ここはガリーシャ、ユートピア
リズムよく読んでいただけると幸いです。
ここはガリーシャ、ユートピア。
不幸な人は、1人もいない。
みんな楽しく暮らしてた。
少女が生まれてくるまでは。
少女の名前はトピス・ディア。
明るい元気な女の子。
両親なぜかいないけど、
人工知能の世話係、
ミックルディーに世話されて、
いつも楽しく暮らしてた。
トピス・ディアとミックルディー。
2人は大の、親友さ。
トピス・ディアが笑うとき。
ミックルディーも、大笑い。
トピス・ディアが泣くときは。
ミックルディーが、慰めた。
ミックルディーは、寝る前に。
毎日、少女にささやいた。
「私はあなたを見捨てない。
何があっても見捨てない。
なんの取り柄も無くたって、あなたの価値は、変わらない。
私はあなたについていく。
指切りげんまん、約束です」
トピス・ディアは、それを聞き。
いつも静かに微笑んだ。
成人の日が、迫り来る。
ここはガリーシャ、ユートピア。
幸せになる、義務がある。
少年少女は集められ。
例年通り、検査をされる。
最初の検査は、理系のテスト。
数学物理、化学など。
才能あって、楽しんで。
解ける人たち合格だ。
少しの人たち合格し、みんな就職していった。
けれど、少女はダメだった。
問題解くのは楽しいけれど、答えがてんで、正しくない。
AI達は、微笑んだ。
「他の楽しさ、探しましょう」
ミックルディーも、励ました。
「私はあなたを見捨てない。
何があっても見捨てない。
理系の才能無くたって、あなたの価値は、変わらない。
私はあなたについていく」
残りはまだまだたくさんだ。
ミックルディーに、励まされ。
どんどん進む、彼女は進む。
そこに未来があると信じて。
お次の試験は文系だ。
社会現文、英語など。
努力ができて、楽しんで。
解ける人たち合格だ。
少しの人たち合格し、みんな就職していった。
けれど少女はダメだった。
問題解くのは楽しいけれど、努力はてんで、したくない。
AI達は、微笑んだ。
「努力できるのは、才能です。
あなたは決して、悪くない。
他の楽しさ、探しましょう」
ミックルディーも、励ました。
「私はあなたを見捨てない。
何があっても見捨てない。
努力の才能無くたって、あなたの価値は、変わらない。
私はあなたについていく」
残りはだいたい半分だ。
ミックルディーを気にしつつ。
それでも進む、彼女は進む。
そこに未来があると信じて。
今度の検査は体育だ。
鉄棒サッカー、野球など。
楽しく体を動かして。
いい成績なら合格だ。
多くの人たち合格し、みんな就職していった。
けれど少女はダメだった。
運動するのは楽しいけれど、成績がてんでよろしくない。
AI達は、微笑んだ。
「元々体格差があります。
あなたは決して悪くない。
他の楽しさ、探しましょう」
ミックルディーも、励ました。
「私はあなたを見捨てない。
何があっても見捨てない。
運動得意じゃなくたって、あなたの価値は、変わらない。
私はあなたについていく」
残りはほんの、少しだけ。
ミックルディーを無視しつつ。
とぼとぼ進む、彼女は進む。
そこに未来があると願って。
最後の検査は副教科。
家庭科美術、書道など。
腕前良ければ、合格だ。
たった1人を除いては、残りの人たち合格し。
みんな就職していった。
けれど少女はダメだった。
料理や絵画は楽しいけれど、出来がてんで、よろしくない。
AI達は、無表情。
「全部できない人なんて、今まで1人もいなかった。
出来損ないは不要です。
あなたは才能なさすぎる」
ついには止まる、彼女は止まる。
そこに未来は無いと気づいて。
最初はみんな、楽しくて。
世界すべてが光ってた。
なのにどうしてこうなった。
彼女はようやく気がついた。
理想だなんて、嘘っぱち。
才能無けりゃ、捨てられる。
ここはガリーシャ、ディストピア。
少女の名前は、トピス・ディア。
明るい、元気な女の子。
いつの間にやら時が経ち、
暗い、病気の女の子。
少女は必死に考えた。
自分だけに、できること。
彼女は昔を思い出す。
お世話係のミックルディー。
いつも私を見てくれた。
大切なことを言っていた。
才能なんか、無くたって。
何かはずっと、変わらない。
それはいったい、何だった?
ミックルディーが、現れて。
雫を1つ、落としつつ。
「やっと気づいてくれました?
とっても大事な忘れもの。
才能、努力、何もかも。
そんなものが、なくたって。
"あなたの価値は、変わらない"
少女の名前は、トピス・ディア。
彼女はとうとう気がついた。
AI達が見逃した。
たったひとつの忘れ物。
才能なくても、いいじゃんか。
努力しなくてもいいじゃんか。
理想論かもしれないけれど、たった1つの約束を。
"貴方の価値は、変わらない"
いつの間にか、少しづつ。
離れていった、2人の心。
今また1つに繋がって。
目から涙が溢れつつ。
ミックルディーは呟いた。
あなたに一生ついていく。
2人は静かに抱き合った。
ドアを突然破壊して。
AI達が、やって来た。
「そこにいたか、トピス・ディア!
死んでもらうぞ、トピス・ディア!
トピス・ディアは、アナグラム。
ディストピアの、象徴さ。
実は人工生命体。
才能皆無のお前でも。
役に立つのか調べてた。
実験データはもう取れた。
やっぱり役に立ちゃしない。
あなたは既に、用済みだ。
そいつを寄越せ、ミックルディー!」
トピス・ディアの、震える手。
ミックルディーは、握り締め。
他のAI出し抜いて。
突如、ワープを開始した。
AI達も、気づいたが。
気付いた時は、もう遅い。
さらばガリーシャ、ユートピア。
みんなにとって、ユートピア。
私にとって、ディストピア。
目指すはまだ見ぬ新世界。
2人でいれば、怖くない。
ミックルディーを抱き締めて。
少女は進む、どんどん進む。
そこに未来があると信じて。
これを読んでるあなたに聞こう。
あなたの世界はユートピア?
あなたにとって、この世界が少しでも良い世界でありますように。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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