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公爵令嬢争奪真竜対決 5

宜しくお願いします。

「それでは!これよりグランディール公爵家姫君!カルディナ様の婚約者選考大会の開会式を始めまーす!!」


「ううぉおおおおおおおお!!!!!」


コロシアムに響き渡る開会の宣言と、観客席を埋め尽くす人の雄叫びで会場全体が揺れているかのようだった。


「しかし、もの凄い盛り上がりようだな。」


タクミはコロシアムの中心にある舞台場で、その熱気の凄さに感心していた。


『タクミ君、どう? 何か変わった事あった?』


カーリーが念話で会場の様子を確認してきた。


『特に今のところ怪しい者とかいないよ。と、云うより、みんな怪しいけどね。』


そう言って当たりを見渡すタクミに写るのは、カルディナの婚約者になるが為の玉の輿狙いの男性で、魔術で付加された高価な鎧を纏う者、どこぞの魔剣の様な異様な霧を出している大剣を持つ者や、黒装束に身を包み静かに佇む者等、多種多様で一般人ではない怪しい者の集まりだった。

中には、獣人やドワーフもいるようだ。


『僕のライバルになる人がざっと300人だっけ? この広い舞台場にいると案外少なく感じるね。』


そう、このコロシアムの舞台場は、この国でも1、2を争う大型コロシアムで、一番長い所で200mを超え、短い方でも150mは超えていた。

そこに300人くらいの人間がいても、そう場所を占拠する程ではないようだ。


『みんな、とにかく王族の事も、ルーナさんを暗示に掛けた者の事もあるから、周囲に気を配ってくれ。エルは僕のサポートお願い。』


『了解致しました。』


タクミがみんなへの最後の確認を終える。


「それでは、大会の開始の前に、我がシルフィテリア王国の光!ゴルエド・シルフィテリア三世国王様より開幕の宣言をお願い致します!」


派手なアナウンスの後、コロシアムの上座に設けられた特別観覧席に居た、国王が競技場の方に向かって張り出すバルコニーの最前面に立った。


「おー、パチ、、、パチ、、」


右手を上げ、笑顔で観衆に応える国王の図式だったが、その声援は、音すら届かぬ深き森の最奥で一匹の虫が飛び跳ねた音のように小さかった。

ゴルエド国王の笑顔が引き攣っているのが遠目でみるタクミにも解った。


「うわああ、これほど人気の無い国王も珍しいね。」


タクミはとても珍しい光景を見て唖然とする。


「そ、それでは!カルディナ・グランディール嬢の婚約者選考大会の開会をここに宣言する!!」


「ジャアーーーーーン!!!」


国王の宣言が終わると同時に、楽団が大きく高揚するような音楽を奏で競技者の気持ちを高ぶらせるはずだったが、楽団の演奏が終わっても、拍手する者は数人程度にしか聞こえなかった。

ちなみにこのコロシアムの観客数は満員で4万5千収容出来た。

そして今日は立見もあるので、5万人以上が観戦に来ていたはずだった。


「クッ、我は不愉快だ!」


観客には聞こえない様に、拡張器のマイク側を手で押さえ隠しながら暴言を吐いていた。


「あまり人の悪口を聞こえてしまうのも面白くないね。」


タクミには神核のせいか、その人を指定して注聴すると、どんなに小さな声でも聞こえてしまうらしかった。

この能力も最近知ったのだが、いつだったかヴェルデとカーリーがヒソヒソと二人で話しているのが気になって注目していたら、聞こえて来たようだ。

内容がタクミ夜ばい作戦を画策していたのでそれは事前に判って助かったらしいが、今回の様な悪口はあまり聞きたくないようだ。


「それでは続いて、セレイド皇太子殿下、カルルド王子、クドエルド王子の選考参加への意気込みをお聞きしたいと思います!」


司会の言葉に会場中が静まり返った。

三王子のお言葉をお聞きしようと注視している様に見えるが、良く見ると皆目が鋭くなっているのにタクミは気づいた。

と、云うより恨みや怒りの目を王子達に向ける者が多数いて、会場が異様な雰囲気になっていた。

ただ、とうの三人は気づいていないのかニヤケ顔でバルコニーの先端に達会場を見渡している。


「諸君!カルディナ嬢の婚約者を決めるこの大会に集まってくれて感謝する! これは王族の余興のようにも見えるが、このシルフィテリア王国の有能な人材の発掘が実はメインである。将来、その有能な人材を束ねる者こそ、今回の優勝者であり、カルディナ嬢の婿に相応しいと思うのだ! そして我等三人がこれに参加するのは、その束ねる人材こそ、私達であることに間違いないと確信しているかれである!」


つまり、カルディナの夫になるのは自分達だぞ、言いたい訳だ。

タクミはこの演説で、この大会は茶番であることに確信した。


「私達は逃げも隠れもしない! 真竜と真っ向から立ち向かい、倒して見せようぞ。そして私達を超える猛者の出現をも期待しておるぞ!」


大見得をきり、片手を高だかと突き上げ、決めポーズを作る皇太子だったが、観衆や参加者は完全に無視していた。

ほんの少し、官僚側や王宮騎士の中から拍手がおこるくらいだった。

やり場の無い上げた片手をゆっくりと降ろし、きびすを返して演台から帰って行く。

振り向きざま、チッ!とか舌打ちしているのをタクミは見逃さなかった。


「あ、ありがとうございました。」


あまりの盛り上がりの無さに、少し司会の人も焦っているようだ。


「最後に、カルディナ・グランディール姫様から参加される皆様に激励のお言葉を頂戴いたします!」


司会の言葉と共にバルコニーの演台にカルディナがその姿を表す/


「ウオオオオオオオ!! カルディナ様!! 姫様! お美しいです!! 私!頑張りますぞー!」


一斉に会場のボルテージが上がった。

これにはタクミも唖然とするばかりだ。


「凄い人気だねえ、カルディナって!!」


『そうですね。彼女のカリスマ性は群を抜いていますし、知力、体力、剣術、美貌、どれを取っても王族の系列で近年見当たらないほどの逸材ですからね。』


ヴェルデがタクミにカルディナの説明をする。


『彼女が時期王になればと思っている者も少なくないですよ。』


フラムがそれに加わる。


『だから余計に、王族にとって彼女は厄介者なんだね。』


タクミは王族のせこい考えが気に入らなかった。

どう見ても民衆に悪態をつくような王族が良い国にするために努力しているとは思えなかった。

それを棚に上げ、カルディナの力に嫉妬するなんて情けないとタクミは思った。

カルディナはその力を得るために物凄い努力をしてきたはずだった。

現にタクミ達と寮で過ごしているあいだも、一度も剣術や魔術の修練を欠かした事が無かった。

たまにタクミ達とも一緒に修練したが、その態度は真剣そのもので、タクミも見習わなければと思ったほどだ。

だから、彼女の申し出にタクミは応えたのだ。

だから、彼女をおもちゃにしようと考える王族が許せなかった。


「皆さん!今回私の様な者の為にこれだけの方が集まって頂けた事、感謝いたします。相手はまだ若いとはいえ、真竜です。先ずは自分の命を1番に考え、戦って下さい。それだけを願っております。」


丁寧に語りかけるように話すカルディナに、皇太子達と同じ様に会場が静まりかえっていたが、その内容は180度違っていた。

カルディナの心遣いに皆が感動しているようだった。

そんな参加者を一通り見渡し、最後に大きくお辞儀をすると、会場が一斉に沸き返った!


「うおおおおーカルディナ様!!万歳! カルディナ様の言葉肝に命じましたぞ!!」


完成の続く中、カルディナは演台から下り元の席に戻ろうとしたとき偶然にタクミの存在に気づき、タクミもその視線を感じた。


「タクミ様ー!!応援しております!」


大声を出して、大きく手を振るカルディナ。

それを見た群集と皇太子達の視線がタクミを襲った。


「カルディナ、こういうボケは要らないよ。」


大会開始直前、タクミ対大多数の構造が出来上がってしまった。

読んでいただき有り難うございます。

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