ラングトン大学 試験編 Ⅲ
少し遅くなりましたが、投稿致しました。
次回は少し早めに投稿するつもりです。
話は数分前に遡る。
「今一瞬、闇属性の魔力が使用された感じがしたけど・・・・う~~~ん? 駄目、今は全く感じない。」
ヴェルデは暫く考え込む。闇属性の魔術を使う者は少なくない。ただ、先ほど感じた闇属性の魔術は、かなり濃度の高い魔素量を使用していた。これは闇の元素を持っている者じゃなきゃ制御出来ない魔素量だ。
「やっぱりあの子かな? ここに居たら、確認出来ない。私もフィールドに出て確かめるしか無いか。」
今、新入生候補達が戦っているフィールドの方を見つめ何かを確認するヴェルデ。
「それに何か嫌な予感がする。以前同じような感覚になった事があったけど、まさかね。フラムにも来てもらった方が良いかも。」
ヴェルデは、ローブの内ポケットから小さな鳥を切り抜いた紙を取り出すと、地面に術式を展開しその中央にその鳥を切り抜いた紙を置いた。すると術式はその鳥に吸い込まれる様に消え、代わりに紙で出来た鳥の体へと吸い込まれいった。
「鳥さん、フラムを呼んで来て。」
すると、掌に乗っていた紙の鳥は、本物の鳥の様に羽ばたき空へと舞い上がったいった。
「私はこれから試験現場に行きます。後の事はお願いしてよろしいでしょうか。」
近くにいた同じローブを羽織る男の教師に一言告げる。
「はい、こちらは問題ありませんがどうかなさいましたか?主任。」
通常主任教師のヴェルデがこの試験執行を管理する本部から離れることは今まで無かった為不思議に思った教師が理由を尋ねる。
「いえ、何か解りませんが胸騒ぎが致しますので念の為と思いましたので。本部の方も万が一に備えて警備部隊に何時でも出れるよう指示だけはしておいて下さい。」
「はい、了解いたしました。」
「では、お願いいたします。」
ヴェルデは部下の教師にお願いすると足早に競技場へと向かっていった。
場所は変わって運動場内草原エリア。
「これで2匹目!」
ドラゴモドキの頭部に正拳を叩き込み脳へ直接衝撃波を与え、動きを完全に止める。衝撃波が強すぎたのか、目から血を流し完全に動かなくなっていた。結構、自分の動作や力が思うように動いてくれる。これなら、大丈夫だろう。一方、カーリーの方は、あれから4匹倒して合計5匹倒していた。
「これで近くにはドラゴモドキは居なくなったよ。カーリーお疲れ様。」
僕が声を掛けると、静かに息を吐き呼吸を整え一礼するカーリー。この変は僕もそうだけど、ジェナさんが礼儀にはうるさく言ってたので自然と身についた所作だ。
「タクミ君!どうだった? 私、上手く出来たかな?」
笑顔でだけど何処か不安そうな顔で僕の方に寄って来るカーリーに笑顔で応えてあげる。
「うん、凄かった。なんか格好良かった。これなら、ジェナおばさんも納得してくれると思うよ。」
僕の言葉に先ほどまでの不安な影が一瞬で消え満面の笑みに変わるカーリー。その表情は7才の可愛らしい女の子にしか見えない。さっきまでの戦闘をしていた人物と同一人物なのだろうかと疑う程だ。
「あの~・・・」
僕たち二人が話している所に、先ほどのキーザ君と一緒にいた魔導士の女の子が怖ず怖ずとしながらやって来た。
「あ、君はさっきの。大丈夫だった?怪我は無い?」
「は、はい! 先程は有難うございました。あのままでは私、あのドラゴモドキに食べられてました。」
それは、多分無いと思うけどね。周囲には指導官や教師数人が配置していたし、何かあった場合、即座に行動できるよう魔術展開もしてあったから、僕たちが助けなくても、大丈夫だったはずだ。
「あれ?キーザ君は?」
「はあ、ドサクサに紛れて何処かへ行ってしまったようです。」
「そうなんだ。」
案外無責任だな。
「で、君の名前は何て言うの?」
「あ?!す、すいません!命の恩人に名前も名乗らないなんて、失礼致しました! 私は、ノーマ・ハバードと言います。ロコ村出身の8才、王宮魔導士目指してます、冒険者登録したばかりのFランクです! 持ち元素は水と土です! 彼氏はいません!!」
なんか僕をじっと見詰めながら凄い迫力で自己紹介してきたぞ。最後のは自己紹介とは関係無いし。
「ジーーーーーー」
視線が熱いよこの子。それになぜかカーリーまで僕をじっと見てくるんですけど。顔が怖いよカーリー。
「あ、有難う。僕はタクミ、こっちがカーリーね。二人ともトネ村出身の7才なのでノーマさんがお姉さんですね。」
「7才なんですか? それでこの戦い方ってちょっと異常じゃありません?」
「そうですか? これくらい普通じゃないです?、ねえカーリー。」
「私もあまり人と比べた事ないから解んないけど、私のお母さんは今の私よりずっと強いよ?」
確かに、僕もカーリーもかなり強くなったとは思ってるけど、ジェナさんにはまだまだって気がする。
「その、トネ村の人って皆さんそんなに強いんですか?」
んー改めて考えると僕たち以外もジェナおばさんの指導のおかげで自警団は結構強いと思うし、関係ないけどシロの配下に居た聖獣達にトネ村周辺を縄張りにしてもらって村の警護してもらってるからな。結構トネ村って凄いかも。
「それよりノーマさん、キーザ君と護衛かなんかの依頼を受けてたんだよね。」
「え?えーそうよ。」
「このままだと、契約不履行で罰金が発生しません?」
僕の言葉にみるみるうちに顔を青ざめさせて行くノーマさん。
「ど、ど、どうしましょう! どうしたらいいです!?」
あーやっぱり考えて無かったか。
「王都までの旅費でお金が底を突いてしまってたんで、ついキーザ様の依頼を受けてしまったんで、違約金を払うお金も無いです。」
しょんぼりしてるよ。こんなの見せられたらほっとけないじゃないか。
「解りました。こうしましょう。ノーマさんの違約金は僕が立て替えます。その替わり、僕達のパーティーに一時的に入ってもらって、一緒に依頼を受けて貰います。その報酬から少しずつ返して貰うというのはどうでしょう?」
パッと顔が明るくなるノーマさん。反対にえ~と、どんより顔になるカーリー。
「あ、ちなみに無利子で良いですからね。」
「ちょっ、ちょっとタクミ君! 少し甘すぎない? あんな馬鹿貴族の依頼をホイホイ受ける彼女も悪いんだからね!」
途端に涙ぐむノーマさん。感情の激しい人だな。
「だ、大丈夫ですよ。カーリーはあー言ってますけど心の優しい女の子ですからノーマさんの事をほっとく事はしませんから。」
「あ、有難うございます! カーリーさん、本当に宜しいんですか?」
うーとか言って膨れっ面のカーリーだが嫌とは言ってないのでオッケーだろう。
「カーリーも良いみたいだから、宜しくねノーマさん。」
「あ、いえこちらこそお願いします。それと、私のことはノーマでいいですから。」
「じゃ僕の事もタクミで良いよ。宜しく、ノーマ。」
後はカーリーだけど。ノーマが少し警戒しながらカーリーの方に寄って行き手を差し出す。カーリーも渋々といった感じで手を差し出すとぎゅーっと力強く握手してあげる。ノーマも強く握り返してお互いを見つめ合っている。
「よろしく、ノーマ。わたしがタクミくんのカ・ノ・ジョのカーリーです。カーリーって呼んでくれていいよ。」
「よろしく、ま・だ・かのじょのカーリー。わたしも、ノーマってよんでいいわよ。」
何だろう? 2人が一語一語噛み締めて話している気がするのは気のせいだろうか? 取り合えずみんなの自己紹介が終わったので試験に戻りノーマも含めて確実に試験に合格するため石山のエリアに行くことに決めた。
「そう言えばさっきここに来る前、石山エリアでタクミと同じトネ村出身って言ってた男の子が居たわよ?」
石山エリアに向かう中、ノーマが僕達と同じトネ村の男の子と会った事を話し出した。
「ん?多分ミッシェル君の事かな?」
「結構、彼も強そうだったよ。ドラゴモドキじゃ無かったけど、大きな熊みたいな獣が出てて他の子等が苦戦してたのを水系の魔術で切り刻んで居たからね。本当、凄かったよ。」ただ、何か陰湿っていうか、術を掛けながら笑ってたから不気味だったよ。」
強い?どういう事だろう?
「タクミ君、ミッシェル君の事かな?でも彼、そんな魔術を扱え程魔力は強く無いし、そんな魔術の勉強なんかしてなかったはずだけど。」
そうなんだよね。何かの間違いか?それとも。嫌な感じだな。変な胸騒ぎがする。
「兎に角、石山エリアに行ってみよう。」
次回もまた読んでいただけると嬉しいです。