#1 prologue
初投稿に見せかけた改稿です。あらすじも少し変更し内容がかなり変わります。
一切の知らせもせず消してしまい申し訳ございません。
あの日、見たものが何だと聞かれたら……地獄だったと答えるだろう。一瞬で全てが崩壊した日。見えるものがすべて赤くなった日。僕達はその日を忘れない。
皆の胸に刻まれた傷。世界に刻まれた傷。忘れないではない……忘れる訳にはいかない。
7人の勇者が世界を救った日に起きたこの出来事を、皆は"エインの日"と呼んだ。
「……っ!」
何だ……何が起こったんだ……。
突然空が光ったと思ったら強い衝撃波が僕を襲った。周りを見渡すとさっきまでいた場所とは違う所にいた。恐らくこんな所まで衝撃波で飛ばされたのだろう。
「ぐっ……」
身体が思うように動かない。足は折れてはいないが、身体中が痛い。頭もぐるぐるする。
周りを見渡すと、木が燃えていた。いや、木だけではない。あらゆる物が燃えていた。家、川、……人。
耳をすませてみる。悲鳴や助けを求める声。神に祈る声が聞こえる。
きっと助けなんて来ない……こんな所に助けなんて……。
皆、ここで死ぬ。僕はそう思った。そして僕は目を瞑る。
あぁ……何て短い人生だったのだろう。
意識が遠のいて行く。混濁した闇へと誘う。
――諦めちゃダメっ!
意識が覚醒する。慌てて周りを見たが誰もいない。
気のせい……?
「気のせいじゃない」
声をかけられた方に顔を向ける。そこには五人の人達がいた。
「大丈夫か?」
二つの剣を背中と腰に携えた中年の男性が僕に声をかける。
「え、あ……うん」
僕はそのような返事しかできなかった。
「坊主、よく生きてたな。もう大丈夫だ」
男性が念じ始めると僕の周りに光が集まった。
「……キュア!」
恐らく回復魔法の一種だろう。先ほどの光よりも輝きはじめ僕を包み込む。
「よし、これでもう大丈夫だろう。たぶん身体ももう動く」
試しに身体を動かしてみる。先程とは違い容易に身体が動く。が、幼なかった僕には強い痛みだったのだろう。普段通りとはいかなかった。
「ありがとう、おじさん」
「どういたしまして」
にっこりと笑い僕を安心させようとしているおじさん。しかし、すぐにその表情を崩し辺りを見渡す。
「こりゃ、やばいぞ……思っているよりも火の回り方がまずい」
中年の男性が四人に顔を向ける。
「四人とも、まずは村の人たちの救出が最優先だ。いいか、できるだけ多くの人を助けるんだ。じゃないとあの二人が悲しむ」
四人は頷き、散開していった。
「どうして、僕達を助けてくれるのですか?」
「どうしてって、そりゃリーダー……いや、俺たちが"ハンター"だからだよ。困っている人を助けるのが俺たちハンターの役目なんだ」
男性は先ほどと同じように笑う。その表情に僕は釣られて笑った。
「おーい!こっちだ!」
男性が叫ぶと、馬車が来た。僕を助ける前にも村の人たちを助けていたのか数人馬車の上に乗っていた。痛みで動けない僕を馬車まで僕を運ぶ。
「いいか、坊主。何事も諦めるなよ。どんなに辛いことがあっても屈するな。いつか必ずその努力は報われる。わかったな」
僕は、その意味を知らなかったが強く頷く。男性が御者に声をかけると僕を乗せた馬車が動き始めた。だんだんと遠くなっていく男性。目に映る男性が小さくなっていく。
その時だった。男性の背中に携えていた剣が勝手に離れ、僕の目の前まで飛んできたのだ。自分に刺さると思い、僕は動けない身体を動かそうとした。しかし動かない。くる痛みに耐えるために僕は目をつぶった。……痛みがこない。僕は目を開ける。すると目の前には空中で静止した剣があった。
――見つけたよ……継承者様。
さっきの声だ。まさかこの剣が話しているのか……?
――そうだよ、さぁ、私を手に取って。
僕は剣の握りへと手を伸ばす。すると、剣から光が溢れ僕を包んだ。溢れる光が眩しい。直視できなくなり、僕は再び目をつぶる。
――ごめんね。もう目を開けても大丈夫だよ。
聞こえた声に従い僕は目を開ける。
すると辺りは先ほどの赤い景色ではなく、淡い光の世界の中に僕はいた。