出会い そして波乱?
とりあえずビルダーさん達と現場を離れようとした。しかし、売買所に向かってくる集団がいた。数は二十ほど。全員が同じ同じような光沢を放つ紋章入りの鎧を着け剣を装備している。
あれが騎士団とやらだろう。
売買所に着くと数人が中に入っていき、残りの人たちは家に帰るよう言い、近づけさせないようにしている。しかし住民の中には説明を求める者も多数いて大変なことになっている。
俺たちはそれを見ていたが、直に住民もおとなしくなり、帰るようだ。
これ以上いても仕方ないのでビルダーさん達とその場を離れこれからどうするかの話し合いをしていた。
帰るところもなくなってしまったし、お金なども有るはずも無い。無い無いづくしだ。先程奴隷紋を確認したのだが、跡は残っていてこのような状態を仮奴隷といって、所有者が死んだりした場合に跡が残るらしい?このような跡がついた元奴隷は何処も簡単には雇ってくれないらしい。元からの予定通り冒険者ギルドへ行き冒険者登録をしようにもそれにも幾らかのお金が必要らしい。売却するにも登録書が必要らしいのだ。
衣はボロいが一応今着ているのがあるので大丈夫だし、住の方も野宿などといった方法があるからまだ良い。問題なのは食だ。食べ物を買うには働かなければならない。しかし働くには力が必要で、食べ物が必要だ。しかし食べ物を買うには働かなければいけず……ひどい悪循環だ。
俺たちは途方にくれた。しかし、その時何処からか、アレンをとても爽やかにしたようなイケメンが現れて言った。
「君たちは魔物の群れに襲われた売買所の奴隷だろ?良かったら話を聞かないか?ちなみに僕はこの町にある冒険者ギルドの副ギルド長だよ」
ビルダーさんが警戒した様子で言った。
「身分を証明するものを出せ。でなければ信用できん」
「あははは、確かにそうだ。ええと、あった。これでどうだい?」
彼は懐から出した一枚の長方形の紙を出した。
ビルダーさんが受け取り紙に書かれている文字を読んでいる。そのあいだ俺とアレンはなにもせずにビルダーさんを待っていた。
見る限りでは紙の質は良くて日本のものと大差ないように感じる。魔法とかが有ってそれで作っているのだろうか?
盗み見しようと思ったがなんか怖いので止めておいた。こっちの言葉が分かるなら文字も分かりそうだと思ったんだけどな。ちなみに周辺には店らしきものはなく不思議な材質のものを使った家が多かった。こっち独特のものだろう。
ビルダーさんが読み終えて、紙を返すと、
「この町からの依頼だった。印もあったから間違いない。
中には何処かへ逃げた奴隷を捕まえろとの内容だった。」
えっ、どういうことだ?捕まえろって。それに何で治安を守る騎士団ではなく冒険者ギルドなんだ?
「どういうことですか?ビルダーさんー
「そのままの意味だろう。逃げた奴隷が犯罪を犯さないようにする為に捕まえろってことだろ。それを冒険者ギルドに依頼してるのは不思議だがな」
副ギルド長はずっと話を聞いていたが、口を開き言った。
「なるほど、そこまで気付きましたか。思った通りでしたね。ここではなんなので、ギルドの方で話しましょうか」
「ビルダーさんどうしますか?」
ビルダーさんに判断を任せると、
「逆らったところで俺らに拒否権はない。町からの依頼状もあるしな」
そうだな。拒否権なんてない。
「物分りがよくて助かりますよ。ではついてきてください。」
俺たちは副ギルド長についていった。
さっきの通りを通って、時折曲がりながらも五分程で到着した。
「ここですよ」
副ギルド長がいった。
とても大きな建物だ。少し傷があるところもあるが、むしろそれが迫力を増している。
中に入ると、あまり人はいなかった。前方に設置されているカウンターに受付の人が座っているだけだった。それも空いているところが多かった。
「副ギルド長、おはようございます」
座っていた受付の人が挨拶をする。
「あぁ。おはよう。例の件で連れてきた。今から応接室を使うから誰も入れさせないでね」
「はい、了解しました」
応接室で話すらしい。副ギルド長はカウンター横にある扉を開ける。
「坊主、はやく行くぞ」
少しぼーっとしていた。もうビルダーさんもアレンも中に入るところだ。俺も急ぐ。中に入るとそこそこ広めの部屋で、真ん中に机と椅子があるだけの簡素な部屋だった。
副ギルド長が奥の椅子に座る。
「君たちも座ってくれ」
促されて俺たちは向かい合って座る。
「では、早速だが」
「ちょっと待って欲しい。まず貴方の名前が知りたい」
ビルダーさんは副ギルド長という肩書きがあるせいか丁寧に話す。
「あ〜、忘れたよ。僕の名前はアルカレだよ。ちなみにギルド長はある事情で姿は見せられない。すまないね」
「分かりました。アルカレさんと呼ばせてもらいます」
ビルダーさんの丁寧語はとても違和感がある。
「敬語でなくてもいいよ。そっちの方が身構えないだろう。もちろん横の二人も。遅くなったけど、名前を聞かせてもらっていいかな?」
「じゃあ遠慮なく。俺はビルダーという。それでこっちの金髪はアレンっていう。無口だから質問は俺にしてくれ」
俺の番だ。
「俺は……クゼルって言います。」
少し考えたが、そのまま苗字をもじった。そっちの方が怪しまれないと思ったからだ。
「へぇ、そうなんだ。じゃあ、話を戻そうか。まず君たちをこうしてここに呼んだのは他ならぬ町からの以来だったからだね」
「何故、冒険車ギルドに?」
ビルダーさんが質問する。
「それを話すなら騎士団について話さなければならないね。騎士団は治安を守るために各町に配属されている。
しかし、少し前から騎士団の一部団員たちがその立場を利用して酒場の娘を襲ったんだ。普通なら、そんなことが起きたら問題を起こした団員たちは直ぐに職務乱用で処刑にかけられるべきなんだけどね」
「べき?」
ビルダーさんが思わずといったように聞く。
「そう、その団員たちはなんの罰則もなく無罪放免。更にはそんなことがあったことすらも一般市民は知らない。なんでだと思う?」
考える。がわからない。代わりにビルダーさんが答える。
「貴族が後ろで働いた、ってことが挙げられるがこの町ではそんな地位を持つのは領主ぐらい。しかし、そんなことをする理由がない。ならば騎士団長が動いた。普通なら一騎士団団長にそんな地位はないが有力な貴族もいなく、こんな魔物の出る森が近くにある町では別だ。その分騎士団をまとめている団長が高い地位を持つことになる。
その団長が理由は知らんが団員たちを助けて、その事実をもみ消した。ってことか?」
「その通りだよ。これはびっくりしたな。もしかしてそういうことに関わる仕事でもしてたのかい?」
正解らしい。説明しながら答えてくれたおかげで俺でもわかることができた。
「いや、俺は若い頃から冒険車一筋だったからな。そわな経験はない」
ビルダーさんは若い頃から冒険者だったらしい。
「そうなんだ。まぁ、話が逸れたけどそんな訳でそんな頼みをしたら貸しになったしまうことを恐れて冒険者ギルドに依頼をしたんだよ」
貸しになる?仕事なんだから貸しにはならないのでは?
「あの、いいですか?なんでそれが貸しになったりするんですか?」
思い切って聞いてみた。
「あぁ、それは、その頼みが私情を挟んでるから、仕事にならずに貸しになってしまうんだよ」
「私情?私情ってなんで?」
「それが複雑なんだよ。本来騎士団は犯罪者を取り締まる。しかし奴隷だと話は別になってしまってね。他の町なんかだとそこも騎士団の管轄になるのだけれどもこの町では騎士団が暴虐を振るっていてね。それも一部なんだけどその一部に団長が混ざっているのが肝なんだよ。だから、その団長は自ら面倒な事はせずにやることだけをやっている、というわけさ」
余りわからないけど大変なんだな。