王都編 Ⅳ
投稿いたします。
あれから、エルがカーリーを連れこの場所までくると、ほぼ同じタイミングで警護士がやってきたていた。それから1時間程、僕は警護士の方に根掘り葉掘りと事情聴取を取られ続けてた。
「う~ん、ようやく解放された~!」
近くの空き家を借りそこで事情聴取され、それが先程ようやく終わったのだ。
『エル、カーリーとシロは?』
『あそこで説教されてますよ。』
言われる方を見ると、カーリーがシロ相手にコンコンと何かを言い聞かせていた。シロの方は、さらに身体が小さくなったのかと思わせる程、縮こまり頭を垂れてる姿を見るとかなり反省しているようだ。
『エル、シロもそうだけど、あまり人前で力を出すのは控えるんだよ。』
『私は大丈夫ですよ?』
そう言うエルが一番怪しいんだけどね。
そうこうしているうちに、盗賊達は警護士に連行されこの場を去っていた。残った僕達は、警護士の人から後日、盗賊の逮捕に協力した事での何らかの褒美が出るらしいので連絡先を聞かれ、ラングトン大学の新入生と答えておいた。警護士の人はそれを聞いて、やっぱりそうかと言って尊敬の眼差しを向けられてしまい、ちょっと恥ずかしくなってしまう。
『改めてだけど、ラングトン大学に入るって、そんなに凄いことなんだね。』
カーリーがポロっと言葉を洩らす。うん、少し気合いを入れ直して大学に向かうか。それから警護士の方達も戻られ、広場に残された僕達も改めて大学に向かう事にした。
「ちょっと、いいかな?彼氏彼女。」
広場を離れ、露店街に戻って来た僕達はちょっと遅めの昼御飯を店の軒先の儲けられた小さめのテーブルにつき、食べ始めていたところへ、一人の女性が話し掛けてきた。見たところ、15、6才の彼女は短パンにTシャツといった軽装だが肩当てや、胸当ての金属の防具を着けているところから冒険者のようだ。その上、自分の身長位ありそうな大型の剣を背に担ぎ平然と立っている彼女は周囲の目からも目立っていることが判る。ただそれ以上に目立っているのが赤毛と言うより深紅に近い赤髪とルビーの様に赤い瞳を持つ端正な顔立ちだ。カーリーも美少女だがこの女の子も負けてない。そんな美少女二人に挟まれている状態に、周囲で同じように昼ご飯を食べていた男共の視線が突き刺さって痛かった。
「何でしょうか?お姉さん。」
「ちょっとね聞きたいことがあってね。ちょっと横座っても良いかな?」
そう言いながら、もう僕の横の椅子に手を伸ばし座ろうとしていた。
「え?あ、良いですよ。」
「ありがとう。」
僕の横に座った彼女は優しく微笑んでいた。その反対に座るカーリーは、彼女が僕の直ぐ横に座ってきた瞬間、ギューっと僕の腕を取り自分の方へと強く引き寄せようとしていた。カーリーの頬が膨れて彼女を威嚇している。
「何かご用でしょうか、おばさん。」
確かにカーリーの歳の倍位にはなるんだろうけど、それでも15、6才の女の子におばさんはさすがに、と思っていたら彼女、涙流してるよ。
「え?え、どうしたの、おばさん! 体の具合でも悪いの?おばさん!」
もう止めてあげてカーリー。とにかく話が進まないので彼女が泣き止むまで待つことにした。そして気持ちを落ち着かせるためにハーブティーを進めてようやく話が出来る状態になった。
「まず私は、フラムと言います。みての通り冒険者やってて、こう見えて結構強いんだよ。」
腕を上げ二の腕の筋肉をアピールしている。そんなに太くないな。
この腕で背中の大剣振れるんだろうか?
「それで君がタクミ君でそちらがカーリーちゃんね。」
「なんで僕たちの名前をご存知なのですか?」
「なんでって、あれだけギルド内で目立ってたら嫌でも覚えてしまうよ。それに君達がギルドから出ていったのを追いかける様に付いていく男が目に入ったんでね。何か胸騒ぎがしたんで、私も君達の後を付けて来たんだ。そしたらあれでしょう。私が出る幕なんて無かったよね。タクミ君て強いんだね。感心しちゃったよ、お・ね・え・さん。」
矢継ぎ早に話してくるフラムさん。とても嬉しそうに見えるんだよね。
「あ、でもカーリーの方が僕より強いですよ。特に、格闘戦だと。」
そう言ってあげると、顔を赤くしながら、にやけ顔になるカーリー。
「え?そうなんだ。カーリーちゃんも凄いんだね!」
フラムさんの褒め言葉に一層気を良くするカーリー。
「そこでお願いなんだけど、君達私とパーティーを組まない? あ、ラングトンの新入学生って事もしっているから、休みの日とかだけでいいからね。」
んー、何か僕達にはメリットはあるんだが、フラムさんにとっては冒険者として稼ぐのに足かせにしかならないんじゃないだろうか。僕やカーリーはラングトン大学の学生としての特権でEクラスの冒険者として始めから登録できたけど、それでも単独で依頼を受ける事はD以上の冒険者と同行する必要があった。
「僕達にとってはありがたい話なんですけど、フラムさんには何もメリットが無いように思えるんですが。」
「そんな事無いよ! 実は私、ランクBの冒険者なんだけどね、」
今、サラっとBと言わなかったか? Bって、下位のドラゴンと同等の実力があると言われていたはずなんだけど。
「それでね、Aランクに昇進真近なんだけど、その条件として、Dクラス以下の冒険者を指導して何らかの結果を出すというのがあるんだよね。」
『今、Aって言ったよね。』
『うん、言ってた。Aって、うちのお母さんと一緒だよ。』
え?それも初耳だぞ。ジェナさんって本当に凄い人だったんだ。あれ?そう言えばいつの間にかカーリーとも念話が出来るようになってる? 段々人間離れしているような・・。いいや取り敢えずそれは置いといて。
「フラムさんって凄いんですね。」
「え?そんな事ないよ。こんなの普通だよ。」
嫌みの無い笑顔で言っているのは解るから本当にそう思ってるんだろうけど、絶対普通じゃないからね。聞いた話では、冒険者の1万人に1人くらいしか居ないらしいからAなんて。
「取り敢えず解りました。そう言う事でしたら、僕達も良い経験が出来るので宜しくお願いします。」
「えー?私はタクミ君と2人だけで良いのに!」
「まあ、そう言わないの。先輩冒険者のしかもクラスAに近い人と一緒に行動力出来るなんてめったに経験出来る事じゃないんだからね。」
「ぶー、タクミ君がそこまで言うならまあ良いよ。」
ふて腐れながらも納得するカーリー。
「あ、それと1つ聞きたいんだけどタクミ君って闇属性は持ってるの?」
「あーそれなら!!?」
あ!あぶなー!あまりの自然な問い掛けにうっかり答えてしまいそうだった。
「どうしてですか?」
「え?別に深い意味は無いよ。光属性はさっきの件で治療魔術使ってたから持ってるんだろう事は判ってたからね。聖獣とか従えて凄い才能がありそうだったからもしかしたら闇属性も持ってるのかな、なんて思っただけなんだけど?」
「そうですか、残念ですけど持ってません。」
「そう・・・。」
何か落ち込んだような気がするけど。そんなに闇属性の人探してるんだろうか?
「フラムさん?闇属性の人を探してるんですか?」
「あ、気にしないでね。それより、パーティーの件宜しく。一度、ギルドに正式メンバーとして登録する必要があるし、伝言入れておくから。じゃあ私は他に用があるんでこれでね。」
ウインク一つ僕に向けてさっと屋台を出ていった。
「あー!私も!」
カーリーそんな間近で何回もウインクしないの。とにかくパーティーの件は僕達としても冒険者の経験が積めるから良かったけど、フラムさん、何か引っ掛かるんだよな。まさか奥さんってわけでもないよな。歳が全然違うしね。
読んで頂いてありがとうございました。