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002 何かが違う朝

伝説も勇者も楽じゃない第二話です。


注意事項。作者の本業は絵であり、ろくに小説を読んだことがない状態で書いています。

文法などもっての外、テンポはわざとひどくしてあるほど(今回は特に)ですのでご容赦。

また、今回に限ったことではありませんが、世界観を考慮した上で「何故?」と言いたくなるような描写があります。


今回、ご都合主義に近い描写もございます。


違和感を感じたら、読み切った後にあとがきをお読みください、それについて言及しているかもしれません。

(言及してなかったら誤字脱字、意味の履き違えの可能性があるので是非とも感想などでお知らせください)

 

 朝日が昇り、山に囲まれたこの村にも少し姿を現す頃。



「なんだこいつは、魔物か!?」

「お、追い払え!…わわ、こっちに来たぞ!」

「一体何をしようとしているのかしら…やっやだ来ないで!」



 …何が起こるかは分からないというのは、この世界の定めだ。

 不定の物事を「定め」と表現するのは不適切だろうが、明日何があるのかなど、誰も知らないのは当たり前のことだろう。


 確率などあるはずもなく、予想できたものではない。「起こる」保証も「起こらない」保証もない…。




 ダンダンダンダン!


「兄さん、兄さん」

「ルテオ!寝てんのか、起きろ!」

「いこうぜ、広場がすげぇ大騒ぎだ」


 小鳥の囀りを聴きながら、眩しい朝日に目を覚ます…。ん、なんだ?

 いつもなら独りでに起き、変わらない一日が始まるのだが、今日はどうやら何かが違うらしい。


 小鳥の囀りはせず、朝日もまだ登り切ってはいないようだ。そしてそんな時間に、何故か妹と友人がドアを壊れるほど叩きながらルテオを呼んでいた。


 何か、違うのだろうか…?


「い、いや、確実に違う」



 広場のほうから、聞いたこともないほど大きなどよめきや叫びが聞こえた。


 ルテオはそのまだ開ききっていない瞳を擦りながら体を起こし、窓の方向に体を向ける。

 窓の向こうには村の広場が見え、そこには、恐らく村の住人殆ど全員が集まっているであろうほどの規模の人だかりが…


 あんな人だかり見たことない。一体何があったんだろ。




「ルテオ!」


「ああっ忘れてた…うん、今行くからちょっと待って」




「遅いぜ、ルテオ。広場がとんでもねぇことになってんだ。なんでも魔物が侵入したらしい!」

「え?ま、魔物…?」

 魔物、という言葉を聞いて、ルテオは少し怖くなった。


「人だかりを見たか?面白そうだし、行ってみようぜ!」

 …あの、正直、行きたくないし関わりたくないです。どうでもいいです。


「兄さん、話してる暇ないから行くよ!」


 エスカがいつになく物凄い表情をしている。怒っているのか、焦っているのか、驚いているのか?

 しかし友人の顔もエスカの顔も、どこか喜び、興奮しているような…



 その瞬間腕を掴まれて、部屋に戻ろうとしていたルテオは一瞬にして廊下に引き戻された。


「うわアアアっ!?待って待って!」


「は、待って?…あぁそうか、兄さん、まだ着替えてないか。じゃ、着替えたら広場来なよ、とにかく、とんでもなかったから」

「絶対だからな!」



 とんでもなかったなんて、その言葉だけは聞きたくなかった。

 とんでもないことなど、起こってほしくないのに。


 でも、絶対と言われた以上行くほかない。

 どうでもいいことだけど、気にならないわけじゃないから行こうか…。


 とりあえずそこに畳んであった青いカットソーを着て、広場へ向かった。




 家と道を挟んですぐ前にある広場。そこは、家の中から様子をうかがった時より派手な事態になっていた。声はすごいし、押し合いへし合いというか、魔物を取り押さえる者以外も当然様子を見に来ているわけで…


 広場には少し質素なものだが噴水があって、その近くに人が群がっている。

 どうやら村の警備役や男たちが魔物をそこまで追い詰められたらしい。



「あ、やっときた兄さん。すごいよ、この熱気。兄さん、耐えらんないっしょ?」

「うん…」


 人だかりに呆然としていて答えが出ない。勿論熱気に耐えられないのもあるが。

 そんなことよりも、すごいよ、などと平気でわくわくした顔で言えるエスカも怖かった。


「まったく、魔物一匹でひどい騒ぎだぜ。オレだったら、蹴り飛ばしてやるっていうのに!」


 と、興奮気味の友人の一人が笑顔で自慢げに言う。その他の友人が「うんうん」と頷いている。



 何故自慢げに言えるのか、ルテオは理解できない。




 この村、ハルル村は平和だ。他者の目から見たらヘドが出るほどのどかで、皆平凡と平和を愛して、外の世界――つまり村の外――をこれでもかと恐れている。何故なら、魔物という「平和な日常」を邪魔する存在があるからだ。


 そこでハルル村は村の入口、つまり外界とのつなぎ目である場所に、三つほど高めの柵を設けている。

 魔物はおろか、その他動物でさえ入ってくることは、ほとんど無い。もとい人間も…


 しかし、物事には例外が付き物であり、その「平和な日常」に飽きる者もいれば、旅に出たくなってしまうものだっている。



 子供たちはまさに「例外」なのだ。


「平和な日常」に飽き、それが幸せと言い張る大人に反感を持つ。

 外界で度々異変が起こっており、それに不安感を抱きつつも「この世界は平和が一番なんだから、誰かやってくれ(世界を平和にしてくれ)ないか?僕たちは応援する(傍観者だ)から」と言うような押しつけがましい思考のハルル村の住人(大人たち)が嫌いなのである。


 ましてや村の入口(子供には出口に見える)に厳重な監視と警備がなされており、村の外は危険だと散々聞かせられた上に村の出入りは禁止なのだから、「平和な日常」と逆の世界に夢を見るのは致し方無い。



 まあ、ただ一人の少年を除いて、だが。




「なぁなぁ、魔物やっつけねぇか?」

「おーそれいいネ!誰が行くんだ?みんなでか?」

「馬鹿言え、男は一人で行くんだぞ!」

「危なくない?弱い魔物?なんていう魔物?」

「それはわからねぇよ。俺、魔物よく知らねぇし。」


 気づくと、村の子供――主に男子どもが、魔物を倒すとかいう話を始めているようだった。


 あぁ、巻き込まれる。面倒なことになりそうだ。逃げよう。

 ルテオは人だかりの中に紛れた。



「あれ、兄さん見に行くの?兄さ…ああ、行っちゃった。」

「えー、ルテオ行っちまったのか。誘おうと思ったんだけどなー。」

「うおっ、あんた聞いてたのか。…誘うって、何に?」

「俺らの中で誰が勇敢なのか、あの魔物で試すのさ。倒したらそいつは勇者だ!」



「…ふーん。勇者ねぇ…」


 兄さん、ここにいなくて正解だったかもしれないな。という言葉は、エスカは言わなかった。


 正直、魔物を倒しただけで勇者ってのはおかしいと思ったが、何かが起こりそうでワクワクとしている。クソ平凡な兄に何かがありそうだ。と。



「おーいエスカ、なにニヤニヤしてんだ、気持ち悪いぞ。」

「ふん、ほっとけ。あーで、その倒せたら勇者とやらになる奴は、結局誰にしたのさ」


「そうだなー、ま、ルテオ行ったし、ルテオでいいんじゃないか?」

「なんだなんだ、結局ルテオが行ったのか」


 人だかりのすぐ後ろにまた子供が集まって、騒ぎ始める。

 _ルテオがこん中に入ってったらしい、勇敢さを見せたいのかな。

 __あ、もしかしてすげぇことするんじゃね。ええー、ルテオがー?そんなまさか!あはははは!



 エスカはそんなことを横目で見ながら、魔物侵入ふぜいで鍬や鎌、箒など武器にできそうなものは全て掲げている、馬鹿らしい人だかりに自分も入り込んでいく。


 ふ、兄さんをちょっと茶化してみよう。あんたは勇者にされるとさ、と。




 ―




 その兄さん、もといルテオは今、人の波に飲み込まれている最中である。



「で、出ていけ、魔物は出ていけ!」


「攻撃しようとすると体当たりされるらしいぞ、けが人も出てるから気を付けろ!」


「く…あまり武芸に長けた男がいないからな…網で捕ろうとしてもすばしっこくて無駄みたいだ」


「一人警備役の人がやられたそうよ!子供はなるべく下がらせて、下がらせて!」


 こんな声ばかりが聞こえる。怖いな…前線には出ないようにして、早く抜けないと。

「ちょ、ちょっと通してください…うわっ!あ、あの、通してください…!」


 魔物がどんな奴なのかとかは、別にどうでもいい。とにかく騒ぎが収まるまで家帰って寝ていよう、そうしよう。


「すいません通してく、通しゲホッ…通して、ってゅっは…!ぜぇ…はぁ…や、やっと出れたぁ!」




 開放感。いや、解放感ともいうべきか。


 ルテオは一安心して一度その場を見渡し、一目散に家の方向に向かう。



 否…向かおうと「した」のほうが正しいか。


 突如正面から農具のフォークを持った、確か僕の家の右隣の…その後ろの家の主、つまり一家のお父さんが人だかりに向って走って来てい…えっ。


「ちょっと通してくれ!」


 ドガッ…ゴッ…


 肩―正確にはから頭にかけて―にその人の腕が、脛にフォークの下の先端が見事に当たる。



「痛っ」



 全ての文字に濁点がついたような声が出る。


 その瞬間、ルテオは後ろに倒れた。そしてそのまま、ふらりふらり、人だかりの中に吸い込まれる。

 今まで「強烈な痛み」など感じたことのなかったルテオは、気を失いかけ…

 いや、もう半分は失っていた。


 人だかりの波に飲み込まれ、もはや自分の意志では動くこともできない。というか、今ルテオに自分の意志は多分ない。




 ………


「…うわぁッ!?えっ、な、えええ!」

 驚くのも無理はない、正気を取り戻したらいきなり周りは人が密集しているのである。いや驚かなかったらおかしい。


 この村、結構な人口だったんだなぁ、って、そんなことを考えてていい状態じゃないんだ。


「あ、そっちに行ったぞ」

「今度はこっちだ」


 周りはよく見えないが、どうやらまだ騒ぎは終わっていないようだ。とにもかくにも、今はこのおしくらまんじゅう的状態からの脱出をしないと…。


 うわぁ…どうしようかな、うーん、家は多分…。


 しかし、さっきのようには行かない。考えている間にも、現在位置は変わり続けるのだ。

 ルテオは混乱し始めた。



 えっと、えっと、ええぇっと……

 わぁあああぁぁだめだ、周りの状況は頭にも目にも入ってこないし、まるで頭が働かない!



 こうなったら適当に進むしかない、あぁ、もうどうにでもなれ!



 ―



「あーれー、兄さんどこかな」


 …広場はそんなに大きいわけでもなく、人だかりの中とは言ってもまぁまぁ中規模な村の人だかりだ。

 エスカは、その中で兄のいそうな場所、つまり後列側をずっと探し回っていた。



 ―兄さんのことだし、前のほうには絶対いないわな…。


 にしても騒ぎが長い。今まで平和だったのは村の周りに柵で防げるような魔物しかいないからじゃなかったのか。今村に侵入した魔物はそんなに脅威なのか…


 ったくもって馬鹿らしいな。そんなんでここまで騒ぐ村も、そんなん魔物を倒しただけで勇者だなんてのも。



「あ、兄さん」


 見覚えある青い服が一瞬、雑踏の中で…多分あれは兄さんだ、見っけ見っけ、からかってやろ。


 ん……?

 ____ちょっと待って今…?




「兄さ…兄さん!?えぇ、そ、そっ…そっち側広場じゃんか!?行くのかよ」



 エスカは叫んだ。が、どうやらルテオには聞こえていないようだ。

 クソ平凡な兄に何かが起こる…多分それだけだ。エスカは呼ぶのを諦め、兄の後を追いかける。



 ―



 取り敢えず真っ直ぐ進んでいるつもりではある。ルテオは真っ直ぐ進めばどこかで出られると信じ、真っ直ぐ、一直線に――本当は一直線には進めていないが――歩き続けていた。


 魔物に殺されるならそれでもいい。平和な日常をここまで過ごせて来られたし、悔いはない。うん、多分、断じて。


 出来るなら生き続けたいのはもちろんだが、人生はいつ終わる(死ぬ)か分からないのだ。

 死ぬ覚悟をした時に死ねたら本望じゃないか…。

 こんな些細なことで死を覚悟するのも変かと思いはしたが、

 ルテオはそう心に決めた__






 何が起こるかは分からないというのは、この世界の定めだ。


 不定の物事を「定め」と表現するのは不適切だろうが、今から何の想定外の出来事が起きるかだって、誰も知らないのは当たり前のことだろう。


 確率などあるはずもなく、予想できたものではない。「起こる」保証も「起こらない」保証もない。

 というのは知っている。もとい、少年は今知ったのである。



 体を起こす……。



あとがきタイムです


・青いカットソー


この世界はあくまでも「外国」ではありません、即ち言葉が英語でもないので、「T」という概念もないかもしれませんよね。

一応表現としては「カットソー」という事になっていますが、ただの青いTシャツです。プルオーバーでもいいと思ったのですが、カットソーにしておきました。


この時代にTシャツがあるのも違和感を感じるかもしれませんが、若干のネタバレなので言えません。



・何故村にそんなに人がいるのか


ハルル村って結構デカいです。山に囲まれた村なんですが、その囲んでいる山にも住民が居たりします。

また、一家の人数が多かったりするため、住民は多めです。


・住民が弱すぎるような


じゃあ、割と平和な日本で過ごしているあなたは、戦争が起きたらまともに戦えますか?

平和ボケって怖いですよ。ちなみに僕は無理です。


・こいつら農民なの?


そりゃ裕福とまでは行きません。

領主などその制度があるかどうかですが、おそらくこんな村ですから無いでしょう。



グダグダと長いですが、ここまで読んでいただきありがとうございました。

次回はルテオ君が村を出られるようになる、多分……。


平凡な少年の明日に、乞うご期待。

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