公爵令嬢争奪真竜対決 4
投稿致します。
タクミは、コロシアム内にあった控室を出て、ルーナに案内されるままに、ある一画を目指していた。
施設の中でも上の階にある一室で、王族や、公爵家専用の控室とが設置させている場所であった。
ルーナに連れられたタクミ達は、ある一室の扉の前までやってきていた。
「ここがカルディナ様がお待ちになっておられるお部屋でございます。」
ルーナが静かにその扉を開け、中へ入るよう促す。
タクミとフラムは案内されるままに部屋へと入った。
「バタン! ガチャ!」
二人が入ると同時に、扉を閉め鍵をかけるルーナ。
その音に気づき振り向くと、ルーナが腰の剣を抜いてタクミ達に向けて構えていた。
「これは、どういう事でしょうか?」
ルーナは答える事なくそのまま姿勢でタクミとフラムを睨み続けていた。
そんなルーナにもう一度尋ねようとした時、部屋の家具の影やカーテンの影から3人の女性騎士が現れ、タクミ達を囲むように剣を向け構えた。
「タクミ・カーヴェル、カルディナ姫様への不敬罪で処刑いたします。」
ルーナが唐突な言葉に、びっくりするタクミとフラム。
「タッ君が何をしたって言うの?」
フラムは直ぐに反論する。
全く身に覚えのない事だから当然である。
「白々しい! 自分は真竜を倒せるだと言って、姫様の弱みに付け込んで、婚約者の座を狙う悪党共! 本当はそんな実力もないだろうに、前もって仕掛けていた魔神を封じた石を使って人に憑依させ、大学での事故を人為的に起こし、さも自分が倒したように見せ掛け姫様を騙したのは解っているのです! そして信じ込んだ姫様を仲間と共に犯し、汚した事、その命をもってしても計れない程の罪をあなたは犯したのです。ここで、殺してあげるだけでも感謝しなさい!!」
言われのない事に驚き、殺されるのに感謝しなさいと無茶を言うルーナに反論しようとするが、その瞳は憎悪の炎が燃え盛り、人の言う事など聞きもしないと語っていたので諦める事にしたタクミ。
ただ、このまま殺されるのも嫌だし、誤解は解かなければいけないので、念話である人物に話してみる事にした。
『カルディナ、聞こえる?』
『あ!はい!聞こえますタクミ様!』
『良かったあ、ちょっと困った事が起きてね助けて欲しいのだけど良い?』
『もしかしてルーナの事ですか?!』
『お! そうだけど何で解ったの?』
「ドン!グラガアララ!!!」
タクミが念話で話している最中に突然部屋の扉が爆発したかのように吹き飛ばされたのだ。
「それは、わがグランディール家の警備隊の者から、昨夜警備隊長のルーナに密告が届けられそれがタクミ様に関する事だと解ったからです!」
扉が砕けた後の煙りの向こうにカルディナが正装の鎧を着、剣を構えた姿が見えた。
「カ、カルディナ姫様!」
「ルーナ、何をしているのです! 剣を収めなさい!!」
もの凄い剣幕で怒るカルディナの勢いに、さすがのルーナも一歩引いてしまう。
「それは出来ません! こいつは姫様の純潔を奪った極悪非道の輩なんです! そんなゴブリンみたいな奴、死ぬのが当たり前なんです!」
半分涙目で訴えるルーナ。
ちょっとその様子はおかしかった。
いくら密告があったからと言ってこんなに簡単に信用してしまうものだろうか?
かりにも、グランディール公爵家に使える警備隊の隊長がである。
「その密告とは誰からです?」
「それは・・言えません。」
「私の命令でもですか?」
「はい、あ、いえ、・・そう・です。」
カルディナの質問に答えるルーナの言葉が何か歯切れが悪い。
「父様は、この事は知っておられるのですか?」
「いえ、私の単独行動です。」
「おかしいではありませんか? 父様に仕えるあなたが、何も言わずに行動するなんて、今までありませんでしたよ?」
カルディナの言葉にルーナは黙る。
それに何処となく落ち着きが無く、脂汗をかいているし、何かに耐えているように見えた。
「タクミ様、やはりルーナはおかしいです。こんなに、落ち着きの無い態度をとることはありえません。あなた達もルーナと同じですか?!」
「い、いえ、私達はルーナ隊長に言われ、カルディナ姫様をたぶらかす者がいるので着いてこいと言われただけです! その方がこのような少年とは、知りませんでした。」
ルーナ以外の騎士達はカルディナとの言い合いに何処か戸惑っているようだ。
「カルディナ、このルーナさんはいつもと感じが違うんたな?」
「はい! いつもはこんなに落ち着きが無いなんて事はありません! いつもは、堂々としていていますし、私がちょっと部屋の中で剣の素振りをして調度品を壊すと、ガミガミと小言ばかり言って来ますし、歴史の勉強が嫌いなので、授業中街に逃げ出して遊んでいたら、わざわざ屋敷から探しに来て説教されるわ、まだ若いのに小姑のような強く怖い女性なのに、その怖さがありませんわ!」
力強くルーナの事を説明するカルディナ。
カルディナって結構やんちゃ?。
今の容姿からは想像できない、やんちゃなエピソードのカルディナに案外良いなと思うタクミだった。
「な、何を言うのですカルディナ姫様! わ、私は姫様の事を思ってですね、小言を言ってるのですよ! 言いたくて言ってる訳じゃありません! それに小姑ってなんですか? 私まだ19才ですよ? そんな事言われたらお嫁に行けないじゃないですか!」
涙目になりながら必死に反論するルーナさん。
「あれ?さっきまでと雰囲気が違うぞ?」
『はい、どうもその女性何か強力な暗示に掛けられていたみたいですが、カルディナ様の精神攻撃で正気に戻ったようです。』
エルカシアが念話でタクミに呪縛魔術の気配があったが、それが解けた事を教えた。
「カルディナ、どうもこのルーナさんに魔術で強力な暗示を掛けられていたようだよ。」
「そうなんですか? でも、どうしてルーナが? それに、どうして解けたんです?」
不思議そうなカルディナだったが取り合えず、ルーナがタクミを殺そうとしていたのが操られていたと云う事に少し安心していた。
「ルーナ、大丈夫ですか?」
「え?あ、姫様どうしてここに? あれ?私はどうして、?!」
ルーナは一瞬状況が解らず、周囲を見渡す。
そして自分が抜刀していることに気づきまた驚く。
「こ、これは! 申し訳ございません! 姫様の前で剣を抜くとは!」
「いいえ、良いのですよ。あなたはどうも誰かに操られていて、この私の大事なお方を殺そうとしていたようです。操られていたのですから仕方ありませんけどね。」
低いドスの効いた言葉を放ち、強烈な殺気を放ちながら、剣に手を置くのはやめましょう。
それにしても、強力な暗示も解除されるほど、女の子にとっては結婚できない方が恐怖なんだろうか?
「も!申し訳ありません!!」
もの凄い勢いでお辞儀を繰り返すルーナさん。
「私はいいですから、私の愛おしいタクミ様にお詫びして下さい。」
きゃー!愛おしいって言っちゃった! とか叫びながらニヤニヤするカルディナだった。
「申し訳ございません、タクミ様。カルディナ姫様が選んだお方が、そのようなお方でない事は解っておりますのに、なんとお詫びしてよいやら。」
恐縮するルーナにタクミは問題ないと手を振る。
それよりタクミには聞きたいことがあった。
「それよりルーナさん、この様な偽情報を持ってきたのが誰だか話していただけませんか?」
タクミのお願いに、ルーナは素直に答える。
「はい、先日のラングトン大学新入学式での一件で、王宮からの調査報告を旦那様に持って来られた、王宮付きの監察官からです。」
「王宮のねえ。」
「タッ君を狙って王宮が何か仕掛けて来たって事?」
「どうだろう? でも気をつけた方がいいのは確かだね。」
なにか不安を抱えたまま、真竜対決はしたく無かったと思うタクミであった。
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