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王都に着くまで前途多難 Ⅳ

少し時間が開きました。

次も同じくらいのペース内で投稿の予定です。

あの後、白狼王率いる狼達を追い返したと報告し他の乗客達を安心させると、移動を再開。程なく今晩夜営をする場所に到着していた。乗客を含めた皆で、固めの黒パンと、干し肉を使った塩スープの簡単な野営食を取ると乗客には馬車の中で寝てもらい、僕達4人と一匹は少し離れた岩場の影にテントを2つ建てる事にした。これは他の乗客には知られないようにする必要があった為だ。


「白狼様、こちらに来て貰えますか?」


僕が小声で暗闇の向こうに言葉を投げると、暫くしてその暗闇から白い巨体の群れが姿を現してきた。

白狼達は、エルカシアが座る岩の前に来ると、犬の躾でいうお座り状態になり、鼻の先が地面に付くくらい深く頭を下げ始めた。僕はエルカシアの直ぐ横に座り、カーリーも僕の直ぐ横に同じように座って白狼達を見る事になる。ちなみにジュードとラモナさんも僕たちとは反対側に同じように座ってはいたがどこか腰が引けているように見えた。当然と言えば当然の反応だろう。


『白狼王、久しぶりですね。息災でしたか?』


エルの普段は見られない威厳のある言葉と態度に、白狼達は必要以上に緊張しているようだ。そんなにエルって偉い神様だったのか?


『ありがたきお言葉! エルカシア様もご無事で何よりでざいます!』


エルカシアに言葉を掛けられたのが嬉しかったのか尻尾をブンブンと振っている。ちょっと埃が舞ってはた迷惑だぞ。


『ところで、白狼王様、貴方は魔獣では無いのですか?』


僕はまず、光属性の障壁を簡単に素通りしたのが不思議だったし、一応神様の端くれのエルカシアを崇拝するものが魔獣というのもおかしかったので聞いてみる事にした。


『何を馬鹿な事を!! 人間風情が異なこと言う!』


『白狼王!! まだわ判らないのですか! このタクミ様は我が主ですよ!』


『しかし!』


納得がいかない白狼王だが、エルカシアの言葉の威圧に押され黙らされる。


『そこの人間、いや、タクミ、殿、私は神獣として、長きに渡りエルカシア様に仕えておったのだ。』


え?神獣なのか?


『それが何で魔獣になったんだ?』


『我々は魔獣になった覚えはない!』


踏ん反り返って豪語する白狼王。う~んどういう事だろう?


「ねぇ、ジュード。この子達、神獣だって言ってるけど、どうなの?」


「神獣?それは300年位前の話だろ? 理由はよく知らんが、その頃に悪魔に取りつかれて、魔獣になったて話だったかな? って、タクミお前、コイツらの言葉分かるのか?」


あ、まだジュード達には話してなかったな。でも、カーリーは平然としてるけど?


『悪魔?知らんな。その頃わし等は、人間の街に視察に行くと言われたまま帰って来られないエルカシア様を探し始めた頃だ。』


あー何か分かって来たかも。


『エル、その頃覚えてる?』


『えーとですね、確か人間の動向を観察している最中に全能神様から管理神への昇格の連絡があって直ぐに天界に昇った頃かな?』


『なんと!管理神様になっておられましたか。おめでとうございます!』


『あれ?言ってませんでした?』


『はい、私共はエルカシア様が急にお隠れになった為必死に探しました。がいっこうに行方が判らなかったのですが、その頃人間にタブらかされて幽閉された神獣がいるという噂話を聞き、もしやエルカシア様も人間の小賢しい罠に嵌められ幽閉されたのではと思い、必死で探しておりました!』


『必死に?』


『はい、タクミ殿。必死に人間共を脅してはエルカシア様の行方を探しておりました。』


堂々と自慢する様に胸を張る白狼王。


『300年間ずっと?』


『はい!』


『・・・・・・・エル。』


『はい!』


『どういう事だろうね?』


『さ、さあ?ど、どういう事で、しょうね?』


ヘラヘラ笑うエルカシアの額には人雫の汗が流れたように見えた。それからは僕の前に2人?2神?2頭?まあどうでもいいか。とにかく二人を座らせてコンコンと言い聞かせる事、1時間。取り合えず言い分も聞いてみたが、エルカシアには同情の余地無しと言うことで一ヶ月のデザート無しの刑に決まった。デザートと言ってもクッキーとかシフォンケーキみたいな物なのだが。1年前、ふと思いついて前世の記憶を辿ってクッキーを作ってみたら、女の子やお母様方に好評で特にエルが物凄く喜んで食べていた。それ以来お菓子の虜になったエルカシアにとってデザート抜きは地獄の様な一ヶ月になることだろう。ただ、白狼達はどうしようか?と考えていると、カーリーが白狼王に近づいて僕の方を見ながら首周りをギュッと優しく抱える。


「ねえ、タクミ君。この子、可哀相だよ。300年間も必死にエルカシア様を探し続けて来たんだよ?人を脅すのは良くないけど、殺した事は無いみたいだし、許してあげれない?」


カーリーが少し瞳を潤ませて僕に白狼王の許しを願ってきた。その言葉をお受けて白狼王もびっくりしていた。本当に優しい子なんだよね、カーリーって・・?! え?話解るのか?!


「ねえ、カーリー僕たちの会話って解ってるの?」


「え?解るよ。以前からエルカシア様とタクミ君が話しているように思えて、よく聞くようにしてたらだんだん言葉が解るようになって、この子の言葉なんかもしっかり解ったよ。」


当然のように言うカーリーだが、これはさすがに驚いてしまった。僕とエルカシアは、あの世で出会って全能神様の加護で主従の契約をしていたから念話で会話する事が出来るはずなのに、契約もしていない普通の人が神に近しい者との念話が出来るはずがなかった。


「どういう事か解るか、エル。」


「はい。まず全能神様は私をタクミ様の側に遣わす為に、主従契約をされました。ただ、身分が下がったとはいえ私も神の端くれですから、その神と人では普通、契約は有り得ません。人としての徳を積み、神に選ばれた者なら可能ですが。タクミ様は始めから神核を全能神様から授かってますので問題なく私と契約することが出来たのです。ここからは推測ですが、いつも一緒に遊ばれて、カーリーさんのお母様からも冒険者としての鍛練をずっと一緒にされて来たのでタクミ様の神核の波動を間近で受け続けられた事で、同じ様な神核がカーリーさんにも出来たのかもしれません。」


んー言っていることはだいたい解るが、


「その神核とは何なんだ?」


「神核とは、神になる為の条件の一つとなります。」


今、あっさりと凄いこと聞いたような気がするんだが、これ以上聞くのは怖いのでその事は一旦棚上げだ。それよりカーリーの願いだが別に僕も白狼王にはそんなに処罰とかする気は無いんだよね。


「良いよ、カーリー。これからは人を脅さないと誓えたら許してあげるよ。」


そう言うと満面の笑顔になって白狼王をギューッと強く抱きしめる。


「良かったね!これからは悪いことしちゃ駄目だよ。」


白狼王にスリスリするカーリー。あーとっても気持ち良さそうだなあ。後で僕もさせてもらおうかな?

などと考えていたら、白狼王がエルカシアに真面目な顔で向き直る。


『エルカシア様、我の思い違いでご迷惑おかけしました。そして人の子等よ、今まで300年間、魔獣と思われ続けるほど恐怖を植付けてしまったこと謝らせてほしい。本当に申し訳なかった。』


うん、実直な性格なんだろうな。エルにも少しは見習って貰いたいところだな。


『そして、せめてもの償いとして、我にこの強く優しい人の子の守護をさせてもらえないだろうか?』


神獣の言葉にカーリーがびっくりしている。僕もびっくりしてしまった。


『そんな事出来るんですか!?』


『無論! タクミ殿と同じく神核をどうもこの子もお持ちの様だ。これなら我との契約も問題無いだろう。』


さらっと言ってくれる。つまりカーリーも神核があって、僕の予想だと、将来神様になってね♪

などという理不尽な話が僕だけでなくカーリーにもあるということでは?考えただけで気が遠くなりそうだ。取り合えずこれも棚上げだな。何故かどっと疲れた気がしたが取り合えず話を進めよう。


『わかりました。カーリーは問題無いかな?』


『え?良いの白狼王様。私なんてまだ6才の普通の女の子なんだよ?』


うーん普通の女の子が白狼を投げ飛ばすとは思えないんだがな。村にいた時までならあんな動きは出来ていなかったはずだし、ラモナさんと比較してもスピードもパワーも軽く凌駕していた。これも神核の影響なのか?あとで検証しよう。


『良いのだ。我が認めたのだ。何も問題にすることではないぞ。』


カーリーは少し思案したものの、白狼王の強い申し出を断る理由もなく受け入れる事にした。


「えーと、それで話は纏まったのかな?」


「カーリー魔獣を捕まえて絞めてたけど、殺すなら手伝うわよ?」


話が一通り終わったとみてジュードが話しかけてくれた。ラモナさんは物騒な事言ってたけどここは無視だな。二人に事の成り行きを説明し納得してもらったところで今晩は寝ることにした。


この後、二つのテントの割り振りで大揉めしたのだがそこは、ご想像にお任せします。


翌朝、新たな仲間を加えて王都に向けて出発する。


ちなみに白狼王はそのままでは目立ちすぎるのでどうするか悩んでいると、カーリーの意思で大きさを変えられるとの事だったので前世で言うシェパード位の大きさになってもらった。これなら魔獣ではなく神聖獣の幼生体と思ってくれるらしい。それでも問題の様な気がするがエルの事もあるので諦める事にした。


前途多難な王都までの旅があと1日続く予定です。


次は王都編の予定です。



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