試験を終えて3
試験編最終話です。
次回から大学編の予定です。
「カーリーからも言ってやってよ! そんな事してないって!」
「そんな事?」
あー!カーリーってまだ何が判らないのか!?
「そんな事って!エッチの事よ! 男と女の小作りの営みの事よ!」
ヴェルデ、酒の勢いもあってカーリーに詰め寄ってるよ。
ただ、あんまりそういう事を大声で言わないでほしいな。
一応ここ大衆酒場なんだし、まだ周りに人が結構いるんだよ。
あ、こっち見てにやけてるオッサンがいる。
『シロ、あのカーリーを見てにやけとるオッサン、威嚇してきて。』
『承知!』
これでこっちを見るやつは少なくなるだろう。
それより!
カーリーがヴェルデの言葉を理解したのか一層顔が赤くなり頭から湯気が出てそうな程だ。
「あー!!やっぱりやったのね! 私達はお預けされて、カーリーばっかりずるい!!」
「いや!本当にやってないから! カーリーも紛らわしい態度しないの!」
そう、カーリーに言おうと振り向くと、いつのまにかカーリーが僕の横腹辺りのシャツを指で掴んで、下から覗き込むように僕を見つめて来ていた。
か、可愛い、全て許してしまいそうになりそうだよ。
「タクミ君、その、あのね、この間、その一緒に寝た時ね、」
「やっぱり!一緒に寝てるんじゃない!!!」
「ややこしいから、ヴェルデは黙って!」
そういえばフラムは、あ、なんか目が座って葡萄酒を飲みつづけてる。
「その、時ね、おやすみの、キ、キ、キスを、してしまったの!!! これは、お母さんが絶対にしないといけないからって言ってたから。」
また!野生動物の頂点みたいなジェナおばさんの差し金か!
「でも、おかしいわね? いくらキスとは言っても血の受け渡しが出来る程とは思えないんだけど?」
カーリーの言葉を聞いてかちょっと冷静になったヴェルデが首を傾げながら?マークを頭にいっぱい出しているように見えた。
「それでね、お母さんが言っていたようにね、ちょっと、その、舌をね・・・・キャー!!これ以上言えないよう!」
「い、入れたの!!」
また、ヴェルデが興奮して今度はカーリーの両肩を鷲掴みして問い詰めていた。
余りの勢いに押されて、カーリーがコクコクと頷いている。
寝ている間にそんな事されてたのか?
「どうだった?!」
何故感想を求める!
「そのね、凄くね、気持ち良かった。」
と言ってカーリーは体中赤くしてテーブルに突っ伏してしまった。
僕の方が顔を隠したい気分だよ。
でも、これで属性元素の謎は解けたよ。
「ずるい!ズルイ!ずるい!ズルイ!! 私もー!!」
ヴェルデがそう叫びながら飛び込んで来た。
椅子に座っていた僕は転げ落ちそうになりながらも何とか持ちこたえ、ヴェルデを抱き留めれた。
「でも、落ち着け!ヴェルデ! 公衆の面前で、する事じゃないぞ!」
それでも迫って来るヴェルデを押さえながら、フラムに助けを求めようとしたけど、物凄く目が据わってるのが視界に入って来た。
「皆して、楽ししょう、でしゅ、にぇ。わらいも、まれて、くらさいよ!」
駄目だ!ただの酔っ払いだ!
ヴェルデの猛攻とフラムの絡みに堪えながら誰かに、と思っていたらクロちゃんが涼しそうにお酒をチビリチビリと嗜みながら、こっちを見ているのに気づいた。
「クロちゃん!助けて!何とかして!」
藁尾も掴むとはこの事なんだろうなあと、変に冷静に考えてしまったが今はクロちゃん頼みなのだ!
でも、クロちゃん、しばし腕を組ながら考える素振りを見せている。
「そんな悠長に構えて無いで助けて下さい!」
僕がそう叫ぶと椅子を立って、僕の方に来てくれた。
「お主達、もう少し乙女らしく振る舞えんのかの? そんな事ではタクミ殿に愛想尽かされるぞ?」
クロちゃんのこの一言で激変した。
ヴェルデもフラムもシュンとなって大人しくなってしまった。
フラムは酔いで体が常に動いてるけどね。
でもさすが、500年生きてるのは伊達じゃないね。
「そのような事は部屋に戻ってから存分にすればよかろう?」
その言葉に下を向いていた彼女達が、目を輝かせて起き上がると、僕の両サイドをガシッと掴んで引きずり始めた。
「クロちゃん!何、言ってるんですか!」
「え?男と女の営みは公衆の場でするようなもんじゃないぞ? どれ、わしも手伝ってやろう。」
とか言いながら僕の脚を掴んで完全に逃げられないようにされてしまった。
こうなったらカーリーに、と思ってテーブルの方見たけど、いつのまにかクロちゃんの後を追う様について来ていた。
カーリー君もなの?
『エル!シロ!』
『申し訳ありません。私、彼女達には逆らえませんので。』
『わたくし、カーリー様に部屋の周りを警護するようきつく仰せつかっておりますので。』
神様にも見離された僕の運命は?
読んでいただいてありがとうございます。