番外編・エルカシアのお話
ちょっと本筋から離れたエルカシアのお話を書かせていただきました。
私はエルカシアと言います。
元はこのアイダール世界の管理神を勤めていた、1級神格を持つ女神でした。それが地球世界からアイダール世界への転生者を選定し書類を提出したんですけど、記入ミスで予定より早く死を宣告してしまい全能神様に、こっぴどく怒られました。おかげで1年間の減俸。それに気落ちしたのかもしれません。その記入ミスの転生者を間違えて今度は予定より早く転生させてしまったのです。失態です。え?どれくらいかって? いえ、15年間待つはずが1ヶ月で転生させちゃいました。
てへ♪
その後は神域界にいるのが地獄でした。全能神様の私を見る目が、ツンドラで冷えきった湖みたいに冷たかったです。これは、神格の剥奪もあるかもしれないと思った私は土下座をして何度も謝りました。
そりゃ、もう全身全霊を掛けたんですよ。そのおかげか、神格の剥奪とかは無くなったんですよ。
勝った!て思いました。
いえ、何に?と言われてもそう思ったんですから仕方ないです。しかしその後、全能神様が私を2階級降格すると宣言され、さらに最初私がミスをした転生者の夫が、同じく転生する事になっていたので、その方の守護神獣として使える事が義務づけられました。まあ、それぐらいは仕方ないので素直に受けることに致しました。なぜなら、タクミ様と言う人間に使え守護し続けて行けば、その功績で神格をランクアップさせる事が出来るからです。
そうすればまた管理神に戻って、やりたい放題、じゃなくてアイダール世界を導くという崇高な仕事がまた出来るというものです。本当ですよ。で、いざ転生が完了してタクミ様がこのアイダールに誕生されたので、私も同時にこの地の土地神、白狐として降臨しお側に使え始めました。
白狐とは神獣の中でもトップの4等級格の神格を持つ神で、この地の殆どの神獣、聖獣の統括を担っています。結構偉い神なんですよ。ちなみに神格の等級を簡単に説明するとですね、管理神が2等級で、今の私は2等級降格してしまいましたので土地神として4等級になります。この間に準管理神がいて3等級ですね。準管理神は、管理神の使いパシリですから結構ハードなんですよ。今は、その準管理神達で、アイダール世界を代行管理しているようです。全能神様は1等級、その上に天界神様がいらっしゃるらしいですが、私達からしたら雲の上の存在でまったく会った事がありません。
いつかは1等級になってウハウハの生活、もとい世界の秩序を守る偉大な女神として頑張ってみたいです。
それより、タクミ様の話に戻りますが、彼ははっきり言って人が良すぎます。困った人がいれば一緒になって考え、泣いている人がいれば泣き止むまで着いていてあげたり、この間なんか村の学校で友達がお弁当を忘れたらしいのですが、簡単に自分のお弁当を分けてあげたりと、この世界ではすごく珍しい行動をする方です。転生者は、誰でもこんな感じなんでしょうか? ただ、このアイダールという世界は、魔物はいるし、大型の肉食獣もいます。それを討伐する専門の冒険者もいますし、人の隙をついて襲う人もいます。そんな、危険な世界では、人への優しさがそのまま悪となって返って来ることが、結構頻繁におこるのです。ここは、私がタクミ様を守って差し上げて恩を売るのも良いかもと考えた事もありました。
そして月日が流れて、タクミ様も6才になられ、魔法素養の確認をするお歳になられました。ひとえに私の頑張りがあったからだと思います。全能神様見ていてくれました?ただ、最近気になる事が発生しています。村の女の子で、タクミ様の幼なじみでカーリーという同年代の女の子が、やたらとタクミ様にアプローチを掛けて来るようになったことです。カーリーと楽しそうに話をしていたり、遊んでいたりするのを見る度に、何故か心がモヤモヤするんです。もしかしたらこれが親心とかいうものなのでしょうか?お生まれになった時から片時も離れず、ずっと一緒に過ごして着ましたので、親の様な気持ちになってしまい、特に女の子が近寄ると変な虫じゃないだろうかと、つい不安になってしまうようです。
それと、もう一つ困った事が起こっています。それは、お風呂です。この世界はタクミ様が住んでおられたように技術のレベルは到底ありません。交通手段は徒歩か馬車、水道も下水道も無く、お風呂も、タライにお湯を貯めて身体を洗う行水と程度しか普及してません。ただ、タクミ様は前世での週間か毎日の様にお風呂をされます。最近の口癖で、「何時か肩まで疲れるお風呂に入るぞ!」がスローガンになってるくらいです。それで毎日入られるお風呂に、私を必ず連れて行くのです。始めのうちは、私も身体をお湯につけるのは気持ち良く一緒させてもらってたんですが、何時からかタクミ様が私の身体を丁寧に洗い始めたのです。理由を聞くと、私のお風呂はただ湯に浸かって終わるだけで綺麗に洗っていないとの事です。うーん一応元女神とはいえ今は白狐という獣なんです。普通獣は行水程度しかしません。
それにクリーン魔術による身体の汚れ落としは問題無いのです。なのにタクミ様は、「自分が飼っているペットは綺麗にする義務がある」とか言って聞き入れてくれません。そして日に日に私を洗う事が丁寧になって行って最近はお腹やお尻まで洗われ始めたので、さすがに抵抗させていただきました。
だって、女の子なんだもん!そうです。
今はこうして白狐として存在してますけど、管理神の時には人と同じ容姿の女性だったんですよ。
また神格の等級が上がれば、あの絶世の美女?だった自分に戻るんです。よく考えて見てください。
一糸纏わぬ裸体で背中ならいざ知らず、仰向けに寝転がされ押さえ付けられながら胸やお腹やお尻まで丁寧に洗われたその日には、神生感が変わってしまいますよ。さすがの神様も恥ずかしいなんてもんじゃないです。それがほぼ毎日です。
始めのうちは抵抗して逃げれた事もあるんですが、日を追う毎に、タクミ様の捕獲技術が上がっていて、最近は抗う事もままならなくなり、されるがままの状態ですすると変に緊張しなくなったせいか、ちょっと気持ち良かったりして。何か抜け出せない世界に嵌まってしまいそうな気がします。
責任取ってくださいね、タクミ様。そこで私は考えを変えました。
タクミ様は現段階でも、全能神様より神格を授けられていましたが、まだ等級は低く8等級の神格くらいです。これは私の様な神獣を使役するためには、同格な資質が必要の為、全能神様より贈られたギフトなんです。つまり、これからタクミ様が人世界で功績を上げ神に認められ神格の昇級が出来れば、いずれ私と結婚できる程の神格に昇級出来るのでは?
そうよ!
私が導いて功績を積ませ、責任を取ってもらうんだ!あんな所やこんな所を見られてしまったんです。
手で優しく撫で回されたんです。責任取るのは普通ですよね? ただ、もし私がタクミ様と結婚するとなると、元奥さんとの事も考えなきゃいけません。平和的に皆でタクミ様を旦那様とするのか、戦争を起こしてでも独占するかです。よく考えれば後者は無いですね。私、タクミ君の前世での奥様には転生する前に力勝負で負けてしまっています。鬼の様に怒られた事もあります。なので「カーリーさん含め元奥さんとも仲良くしたいな作戦」で行こうかと思います。ただし!奥様一位の座は簡単には譲れませんよ! まだ持って無いですけど。
あ!今日もお呼びがかかりました。最初は抵抗しておいて、後半は堪能させてもらいます。
えへへ。
次回は本編に戻ります。