入学Ⅵ
投稿致します。
数分くらいたっただろうか?
物凄い長い時間が過ぎた様にも感じられる二人の睨み合いは、会長の一言で戦わずして終わる事になった。
「参りました。フー、まさかこの私が一歩も動けなかったなんて考えもしなかったわ。」
大きく息を吐き、今まで貯めていた力を解放すると案外サバサバした感じで、悔しがる素振りも見せず降参を認めるグランディール会長だった。
「いえ、私も飛び込みたいのに、その隙を見つける事が出来ませんでした。さすが大学院の方は凄いと改めて思い知らされました。」
カーリーも素直に会長の凄さを認めたようだ。
それにしてもカーリーにここまで言わせる会長ってどんな人なんだ?
年は僕達より上は判るんだけど、結構大人びて見えるしでもこの学院の生徒ならそんなに年という訳でもなさそうだし。
「ねえ先生?聞いてもよろしいですか?」
未だに僕の後ろで寛いでいるコーナル先生に聞いて見ることにした。
「今さらなんですが、グランディール会長ってどんな人なんですか?」
「確かに今さらだね。でもタクミ君なら答えてあげるよ。何が聞きたい?私の趣味とか好きな食べ物とかも聞きたい? あ、今彼氏なんかいませんからね。」
全然聞きたくない事を教えようとする先生。
気を抜きすぎです。
「いえそれは良いですから、グランディール会長の事を教えてくれませんか?」
そんな恨めしそうな顔しないで下さい。
なんで涙目なんですか?
「解りました、後で先生の趣味も聞きますので、今は会長の事教えて貰えませんか?」
「ちぇっしょうがないな。解りました。話せる範囲で話しますけど、まず彼女は13才でこの大学の生徒会長ね。」
「はい、え?13才なんですか? もう少し上かと思ってました。」
「それはあれかな?胸が私より大きいからかな?」
「い、いえ!そんな事はないんですけど・・」
「男の子、男の子、良いわよそれぐらいの方が!」
なんだかコーナル先生僕の後ろに居ると性格がどんどん変わって行ってないか?
「それとカーリー、僕を見つめながら、自分の胸を揉まないいの!大丈夫だからね、まだ7才なんだから大きくなるのはこれからだからね。」
はあ、話が進まないな。
「それで、会長はどんな方なんです?」
「そうね、ラングトン大学の長い歴史の中でもトップクラスの保有魔素量を持ち、剣の技術と戦闘センスがずば抜けていてね、将来は英雄級の逸材って言われているわ。」
「もちろんこの国の方なんですよね?」
「その辺の個人的な事に付いては私もよく知らないのよ。ただ、平民というわけではないのは確かよね、私なんかと比べても所作が優雅だし、あの美しさだもの。」
先生は肩をすぼめて自分が勝る所なんか無いですみたいに溜息をついていた。
「そんな事無いですよ。先生だって十分若いし可愛いじゃないですか。先生には先生の魅力があるんですから卑下する事はありませんよ。」
素直に先生は魅力が有ると思うんだけどな?
極度の上がり症が無ければだけど。
あれ?先生、顔が真っ赤ですよ?
「タクミ君、前にも言ったよね? 無意識に女性にああいう言葉を簡単に掛けないこと! 優しい所はタクミ君の魅力だけど、私達は大変なんだからね。」
解った?と念押しされてしまうが何がいけないのか良く解らないので適当に首を縦に降っておくことにした。
カーリーそれを見て納得してくれたのか、うんうんと頷き今度はルゼの方を向く。
「えっと、ルゼ、話の続きなんだけど。」
カーリーがルゼにシロの事を話そうとしたが当のルゼは、ぼーっとカーリーの事を見つめて顔を赤くしていた。
「ルゼ?大丈夫?」
「は!はい!お姉様!」
「はい?」
「いえ!す、すんません! いきないりお姉様なんて言うてご迷惑ですか?」
「いや、あの、確か私とルゼって同い年くらいじゃなかったかな?」
「はい!でも先ほどの白狼様を従えての勇姿を拝見し感動してしもうたんです! まるで、女神エルカシア様かと見紛うほどにです! うちは確信したんです。カーリー姉様はエルカシア教の救世主になるお方ではないかと! どうか!私を姉様の下僕に!」
カーリーはルゼの勢いに腰が引け青ざめて僕にしがみついて来る。
そりゃそうだろう。
今のルゼはちょっとした変質者の顔になってるもん。
「ルゼ、そんな顔で迫られたらカーリーが怖がるから辞めてあげて。」
「えー!そんなうち変ですか?カーリー姉様に捧げる愛は本物ですよ!」
「私はタクミ君しか愛は要らないの!」
カーリーは余りの迫力にルゼを足蹴にするも、それを嬉しそうにルゼが甘んじていた。
ルゼって変態だったのか?
もしかしてエルカシア教ってこんな人が多いのかな?
『タクミ様、今、物凄く失礼な事考えませんでした?』
エル、なかなか鋭くなったな。
「アハハハハ!面白いですね、ルゼリアさんって。」
会長が笑ってるよ。
「気にいりました。カーリーさんとルゼリアさんは合格と致します。」
「えー!?そんなんで合格にして良いんですか?」
「良いんですよ。この場での採決権は私に一任されてますから。私が満足すればそれが合否の理由です。」
会長がシレッと言い切る。
まさか採決が教師では無く生徒会長にあるだなんて。
仕方ない、カーリーが合格なら僕も頑張らないとな。
もし、会長に気に入られなかったら不合格となってカーリーが悲しむだろうからな。
「それでは、最後に僕と立ち合いお願い出来ますか?」
「もちろん! カーリーさんがそこまで慕うあなたの実力、大変興味があります。」
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