?
どうみてもヴェルデやクロちゃんの方が年齢敵にいってっも保護者でしょうに。
「あの~一応僕まだ未成年ですけど?」
「それは心配いりません。これだけの方と婚約しているのですから、当方と致しましても、立派な成人男性として扱って問題ないと、ギルマスから通達がありましたし、それにこれは奥様方からの要望でもありますので。」
ルイルさんの言葉を聞いて皆の方に振り返ると、なぜか皆照れた様な顔して僕を見ていた。
「その、タクミは私たちの旦那様というかご主人様だよね?」
「え? うん、そうだよ。」
ヴェルデに改めて言われて僕もちょっと恥ずかしくなった。
「それでね皆で決めたんだけど、私達の全てをタクミに捧げるという意味も込めて、重要な物や金銭、財産は全てタクミんい管理してもらうって事になったんだ。」
「なったんだって簡単にいってるけど、そんなんで良いの? 年齢的におかしくない?」
「う~ん、そうなんだけどね、考えてみて。前世でも家の管理や財産の管理ってタクミ君がしてくれてたよね?」
フラムがそんな事を言いはじめた。
そういえば、奥さん計算とか管理とか苦手だったな。
それで一度詐欺にあって大変だった事もあったっけ?
「確かに、そういった事は全部僕がやっていたような。」
「でしょ? そのうえで私たちに金銭管理して大丈夫だと思う?」
堂々とフラムは言うけど、それって恥ずかしい事だからね?
「それじゃあフラムやヴェルデは無理として、カーリーやトルエは?」
「タクミ君、村に居た時から私勉強苦手なの知ってるでしょ?」
「わらわは、人間界から随分離れておったからの、そういった類はとんと駄目じゃ!」
二人とも自信満々に言わないで下さい。
「それじゃあクロちゃんは?」
「わしは無理! 税だのなんだのって私達、魔人族にそんな概念ないからな。」
「それならカルディナなら!」
「申し訳ありません、タクミ様。その私の金銭感覚をヴェルデ姉様に確認してもらったら、良い勝負だと言われました。王室育ちで若干疎いようです。」
なんと云う事でしょう。
揃いも揃って脳筋とは、まあ可愛いからあ許すけど。
「あ!ルゼがいた! この中で一番常識人のはず!」
そう言って僕はルゼの方を見たけど、ソファーにちょこんと座って僕の方を見ている彼女の顔には悲壮感が漂っていた。
「ルゼは可哀相だからいいや。」
「あーーー! なんかルゼだけ扱いが違う!!」
ヴェルデがなんかアホな事言っておられる。
「嗚呼、解ったよ。僕が全て管理します! でもこの量の書類どうしようか?」
『それでしたら、私が保管しましょうか?』
エルが応えてくれた。
『え? 何かあるの?』
『はい、一応神である私には、供物とか宝物とかを管理する時空倉庫を持っていますので、そこに入れて置けばたいていのものは管理できます。』
『量とか種類とか何でもいいの?』
『はい、ただし生物で命が有るものは駄目ですよ。そんな事したら永久監獄に閉じ込めるようなものですからその苦痛は計り知れなくなりますから。』
『そ、そうなんだ。』
ちょっと想像してしまった。
『あと、保管してしまえば、勝手に用途別や種類別に保管してくれて、取り出しも念じればそれだけ取り出す事もかのですので、こういった管理には良いと思いますよ。』
おお、なんと便利な。いちいち仕分けする必要が無いのか。
『それに、主従関係にあるタクミ様なら、タクミ様の魔力で出し入れ問題ありません。』
へえ、そうなんだ。
じゃあ早速。
そう思ってエルと同調するように魔素をコントロールしてイメージをする。
「え?!!!」
あ!書類が消えた! これで良いのかな?
『はい、大丈夫です。ちゃんと保管されました。一回出してみます?』
エルがそう云うのでもう一度、今度は取り出すイメージで集中すると、
「え!ええ?!」
お!ちゃんとテーブルの上に書類が現れた。
これは便利だね。
僕はもう一度書類を保管庫にしまうと、みんなが凄いわねとか言ってるし、中にはこれで幾ら武器や装備が多くなっても大丈夫だね。等と話し合っていた。
「あ!あの! タクミ様! 今のは?!」
ルイルさんが僕に突っ掛かってきた。
そうか今のはちょっとまずかったのかな?
「なんでしょう?ルイルさん。」
「何って! い、今の何をしたんです!」
「何って、さあ何の事でしょう?」
困ったぞ。下手に言い訳してもよけいややこしい事になるかも。
そんなふうに考えていたら、ヴェルデがルイルさんのところに近づいて来た。
「ねえ、ルイルさん、今何かありました?ありませんでしたよね?そうですよね?」
「え?え? その、何?」
「そうだと言ってくれたら、タクミと二人だけでディナーさせてあげてもいいかも?」
「はい! 大丈夫です! ヴェルデ様! 私は何も見ていません!」
ルイルさんいきなり背筋を伸ばしてヴェルデに敬礼しているよ。
それにしても僕を餌にするヴェルデもヴェルデだけど、ルイルさんも食いつくとは。
「それだけ、タクミは良い男だってことよ。」
ヴェルデの言葉になぜかルイルさんも一緒に皆が頷いていた。
めちゃくちゃ恥ずかしい。
「それじゃあ、皆一旦学校の寮へ戻ろうか。」
僕が用事が済んだので帰ろうと声を賭けた時、カーリーが手を上げていた。
「ゴメン!タクミ君。今晩お母さんと会う約束したから私だけ別行動していい?」
そうか、久しぶりの親子対面だもんな。色々話す事もあるだろう。
「判った。それじゃあ今晩はおばさん所に泊まるんだね? 了解だよ気をつけるんだよ。」
「うん、判った。じゃあ皆行ってくるね。」
「いってらっしゃい! 母さんにいっぱい甘えてらっしゃい!」
「うん!もう一回思いっきり殴ってみるね!」
「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」
カーリーらしい。
「う~んでも心配だな。一人で大丈夫か?」
「何言ってるの、タクミ。この中で格闘でいったらあの子が一番強いんだからね。」
「それもそうか、それにシロもいるから大丈夫か。」
僕は部屋を出ていったカーリーの後を見ながらそんな要らない心配をしていた。
読んでいただき有り難うございます。
感想などお待ちしています。