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王都編 Ⅲ

投稿致しました。

読んで頂けますでしょうか。

僕と、カーリーは大通りを王都の中心部に向けて歩いていた。行き交う人々の中には僕たちの後ろをついて来る白い獣が気になるようで時々振り返ったり、小声で何かを話し合っているようだ。


『やっぱり珍しいのかな?』


『そうでもないですよ。魔術式で強制的に使役する方法が作り出されてからは、結構使役する人も増えているそうですよ。』


『術式? 強制的になんて出来るんだ。』


『はい。ただし一定の魔力を術式を通して魔獣や聖獣に送り続けなければ、術式の崩壊を招いて最後には食われてしまいますが。』


『え?、シロは私の事を食べたりするんですか。』


カーリーも気になるのか、話しに加わってきた。


『それは有り得ません。カーリー様と我は、お互いの信頼関係で成立する使役契約をしておりますれば、魔力供給は必要性はありません。』


『良かったー。もしシロが私を食おうなんてしたら、またボコボコにしなきゃいけないのかと思って心配しちゃったよ。』


『し、心配には、お、およびま、せんよ。カ、カーリー様と信頼関係で結ばれている、わ、我がそ、そのような・・』


シロさん足が震えてますよ? よっぽどカーリーに負けた時の事がトラウマになってるのかな?


『ところでエル、使役獣持ちってどれくらいいるんだろう?』


『そうですね、以前管理神だった頃に把握している数でいえば、魔獣で30~50人に1人、聖獣になると100人に一人ですかね。』


『案外いるんだね。ちょっと安心したよ。』


『はい、でも聖獣使いとなると、その力は個人としては大き過ぎますから、国がほっとかないと思いますし、聖獣は高く取引されているとも聞きますので、注意はした方がいいですよ。』


げーマジですか。あんまり聞きたくなかったなそれ。


『ちなみに私は神ですし、シロは神獣ですから、それを使役しているとなるともう伝説級になりますので。』


何故か、エルが、えへん! と言っている様に胸をグイッと前に張り出して踏ん反り返っていた。それは絶対秘密だな。カーリーにも絶対口外しないように言い、シロにも勝手に神獣に戻るのを禁止するよう言い聞かせる。

僕たちは今、ラングトン大学に向かうべく王都の中心に向かっていたが、昼も近くなっていたので、先程ギルドを出るとき受付のお姉さんに聞いていた露店街のある小路へと向かう事にした。


「ここは、大通りとは違う賑やかさだね!」


カーリーが目を丸くして喜んでいる。僕もちょっと驚いていた。トネ村ではこんなに露店が集まるところなんか無かったし、これだけの人がそれほど大きくない道にひしめき合っている光景は、この世界に来てからは見たことが無かったからだ。前世で言ったら大きな神社で初詣に来て両脇の露店の間の参道を歩いているのと良く似ている。ただ、そこで売られている物は、食べ物屋ばかりでなく、生活必需品を売る店や、雑貨屋、家具屋に宝石店まで多種多様な店が軒を連ねていた。


「ねぇ、タクミ君ちょっとそこのお店やさん見て良いかな?」


そう言って指差した先には、綺麗な布が軒先に並べられ、その奥には綺麗な服やドレスが吊されてて、そのしたの棚には色とりどりの宝石や装飾品が所狭しと陳列されていた。今、カーリーが着ている服はジェナさんが若い時、冒険者として使用していた服を直したものらしいが、瞬発力や早さを重視しているそうで、ノースリーブのシャツに短めの上着を着、ミニスカートの上に後ろ側をガードする為らしい長めのスカートを重ね、防具も肩当てと膝当てと極力重くしないシンプルな仕様になっていた。

これはこれで十分可愛いらしさもあると思うんだが、女の子に取ってはこういう類の物は永遠に憧れる物なんんだと、前世の奥さんに教わっていたので快く了承する。


「それじゃ僕達は向かいの武器屋にいるからね。」


「ありがとう、ちょっと行ってくるね。」


嬉しそうに店屋の中に飛び込んで行ったカーリーを見送り、僕とエルは色々な防具や剣が置かれた店の中へと入ろうとした。


『あれ?そういえばシロ居た?』


ふと、カーリーが店の中に入るときシロの姿が見えなかった様な気がしたのでエルに尋ねてみた。


『え?そう言われれば見てない気がいたします。』


曖昧に応えるエル。確信が無いのだろう。ただ、今のシロが勝手にカーリーの側を離れるはずも無く、ちょっと嫌な予感が脳裏を()ぎった。心配は無いと思うが念の為だ、シロに何かあったらカーリーが悲しむからな。


『エル、ちょっと様子を見てくるから、カーリーの方は頼んだよ。』


『え?でもそれではタクミ様に何かあった時に私が困ります。』


『シロの行方を探すだけだから大丈夫。それに何かあった時こそ、僕との念話が多少距離があっても出来るエルがカーリーの側に居てくれないと連絡のしようが無いからね。さすがにカーリーとシロの間ではそこまでの遠距離念話はまだ出来て無いみたいだしね。』


『解りました。カーリーさんの事はお任せ下さい。』


『じぁ、行ってくる。』


エルの頭に、ぽん!と軽く手を乗せてから元来た場所へと向かった。



 一方、当のシロは、カーリーと離れ一匹であまり人が通らない裏路地へと足を踏み入れていた。


『たしかこの辺で消えたと思ったが。』


当たりを見回すシロ。貧民街とでもいうべき場所なのか、掘っ立て小屋の様な質素な作りの家が寄り添うように立ち並ぶ一角に少し開けた広場の様な場所があり、シロはそこに立っていた。


『我を幻覚でこの場に誘導した者が近くに潜んでいるはずなんだが、聖獣の姿でいるといま一つ感覚が鈍るな。』


「おー、こうして見ると結構大きいじゃないか!」


突然大きな声がしたと思ったら、シロの視線の奥にある一軒の建物から3人の男達が姿を現した。


「お(かしら)、なかなか良い聖獣でやんしょ。」


3人のうちの一人、この中では一番背が低く、その上猫背気味であった為一段と小さく見える男が、その隣にいる一際大きな体躯でスキンヘッドに髭面の男がニヤニヤ笑いながら、シロの方をじっと見つめていた。


「おう!子供が使役していると聞いて、大したことないと思ってたんだが、どうして、なかなかのもんじゃないか。」


下卑た笑いを顔に浮かべる頭と呼ばれた男の影に隠れるように佇む、フードを目深に被った人が1人。

フードに邪魔をされて解りにくいが多分男性だろうと思える。


「おい!魔導士。魔術の方は大丈夫なんだろうな?」


フードの男性が頭の声にビクッと反応した。このフードの男が魔導士のようだ。


「だ、大丈夫です。こう見えてもDクラスの魔導士の私が起動させた幻惑と強制支配の術は完璧に作用してます!」


どこか怯えている雰囲気で話す魔導士に対して満足そうにその答えを聞いている頭。


「良し、このまま対魔獣用の縛鎖(ばくさ)を首にかけるんだ。」


そう、お頭が命令すると、猫背の男が鎖を手に持ち、シロの方へとゆっくり近づいて来た。


「へへ、大人しくしてやんですよ。」


魔術によって強制支配されていると思っていても、近くに寄ると白狼の迫力に恐怖を感じ額から冷や汗が流れ出す。それでもゆっくりと鎖の首輪を白狼の前面まで持っていきあと一息の所まで寄った時だった。


『これ以上少しでも動いたら噛み殺すぞ。』


シロが目の前の男に強烈な念話を送ると、一瞬で石になったかの様に動かなくなってしまった。


「おい!どうした?!」


お頭の言葉にその男は全く反応を示さない。


「何してやがる!! 返事しろ!」


全く動かない男に切れたお頭は、ドカドカと音がしそうな勢いで近づいて行く。


「うっ!!」


すると後ろの方で男の呻き声が聞こえ不信に思った頭が振り向くと、そこにはフードを被った魔導士が一人の少年に担がれている光景が目に入ってきた。


「な?! なんだてめぇわ!! どっから出て来やがった!」


「え?普通に歩いて来ましたけど?」


少年の何の変哲の無い受け答えに次の一瞬言葉が出て来ないお頭。


『タクミ様、何故此処においでなのですか?』


『シロの事が心配というわけじゃないけど、黙ってカーリーの側を離れたんでね。何かあったんだろうと思って来てみたんだ。それに、人間相手に手加減が出来るかの方が心配でね。』


『そうでしたか、勝手に離れてしまいすみません。妙な支配属性の魔術が我に纏わり付いてきたもので、ついおもしろ半分で行動してしまいました。カーリー様は怒っておられましたか?』


『どうだろう? まだ気付いてはいなかったけど、帰ったら謝っておくんだよ。』


『はい。』


シロは素直にタクミの言葉を聞き入れる。


「で、この人達はいわゆる使役獣泥棒と言った感じの人達かな?」


「おい!小僧舐めた口きいてやがるとぶっ殺すぞ!」


いつの間にか、刃渡り40センチ位の中振り剣を片手に取り、身構えながらタクミを上から目線で見下すお頭。しかし、頭悪いんだろうか?そうやって僕の方ばかり見るのはいいけど、今僕が担いでいるのが誰で、その誰かが発動させた術式が気絶してえいることだ効力が無くなっている事に気付かないんだろうか? まぁ、術関係無しにシロは動けたけどね。


「おじさん、そうやって僕と話してて良いの? こうして魔導士の人が気絶してるんだよ。後ろの方気にならない?」


「はっ、後ろだと?」


吐き捨てるように言うが、気になったのか後ろへ首と体を少しひねり始めた瞬間、


ドカ!!


と、いう音と共に、お頭の顔が地面に減り込むんでいた。


『あーもう、手加減したシロ?』


シロは後ろから前足でお頭の後頭部を叩き地面に押さえ付けたのだ。


『はい、死んではおりません。多少頭蓋骨にヒビが増えていると思いますが。』


事もなげに言うが、まぁ死んでないなら良いけど念のため光属性の治癒魔術を施しておこう。後は、エルに連絡してカーリーに町の警護官を呼んで来てもら事にした。

読んで頂いてありがとうございます。

次回も2,3日後になる予定です。

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