Prologueー勇者と世界
中の下。
その少年を形容するのに、時間はかからなかった。
探さなくてもどこにでもいそうな、普通の少年。
可も不可もない、否、正確に言えば若干の不可寄りで、得意なことは特に無し。
いじめられるほど地味な存在でも無し、かと言って輝くような人気者でも無し。強いて言うなら存在感は周りと比べて無し。
友人は多くもなく少なくもなく、家族は自分を含め4人。至って普通の家庭に、至って普通に育つ。
朝は起こされるでもなく一人で起き、昼には両親を手伝い、友人と遊ぶ。夜にはきちんと寝、また変わらぬ朝が来る…。
名を、ルテオ・セーディア。北西にある辺境の村、ハルル村に住む。
その少年ルテオは、この繰り返される毎日に多少の嫌気がさしていた。
しかし、その変わらぬ毎日を変える努力はまったくしない。
しない、いや…したくない、それだけのことだ。
無理に変わって非凡な生活を送るよりは、無理をせず平凡に平和でいればいい。
少年は、変わることは努々望んでいないのであった。
この広大な世界…つまり、いくつかの大陸と海から成る世界は、十数年前から魔物が蔓延る世界へと姿を変え続けていた。
郵便屋が魔物に襲われたり、船が魔物の手によって沈没したり…。
今この世界では、旅へ出る事に限らず、故郷からの外出をするのは、余程腕の立つ者や自分を勇者とでも思い込んでいる馬鹿者、それか強大な魔法の使える者がほとんどだ。
まぁ、そうした魔物のおかげで弱小な盗賊団が消えたというのだけは利点だったろうが。
人々は昔、「魔物」になる前の「モンスター」とは共存していた。
人間はモンスターに関わらず、モンスターも人間に関わらない、暗黙の了解。
旅人も道を行き交い、全ては平和と協調を保っていた、十数年前のこの世界。
だが、知られざる古い伝説は、また動き出し始めていたのだ。
ある「鏡」が封印の綻びから、古の従者の末裔とともにこの世界に再び目覚めようとしている。
幾十世紀も前の、魔物が蔓延り、闇に覆われた暗い世界だった頃。
その世界を打ち破った勇敢な者達を憎み、封印後も力を振り絞り世界を壊れたままにした「鏡」が。
人々はそんなことを知る由もない…。
続く。次回で第一話のスタートとなります