公爵令嬢争奪真竜対決 3
続けて投稿いたします。
「カルディナ嬢も焼きが回ったのではないか? まさか、このような貧弱な子供を立てて来るとは!」
勝ち誇ったように笑う皇太子殿下。
それどころか、その配下である青年衛士も見下した様に笑っていた。
「この戦いは我が勝利するのは解っておるが、少しは楽しまなければおもしろくないと思ってな。一応ライバルになるであろうと思ったカルディナの推薦者に、我の方から挨拶に来てやったのだが、とんだ無駄足だったわ! ハ!ハ!ハ!ハ!ハ!」
どうも皇太子殿下もこの真竜対決に出るようだ。
それも勝気でおられる。
タクミは、何かこの戦いに裏があるように思えた。
「タクミとやら、話す事を許すので何か最後に言いたい事があれば聞いてやるぞ? 我のこの装備を見て何か言う事があればだがな!」
そう言って自分が着用する武器防具を見せびらかすように掲げた。
確かに、鎧一つとっても、金銀の細工が表面に施されるきらびやかさと、性能面でもその耐性魔術の掛けられている状態からも、国宝級と言っても過言ではない防具だった。
剣も皇太子殿下の体には少し大きすぎる大振りの剣だが、握手にも竜の細工が施された、貴重そうな作りでこれにも強化耐性が掛けられ、その上に攻撃魔術まで付加されているようだ。
皇太子殿下自信はそれほど鍛えてる様には見えないし、装備だけで勝てるとでも思っているのだろうか?
「は、お言葉をお掛け頂いただけでなく、こうして言葉を交わす事を許された事、末代までの栄誉とさせていただきます。今回、カルディナ姫様に縁あってこの真竜対決に参加させていただきましたが、殿下を御拝謁させていただき、その装備の凄さに、自分では到底身につける事は出来ぬ高価な代物に感服いたしました。私など、出る幕では無いと思いましたが、今後、この国に仕える事を夢見る者として、殿下の勇壮振りを拝見させて頂き、我が身の糧とさせて頂きたく、お許し願いますでしょうか?」
「お、おお!解っておるではないか!御主、カルディナと違って我を見る目が有るではないか。気に入ったぞ! 我が身の前におる事を許す! 存分に我の勇士を見るがよいぞ! ワ、ハッハッハッハッハッ!」
皇太子殿下は、タクミの言葉に大喜びし、機嫌よく控室を後にしたのだった。
「タッ君。!タ、タッ君!大丈夫?」
殿下が去った後、平伏したままのタクミにフラムが声をかけるが、いっこうに返事が無い事に心配になって大声をあげた。
「・・・・・・う、うー、しんどかったー! 事の前だから荒事にしたくは無くて、突発的に嘘をついてしまったけど、言ってて自分が情けなくなって苦しかったよ。」
「良く我慢しました。お姉さんが慰めてあげるね。」
フラムがタクミの頭を抱え抱きしめてきた。
それに癒されるタクミと違って、周囲の視線は完全に殺意に変わっていた事はこの二人は全然無関心だった。
「それより、今の殿下の口ぶりだと、自分が勝つ事はもう決まっているように聞こえたんだけど?」
フラムの疑問にタクミも肯定する。
「たぶん、何か仕掛けているんだと思うよ。」
「でも、クロちゃんが真竜には人の力なんか全然及ばないって。」
「そうだね。皇太子殿下が支配していると勘違いしているなら、そう問題は無いけど。」
「けど?」
「うん、ちょっと嫌な感じがするんだ。特に、これといった物ではないんだけどね。男の直感? なあんて、そんなもん当てにならないか?」
タクミは笑って誤魔化すが、フラムは真面目な顔でいた。
「タッ君がそう言うなら、本当だと思う。今までタッ君が嘘ついた事なんかないもん。」
フラムはまたタクミの頭を抱えて今度は頭を頬ずりしてきた。
タクミは何か小動物にでもなった気分だったが悪くない気分だったのでそのままさせるがままにしていた。
「それじゃあ、ヴェルデやカーリー達にも伝えておくね。」
「ああ、お願いするよ。」
取り合えず、皇太子殿下の登場というサプライズは事なきを得たが、返って不安要素も増えたので、ここは慎重に事を進めようと考えるタクミだった。
「ここに!タクミ・カーヴェル様はおられますか?!」
何か同じシチュエーションに、嫌な予感が過ぎったタクミだった。
「はい、僕ですが何か?」
その声の主は、先ほどの青年衛士と同じ鎧を身に纏っていたが、それよりも少し細めで、どちらかと云うと体のラインが解る程のフィット感ある鎧に、白いマントを付けた女性騎士だった。
「あなたが、タクミ様でいらっしゃいますか。申し遅れました。私、カルディナ・グランディール様の配下であります、ルーナと申します。」
ルーナと名乗った女性は、金色の長い髪を後ろでアップにしてまとめた、色白の美女であった。
鎧姿も凛々しく様になっており、その姿勢や仕種がいちいち優雅であることからも、貴族騎士なのだろうとタクミは観察していた。
「カルディナ姫様の配下の方ですか? 今、何かありましたでしょうか?」
タクミはカルディナから、この対決試合が終わるまでは、公爵家としての責務があり、たぶん会えないだろうと伝えられていたので、わざわざ使者を立てるとなると何かあったのかと疑ってしまう。
「いえ、少しお時間が出来ましたので、お会いしたいとの事でしたのでお伝えしたく、探しておりました。」
「そうでしたか。」
「はい、では私に着いて来て頂けますでしょうか?」
「はい、解りました。」
そう言って、控室から出ようとするルーナさんに、タクミとフラムが付いて行った。
その後ろでは、男共が大声で泣き叫んでいたとかないとか。
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