戦闘 そして疑問
ふぁ〜、今日もいい朝だな〜。ってことで今は昨日、銀狼からの攻撃を防いでかなりのトラウマになった件の森にいる。
今日こそビルダーさんに昨日の疑問などなど聞き出そうと思ったのだが、昨日は相当疲れていたようでビルダーさんに起こされるまで眠っていたのだ。
そして昨日に引き続き獲物を取りに来たのだ。これが終わったら聞こうと思う。狩り中は油断大敵だからな。
昨日は状況などか分からなかった為に混乱してしまったが、今日は心の準備は万端だから何が来たとしても大丈夫だ。
俺はそう意気込んでいた。この先に何がいるのかも知らずに……
「ビルダーさん、ちょっといいですか?」
昨日と同じようにリア森林を三人で歩いている最中俺は昨日考えたことをビルダーさんに言おうと思った。
「なんだ?」
「昨日銀狼を、わざわざその日探して命がけの戦闘をして狩ったじゃないですか。」
ビルダーさんは何が言いたいかわからないというふうに取り敢えず頷いていた。
「それをですね、こう、もっと罠みたいなのを作ったりすればもっと効率的に安全にかれるとおもうんですよね。
例えば、原始的ですけど落とし穴を作って枯葉なんかで隠しておいて肉を置いておけば、銀狼なんかの魔物はそれにつられて落とし穴に落ちますよね。て思ったんですけど如何でしょうか?」
なんか話してる時に面接とか会社のプレゼンみたいのを思い浮かべて、変な汗が出てきた。怒られたりしたら怖いなとか考えて。
しかし、僕の心配は杞憂だったようだ。
ビルダーさんは驚いた表情で言った。
「あ!そう言われたらそうだな!確かにそっちの方が効率的で安全だ。何故、そんな簡単なことに気づかなかったんだ?俺は。」
ビルダーさんは気づいていなかったようだ。
だけど確かに不思議だ。ビルダーさんは奴隷になる前は冒険者だと言っていた。それも多分そんな弱くはないだろうレベルで。そんなビルダーさんが、日本でただの中学生でも気づくようなこんな簡単なことに何故気付かなかったんだ?
明らかにおかしなことが多い。もしかして俺たちの班以外でも昨日の俺たちみたいに一から探して戦ってっていうやり方をしているのかもしれない。
「あの、もしかして俺たちのところ以外もこんな感じなんですか?」
ビルダーさんは少し考えてから言った。
「恐らくは、な。いつもみんなで狩りの終わりに集まるだろう?そこでみんな各々服に血がついていることが殆どだ。それぞれ魔物と戦っているってことだろう。」
そういえばそうだ。みんな所々に血が付着していた。現に僕の服も昨日の戦闘で血がべっとりだ。。しかしビルダーさんの服は昨日の時点で血なんか付着していなかった。俺も同様に。何故だろう。
「ビルダーさんの服はなんで昨日はきれいだったんですか?それに俺やアレンのも」
それは簡単なことだった。
「それなら数日に一回服を外に出すんだ。そうすると誰か知らない奴が回収して、翌日には血が洗われた状態で帰ってくるからだよ」
そんなシステムだったのか。いやに丁寧だな。
しかし話が逸れてしまった。戻さなければ。
「話が逸れてしまいましたね。今は罠の件でしたよね」
「あぁ、そうだったな。話を戻すか。いろいろ疑問は尽きないが、取り敢えず、坊主の案を採用して銀狼を狩ろう」
考えるのは後でのようだ。今は狩りのことを考えていよう。
俺とビルダーさん(とアレン)は罠についてどんなものにするかなど考え、それを実際に作ってみることにした。
俺たちはさっき出した案をもとに罠を作ることにして、罠の種類は簡単な落とし穴にすることにした。
しかし、なぜ縄を使って罠を作ったりといった方法を選ばなかったというと、そもそも材料が限られてくるし、この中に罠製作のスキルを持っているやつがいなかったからだ。
しかし、落とし穴だけだと獲物に簡単に逃げられたり、獲物が運よくはまらないといった問題点があったがビルダーさんが落とし穴の真ん中に枝につけた肉を置いて、その匂いにつられて落ちたら先のとがった枝を固定しておいてぶっ刺さる感じにすればいい、という案を採用することにした。後は、罠の設置場所だ。これは、取り敢えずそこらへんの木々が密集していない広めの場所をチョイスした。
そして、みんなで協力して、カモフラージュ用の枯葉や枝を集めて、銀狼でも入りそうな落し穴を数時間かけて作った。
後は釣り用の餌だけ。俺たちは昨日と同じく銀狼を探して森の奥に向かった。
草の生い茂る中、三十分程歩いたところでビルダーさんが止まった。
恐らく、なにか獲物を見つけたのだろう。口に人差し指を当て、静かに!というふうにしたため、俺たちはゆっくり、獲物のいる方向を向いた。
そこには、銀狼が群れで移動していた。それはとても壮観だった。二メートル近い大きさの狼が銀白色の体毛を輝かせながら何十匹と歩いているのだから。
背筋がピンッと伸びた。
ビルダーさんが流石にこの数は対処できないと判断したのかばつ印を指で作って合図を送ったので俺たちは銀狼の群れが過ぎ去るまで、木々と草の中、身を潜めていた。
銀狼は数分で目の前からいなくなった。とても怖い思いをした。
ビルダーさんも溜飲を飲んだようでホッとした様子で話しかけてきた。
「流石にあの数は壮観だったな。通常は銀狼は数匹で固まって移動したり単独が多いからあの数は異常だよ。町にあの大群が襲いかかってくるかもな」
ビルダーさんは冗談めかしていう。
「じゃあ、切り替えていこう。今度は銀狼のグループでも狙うかな」
銀狼のグループ、か。一体の時よりもずっと大変だろうが頑張ろう。
俺は自分をそう鼓舞した。
十分ぐらい歩くといつの間にか湖に到着した。そこにはちょうど二体の銀狼が仲良く水を飲んでいた。
「よし、タイミングがいいな。はやくあいつらを仕留めるぞ。俺と坊主で 二体同時に攻める。アレンは援護と逃げようとするやつの処理だ」
ビルダーさんが素早く指示して銀狼の一匹、大きい方に向かう。俺は小さい方に向かっていく。
まず、アレンが小さい方に向かって矢を放ち間髪入れずに大きい方にも射る。狙いは的確で両方とも首元に吸い込まれるようにいったが、意外にも反応がよく両方とも躱した。その隙を狙って銀狼の首元に短剣を振る。しかし単調な攻撃だったせいか簡単に避けられた。俺も負けじと剣を振るうが全く当たらない。アレンの援護があるがなかなか命中しない。狼も牙を剥いて頭を噛みちぎろうとするがからだ反応して避ける。
そこでビルダーさんの方は終わったらしく助けに来た。
ビルダーさんの攻撃は方は俺の比でなく、俺より数倍重い剣を持っているというのに一寸のズレもなく首元にすぅーと刃が入っていった。
凄い。とにかく凄い。昨日は自分のことに精一杯だったからまわりが見えていなかったが、少し落ち着いた今は見ることができる。やはりなかなか強い冒険者というのはじゃないらしいな。
その後は俺の練習も兼ねて解体作業をした。二匹だったが直ぐに終わった。もう慣れたらしい。人間の適応力って凄い。そして、ビルダーさんが袋にそれを詰めて罠設置場所に向かった。日が少し傾いていた。
設置場所に到着した。準備はできていたから直ぐだった。釣り用の肉を置いたら完成。ようやく罠が出来た。明日獲物がかかるのが楽しみだ。
そして俺たちは売買所に戻って、肉を渡して檻に帰ってきていた。
ようやく聞ける。聞いて行こう。
「ビルダーさん、聞きたいこととかたくさんあるんですけどいいですか?」
「なんだ?なんでも聞いていいぞ」
「じゃあ、お言葉に甘えて。まず初めになんでここにいる奴隷たちは男しかいないんですか?」
「何でか、というのは知らんが、女の奴隷はこの売買所の他のところにいるようだぞ。」
「では二つ目。ここの奴隷たちで逃げよう、と思って罰を受けた人はいますか?」
「いや、俺が知る限り俺も含めて誰もいないな」
「最後です。ここの体制に不信感をもったりしたことはありますか?」
「いや、考えたこともなかったが確かにおかしなことがあったのに何も不思議に感じたことはなかったな」
「ありがとうございます」
「こんぐらいだったらいつでも遠慮せずに聞いてくれよな」
「はい、わかりました」
これで大体分かった。まだ想像の域を出ないが、おそらく正しいだろう。
こうして俺は無事疑問解消することができたよであった。
ここでの話はもう終わりそうです。
後、全くヒロインが出てないですが、数話で出てくる予定です。