ポチからみた順位
「それにしても危なかったわねぇ 大体あのバカ調子に乗りすぎなのよっ
普段口酸っぱくして安全確認って言ってる割に、与作に良いとこ見せようって
あほなのよっ、間抜けなのよっ」
50話の件である。いや、「最後の猪」の話である。
「危ないとこデシタね。ポチは良くやってくれました。」
「それにしても、べるで、あんた何時ポチをあんなに仕込んだのよ?」
「大したことはしてないのデスが、ポチは賢いのでなんでも言う事ききマスよ?」
「あたしが「お手」って言っても全然手を出さないのよ、あいつ。」
ポチから見ると・・・
べるでが筆頭、群れの親分である。
ついで八尾 ご飯係である。
ミラ・・・ お友達、もしくは子分である。
アン・・・ 同等、もしくはお友達・・・である。
オオカミの世界では群れの順位で物事が決まる。
当然自分と同等はライバルである。自分より下は子分である。
強く出たほうが勝ちなのであるが、アンはバカっ可愛がりしたおかげで
上と見てはもらえなかったのである。
まぁ当面、順位の入れ替えは無いと思われる。
「オネェサマ・・・・お手っ」
思わず手を出してしまうノリの良いアン。
はっと気が付き、手をひっこめるアン。
「あんたねぇ、いい加減にしなさいよ。だいたいこの間の調査はどうなったのよっ」
顔が赤くなったアンは話題を逸らそうと必死。
「調査・・・と申しマスと?」
「あれよ、アレ ア~レっ あの件よっ」
「アレと申されマスと?」
「スリングショットよ アレに訊けって言ったでしょっ」
大声で怒鳴るアン。
「あの件はNGです、オネェサマ。ブロックは外したくありまセンです
未読メッセージが山ほどありそうナノで」
「なに~っあたしの言うことが聞けないってーの?
もう怒った こうしてくれる えいっ」
「きゃぁ 何をされるんデスか えいっ」
ドボンっ アンは足払いをされて風呂に沈む。
そこから大乱闘である。
暫くしてユデダコみたいに赤くなった二人がお風呂から出てきた。
囲炉裏から離れた所でだらしなくタレる二人・・・
のぼせたらしい・・・
冷たい床が気持ちよさそうである。
やれやれ・・・と八尾は風呂に入りに行った。
風呂場は家の軒先を伸ばして囲ってある。
家の壁は安普請で薄い・・・
つまり・・まる聞こえなのだ。
聞き耳立てる必要はない。
筒抜けなのだ。田舎の家にプライバシーと言う言葉は存在しない。
いや、都会の一戸建ても似たようなもんだ。
「スリングショットかぁ そんなものもあったなぁ・・・
あれなら弓より楽かもしれないな・・・」
遠い目をして、暗い山を見つめる八尾だった。