ラングトン大学 試験編Ⅸ
かなり間が空きすみません。
久しぶりに投稿いたします。
次回はもうすこし早めにしたいと思います。
「さてと、こうして向かい合うとさすがの迫力だね。」
黒く大きいこれが悪魔なのか?
体は人の姿で顔は牛?ミノタウロスか?角もあるしね。
「お、前たち、は、魔導士か?」
「え?喋れるの?」
いきなり、前にそびえる様に立つ黒い牛頭の悪魔が話し掛けて来たのに驚いてしまった。
「あたりまえだよ。悪魔は、知能が高くてちゃんと感情もあるよ。」
フラムが教えてくれた。
でもなんか怖い目で見てるよ。
あれって恨まれてるよね、絶対に。
「お前達下等な人間風情に不覚をとり、一度は王共々封印されてしまったが今度はそうはいかんぞ!」
「何言ってんのよ! あのまま封印されてりゃ良かったのに、極大魔術ぶっ放してくれたおかげで、私の体が消し飛んでしまったんだからね。お互い様よ! まだ封印の方がましじゃない!」
負けじとヴェルデが言葉で応戦してる、というよりやっぱり悪魔絡みで一度死んだんだ。
今、こうして話しているから実感が湧かないから平然と出来ているけど、よくよく考えたら物凄く大変な事じゃないのか?
「ねえ、ヴェルデ、死んだってこの悪魔のせいなの?」
「そうよ!タクミ君聞いてよ。こいつらがね、私を無理矢理縛り上げて、服を剥がして舐め廻したのよ。そして、最後には・・」
「何、言ってやがる!そこの女!! って?え??お前あの時の魔導士なのか? あの、人にしておくには惜しい、本当に鬼のような女魔導士なのか?!」
なんだそれは?
あ、急にヴェルデとフラムの二人がそっぽ向いて、口笛吹いてる。
「チッ余計なことを覚えてやがる。」
なんて小声で言っているよ。
聞こえてるからね。
「ねえヴェルデ、いったい何したの?」
僕は知らん振りしている彼女に問いただして見るが、口を開いてくれないので悪魔に聞いてみることにした。
「ねえ、悪魔さん、彼女が何かしたんですか?」
「お前、知らんのか? こいつは、いきなり真っ裸で我等悪魔の奥の間に転移してきやがって、魔王の衣服を剥がし身に待とうと、そこらにいた仲間をボッコボコに殴り倒しまくったんだぞ! 私らが、降参するのでもう止めて欲しいと言っても聞く耳なんか持ってもらえなかった、鬼の様な人族なんだぞ! そのうえで、極神聖結界を発動して一人残らず封印してしまった本当に鬼畜のような女だ!」
「だって、だって!しかたなかったんだもん! 当時の王子、今のこの国の王、シルデフィリア19世が、私の事を気に入って妻にしようとしたんだよ! 判るでしょ?!」
「ゴメン、まだよく判らないんだけど。」
僕の戸惑った顔を見て膨れっ面になるヴェルデ。
そうは言ってもさっぱり判りません。
「つまり!私はタクミ君のものなの!あんな変態王のものになんか成るきは無いの! だからきっぱり断ってやったのよ。そしたら、私の食事に薬を漏りやがって、気絶している間に裸にされて、神殿の祈りの間に吊されたのよ! 何百人ものオッサンの目に曝された挙げ句に、悪魔軍の中心地に転移魔法で飛ばされたの! 悪魔軍の中心なんて座標もはっきりしないのに適当にされたから、悪魔達がたまたま多く集まっていたど真ん中に転移したんだよ?! しかも裸のままで! そりゃ、見られるのやだから片っ端からぶん殴るわよね?普通?」
一気にまくし立てたヴェルデがゼーゼー息を吐いて苦しんでいた。
息くらいして喋りなさい。
「で、今の話では、ヴェルデいや当時だからテレジアの時か、それで何で死ぬ事になったの?」
「それは、わしが話そう。」
僕の疑問に何故か悪魔が答えてくれる。
なんか悪魔って本当に悪い者なのかな?
「その時集まっていたのは、時空魔法の考察の為に悪魔族の学者が集まっていたんだが、その魔法というのが時を渡る魔法だったのだ。その魔法理論は構築されていて、後は実用する為の時空支援魔導器が必要だったんだがその試作品がその集会でお披露目されていたんだ。そして後はこの女が言った通りで暴れまくって封印術を発動させたようなんだが、どうもそれが試作器に作用して大暴走を起こしたようだ。それに巻き込まれたんじゃろうな。わしらも封印される直前までしか感じ取れなかったから後半は憶測じゃがの。」
ん~つまり、何が悪いんだ?
「ちょっと聞いて見ますけど、悪魔族って人間の国と争ってたんですよね?」
「ああ、人族が我等悪魔族の領土に侵攻して来てはいたぞ!」
「フラム、悪魔って人の国を滅ぼそうとしていたんじゃないの?」
「え?私はそう聞いていたけど?」
「そんなはずは無い! 私らは平和に暮らしておったんだぞ。人族はおろか他の種族の国を滅ぼそうだなんて考えてもいなかったぞ!」
ちょっと待てよ。
僕の頭よちゃんと整理してくれよ。
「つまり、平和に暮らしていた悪魔族の国に人族が侵攻し、それを一気に決めるた為に、王子の不興を買った当時のテレジアが利用されて捨て駒にされたと、でたまたま試作が出来ていた時空支援魔導器をテレジアが壊して暴走に巻き込まれ、なんらかの作用が働いて、ほんの少し時間の進んだ時間軸のこの世界に魂が飛ばされ、しかも分裂する形で生まれ来る複数の子に魂が宿ったという事かな?」
「おおおーー。」
何故か皆が僕のまとめに感嘆の声を上げていた。
「凄いタクミ君!やっぱり頭いいね。私なんか半分位しか理解出来なかったよ。」
何故か僕が頭が良いといったカーリーの方が嬉しそうだな。
「つまり、あれだね。悪魔族の方々にとっては人族の勝手な侵攻戦争と、勝手なテレジアの強襲で殆どの悪魔族が封印されてしまって、いい迷惑だって事だね。」
「左様、わし等は何も悪いことはしとらん! それをこの者が、」
全体が黒いのであまり表情がはっきりとは判らないが、じと目でヴェルデ達を見ているのが判った。
その中にカーリーも含まれているようで、カーリーは何で?!といいたげに僕を見ている。
「だって、あんな状況じゃ仕方ないでしょ。タクミだって、奥さんの裸を他の男共に見られたら嫌でしょ?」
上目遣いに僕を見つめてうるうると瞳を濡らしながら肯定を強要してくるヴェルデ。
「そんな事しなくっても、ヴェルデ達が悪いなんて一つも考えて無いから。」
そう言ってヴェルデの頭をポンポンと軽く叩く。
あー!とか言ってフラムとカーリーが私もーとか言って駆け寄って来たので三人に囲まれてしまったのだが、それを生暖かくみる悪魔の視線がなんとも言いがたかった。
「若いとはいいことじゃの。」
なんかいきなり爺さんぽくなってないかこの悪魔。
「事情は判った。つまり、一番悪いのはこの国の王だということだな。」
「そうよ!そうなのよ。」
「あのへたれ王が全ていけないのよ!」
ヴェルデとフラムが一斉に悪魔の言葉を肯定した。
ただ、実際に事を起こしたのはヴェルデ達に間違い無いのだからここはちゃんと謝っておかないとね。
「それはさておき、ヴェルデ、フラム、ここは悪魔さんにちゃんと謝っておかないといけないよ。」
えー、と文句を言う二人だがけじめだからね。
「判りました。タクミ君がそう言うなら仕方ありません。」
「悪魔さん!その節は感情にまかせてボコボコにした上に封印してしまって申し訳ありません!」
「「「すみませんでした!」」」
「て、なんで私まで謝らなきゃいけないの?!」
ヴェルデとフラムの二人にカーリーが強制的に一緒に誤らされているのが腑に落ちないようだ。
そりゃそうだよね。
読んでいただいて有難うございます。