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不器用な初恋  作者: まほろば
出逢い~イファ
3/30



次の日、アランとラルフで街へ出た。

マーズとハロルドは子供の看病をする傍ら装備の汚れを取っていた。

「どうすればアランが許してくれると思う?」

「手を動かせ」

「一緒に考えてよ」

こんな時のハロルドはかなりしつこい。

止めるアランが居ないから末っ子の本能丸出しだ。

「俺が考えて教えたとしたら、アランに直ぐばれる」

「何で?」

「能天気なお前なら絶対考えない答えだからだ」

「弟の初恋だよ。応援しようとか無いの?」

マーズがジーっとハロルドを見てから言った。

「何度目の初恋だ?ざっと数えても両手じゃ足りない数なのはどう説明する」

「前のはカムフラージュ。シルビアをこっちに向かせたかったから気のあるふりしたの!」

怪しむマーズにプイ、と横を向いた。

マーズの方から話し掛けて来るのを待っていたハロルドが、待ちきれなくて顔を戻した。

「カインみたいに燃える恋じゃないけど、初めて会った12歳からずっと好きなんだ」

「6年前ならシルビアはまだ9歳だぞ」

犯罪者を見る目でマーズに見られて、慌ててハロルドが違うと手を振った。

「好きなんだ。シルビアを誰にも渡したくない。本当は兄のアランでも触って欲しくないんだ」

弟の本音を聞いて、マーズはホッとしていた。

ハロルドの気持ちはアランも分かっていたが、シルビアは15歳であまりに若すぎる。

簡単に許せるはずは無かった。

「カインどうしてるかな」

「伝書鳩で聞いてみれば良い」

この時代に現代の通信網があるはずもなく、暴動が起き掛けたのも情報が行き渡らなかったからだ。

可能な限り情報は密にしているが限界はあった。

「アドバイスが怖そうだから止めとく」

三男のカインは敗戦した小国の姫を拐って妻にした。

本来許されない行いだが、妻の国が再興を望めぬ小国な事と2人が愛し合ってた事で最後は周りも許すしかなくなった。

カインを本気にさせるのはその愛した妻の事だけだ。

全てに冷淡なカインの性格を小さい頃は危ぶんだが、最近は妻の影響か多少人間臭くなってきた。

4兄弟は長男の皇太子ロナルドが24歳、次男マーズが22歳、三男カインが20歳、末っ子のハロルドが18歳、と2歳置きに4人が並んでいた。

「カインは義姉意外興味ないから、聞いても絶対参考にならないもん」

「ロディに聞いてみろ」

ハロルドがえぇー、って顔をした。

「ロディは模範的な答えしかくれないよ。父上の言いなりに侯爵令嬢と結婚して、夫婦2人で話してるところなんか1度も見ないし」

「長男で次の王に立つんだ、夫婦で忙しいんだろ。それを分かって支えるのが兄弟だぞ」

「分かってるよ」

ハロルドが口を尖らせた。



アランとラルフが戻ったのは昼過ぎで、どんより沈んだ顔で戻ってきた。

「嫌な報告らしいな」

マーズが2人の顔を見て言った。

「ああ、かなりエグい話を聞いてきた」

ラルフが話始める。

「この国にも占い師が来ていてな、予言を残した」

「マーズの時の占い師?」

ハロルドが聞いた。

「そこまでは分からないが、マーズの予言から3年は後の計算になるな」

「その予言ってどんなの?」

「ゆっくり話すから、せっつくな」

「分かったよ」

ハロルドが少しむくれて口を閉ざした。

「占い師の予言は『子供は女2人』『最初の子供がこの国を幸せに導く』だ」

先をアランが続けた。

「それで話が終われば予言で済む話ですが。予言には後があって『次の子を闇の贄に捧げよ、さすれば災いはその子に集まり国は繁栄する』」

マーズの顔色が変わる。

ハロルドも真面目な顔でアランを見た。

「マーズの話がこの国まで聞こえてたんだろう。国中がその予言に沸き立った」

「産まれた第1王女マリアンヌ、マリアは大切に育てられ、次女のローズマリー、ローズは幽閉された」

「…それ、ホント?」

ハロルドが信じたくないと言う顔で聞いた。

「本当だ。ローズは狂って今は城の塔の最上階に幽閉されている」

「酷いよ」

ハロルドが可哀想だと本気で言っていた。

「この話には続きがあるんですよ」

アランが先を続ける。

「王女は2人。占い師の予言ではそうだったのに、もう1人3女ベルベット、ベルが産まれた」

「え?」

ハロルドが聞き直す感じの声を上げた。

「それだけで分かるでしょう。ローズのスペアとして国王はベルを山奥の修道院へ閉じ込めた」

話すアランの顔も怒りを隠していなかった。

「冷静になれ。感情的になりすぎだ」

マーズが2人を嗜めた。

ラルフが代わって話し出した。

「エグい話はここからだ。ローズが狂って徐々に衰弱してくると、王はベルを呼び戻した」

「ローズの代わり?」

ハロルドが疑問符を付けて聞いた。

アランが頷いて話を進める。

「そう。この街の中くらいならマリアとローズが離れても良いけど他の国へ行くとなると話は別」

「狂ったローズは行かせられない。そこでベルだ。ローズの身代わりにベルを侍女の1人として連れていくと決まったらしい」

「え?第3王女だよね?侍女って…」

ハロルドが困惑した声を出した。

「野生児らしい。食事のマナーも知らないとか、喋れないとか他にも色々言われていた」

話してるラルフですら顔を歪めている。

「可哀想だよ」

ハロルドが言った。

「喋れないとかマナーを知らないとか、それって誰もそのベルに教えなかったって事だよね」

怒りを滲ませるハロルドに頷いてラルフが続けた。

「ああ、城に戻してからは城の中で侍女と同じ仕事をさせられてるって話だ」

「今はまだ狂ったとは言えローズが居ますから、ベルの扱いは石ころか雑草だと市場では言ってました」



「話はそれだけじゃない」

「まだあるの!」

ハロルドの機嫌が更に悪くなる。

「マリアはかなりな癇癪持ちだ、いわゆるヒステリーだな。城でも侍女を最低2人は殺している」

「聞こえてない話もあるでしょうから、実際は更に数が増えるでしょうね」

アランが付け加えた。

「市場でもこの子だけじゃない。軽く聞いた話だけで数人は死んでる」

「そんな女をこの国は王女って崇めてるの?」

ハロルドの声は怒りを過ぎて呆れに変わっていた。

「国が貧しいからだ」

マーズが冷静に話し出した。

「畑を見ても分かる通り。この国は自分で生み出す努力をしていない」

「マリアがマーズかグリフィアの王子を捕まえたら、それだけで国が豊かになると思い込んでるんです」

一瞬部屋に沈黙が流れる。

「父上はそんな女と、本気でマーズを結婚させようとしてるの?」

「おそらく知らないでしょう。美しい容姿の話しか私も聞いてませんでしたから」

「マリアの本性を他の人は知らないんだね。1つ気になるんだけど、マーズが求婚した話の真相は?」

「いや、妄想が先走りした感じだな。マリアは美しいから絶対誰でもマリアを好きになる。そこから話が膨らんで、マリアを一目見ればマーズもグリフィアの王子もマリアの虜になる」

「え?」

ラルフの説明にハロルドが間抜けな声を出した。

「それってなるだろうって勝手な思い込み?」

「国が貧しいから、国民は活路を見いだすその願望にしがみついているんだと思いますよ」

「それ、かなりプレッシャーだよね」

ポツンと言ったハロルドの言葉で、3人も改めて考えさせられた。

「小さい頃から国の未来を背負わされたのは不憫だと思いますが」

「傲慢すぎて哀れとは思えないな」

アランとラルフがハロルドの説を否定した。

「そうだけどさ。強がってるように感じるんだ」



「街で見る兵士は隣のモルグとバルスだな」

「居ても不思議じゃないね」

ラルフにハロルドが答える。

「モルグに比べると、バルスの兵が多過ぎる気はしますけどね」

アランが警戒する必要があると言った。

「確か今のイファの王妃はモルグ王の妹だよね」

「ああ」

ハロルドが首を傾げながら言った。

「モルグの王子が前に、『イファの姫を娶る』って言ってた記憶あるんだけど、記憶違いかな?」

「私も聞きましたが、ずいぶん前の話でしょ」

「マーズ?」

黙っているマーズに気付いて、アランが声を掛ける。

「バルスの2つ先はグリフィアだと思っただけだ」

「バルスとグリフィアですか?有り得なくは無いですが、繋がりが弱いと思いますよ」

アランが考えながら返した。

「元は母国フィアとモルグとイファで1つの国だったから、イファとバルスが繋がるとは考えにくいな」

ラルフも言った。

「イファと繋がりが深いのはやはりモルグだろう」

ラルフが言うように、1つの国が内乱で3つに別れ、

フィアとモルグとイファになった。

昔の国名の記録が何処にも無いので古の名は分からないが、栄えた国らしかった。

その領土の4分の3は今はフィア。

残り4分の1をモルグが3、イファが1で分けた。



「これで出揃ったか?」

「そうですね」

アランがマーズに答えた。

「反旗を翻す可能性は無いな」

「僕もそう思う」

ラルフとハロルドも言った。

「マーズの意見は?」

「バルスの兵が多過ぎる。少数で動きを見張るようカインに伝えてくれ」

「心配しすぎ」

ハロルドに笑われてもマーズは変えなかった。

「それじゃあ明日。城へ出向きましょう」

アランが締める。

ハロルドが辛そうに子供を見た。

「この子は?」

「出発まではもちろん俺が見る」

ラルフが引き受けた。

もう2日部屋を確保してから、翌朝子供を部屋に残し城に向かった。

城を守る兵士にフィアからの手紙を出すと、大臣らしい老人を連れてきた。

「これがフィアからの使いだと?」

老人はみるみる顔を赤らめ怒り出した。

「未来の女王になるかもしれない我が姫の護衛が、たった4人の騎士だなどと許されるわけがない」

「私たちはフィアの聖騎士です」

アランが冷静に言った。

「確かにフィアの鎧を着けておるが、フィアの聖騎士の鎧は銀のはず、お前たちは違うではないか!」

門番が槍を突き出してきたので、マーズがアランに退くように合図を出した。

式典で着る銀の飾り装備をこんなところへ着てくるはずもない。

それも分からないのであれば話すだけ無駄だ。

「解りました。それではそちらで馬車を仕立てフィアまでお出でください」

礼儀は通した。

マーズたちは宿へ戻った。




地図の説明が解りにくいかも


上手く表現出来てなくて

申し訳ないです

m(_ _)m

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