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信仰が息づくまち

長浜は、京都や比叡山の鬼門に当たります。

そのため、古くからお寺が建っております。

宗派の壁を越えて、民衆に守られてきた仏様のお話。


『長浜ものがたり』  歴史探訪、高月・木之本編



- ねね -


高月・木之本といえば、『信仰が息づく町』だと思う。



 高月の『観音様』、木之本の『お地蔵さん』

もちろん、旧長浜市域も信仰は根強く残っているんだけれどね。


素朴で純真な信仰といえばいいのかな。


 心が疲れたときには、ぜひとも訪れてみてほしい。

もちろん観光気分でもOK!

神様・仏さまたちは心が広いんです。


滋賀県には、神社仏閣が数多く存在しております。

そして、湖北ながはまは格別に多いのです。


 有名どころだけではありません。

ひとつひとつの村々に、それぞれ神社とお寺があります。

そして、たくさんのお地蔵さまが祀られております。


 夏の終わりには『地蔵盆』といって、子供が主体のお祭りがあります。

ダンボールいっぱいのお菓子がもらえる、とても素敵なお祭りです。

京都以外は、長浜にしか残っていない伝統行事です。


新春(旧暦)には『おこないさん』という、大人が主体のお祭りがございます。


もちろん日本の各地で普通に行われる行事も、数多く催されます。

5月になれば、お神輿や武者行列が村々ごと各地で行われます。

9月には、秋祭り。そして、盆踊り。

11月は、七五三。

12月は、大晦日の二年参り。



~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ 




さてさて、どこへ行きましょうか?


駐車場で観光案内のパンフレットと地図を見比べながら、仏様を求めて車を走らせます。


 前回、仲良し女子3人でこの地を廻った時にいろいろ知りました。

あの時は、由美子のたっての希望で『みつなりタクシー』で廻ったんですけれどね。



驚くなかれ、観音様だけでも130体はいらっしゃるそうです。


京都のかたにいわせると、「別に大したことない」とおっしゃるでしょう。

三十三間堂なんて、スシずめにするほど観音様がいらっしゃいますものね。


でも、それは有名な寺院が管理しているのがほとんどじゃないかな~と思います。


もちろん檀家さんとして、いろいろと協力はなさってはいると思います。

だから一概にはいえませんが……、


『観音の里』と呼ばれる『高月』は、一味違うのです。



とっておきの所へ連れて行ってあげましょう。



 小さな集落の住職不在の所では、当番を決めてお寺さんの代わりに持ち回りでお世話をしていらっしゃるのです。


厚い信仰心と、先人たちの想いが継承されていなければ、とても出来ることではございませんよ。

本当に頭が下がります。


 出来れば面白半分に見て回るのではなく、本当は祖父や祖母から教わるはずだった

『日本人の心』に触れてほしいと思います。

核家族化でおじいちゃんおばあちゃんに数年に1回しか会わないという方は、ぜひ『古き良き信仰』を知ってほしいです。




鬱蒼とした、という表現をするのだろうか?

山道を分け入ると、ひっそりとお堂が建っています。


「意外と小さいんだね。しょぼっ」


「ばかっ!」

私は思わず声を上げます。



 お寺と呼ぶには、いささか小さいお堂です。

ですが、小さい集落でこれだけのものを維持しておられるとなると話は違います。


親戚だけで、これを建てようと思いますか?


ご近所でお金を出しあって建てられますか?


当番で維持もするんですよ。


日曜日に観光で来られた方を案内するんだよ。

やれますか?


すみません、私にはまだ無理です。




 とんでもない暴言を吐いた長政くんを冷やかに睨みつつ、当番のおばさんとおばあさんにご挨拶をした。


「こんにちは、またよろしくお願い致します!」


「まぁ~! あなたいつぞやのお嬢さん。ほんにまあ~、ほっこりおぜんどさん」

「よ~ござんした」


「済みませんね~。彼、ホント世間知らずのものですから。」


「オホホ、いいんですよ。お若い方には、こういった事は分かり辛いでしょうからね」

「に~ちゃん、まんまんさんおがまんせ」


と、にこやかに許してもらいました。



~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ 



 俺は、いきなりの世間知らず扱いにいささか頬を膨らませながらお参りした。

とはいえ、後でねねから話を聞いてみるとなるほど失礼な事をしたと冷や汗がでてくる。


観光地化されたお寺しか知らない俺は、本当に何も知らないんだあと思ってしまった。


「信仰とはなんだろう?」



『長政くん、親戚だけでこのお堂を建てようと思う?』

『ご近所でお金を出しあって、建てられるの?』


 ねねの言葉が突き刺さって心が痛い。

自分の部屋の家賃ならばともかく、お金を出そうなんて考えもしなかった。

お正月のお賽銭だって、俺が出したのは受験の時以外は5円か10円だった。


おみくじや御守りならまだ出したことあるけれど、それは受験に受かりたい一心だったもんな。

そう思うと恥ずかしい。


わずか十数戸。


都会のアパートの方が、人が多いくらいだ。

アパートやマンションごとにお堂があるのかと思うと眩暈がする。


 ほんと、スゴいところだ。

ねねが、『高月・木之本の信仰は別格だ』といった理由がようやく分かった。


戦火に遭った焼け焦げた観音様を見て、現存している観音像がいかに大切にされ必死に守られたのか思い知ってしまった。


田んぼに埋めたり、川に沈めたり必死だったんだな。

もしかしたら、農民の方が死んでしまって回収されなかった観音像も有ったのかもしれないな。

今度からは、ちゃんと拝もう。




お堂を後にする二人を見送るおばさんと、おばあちゃん。


「なかよいの~」

「ほ~やろ、やっぱ二人はちんちんやろ」

※方言です!



~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ 



 ねね的に俺の「しょぼい」発言は、「レッドカード」だったようで、他の候補は取りやめになってしまった。


「長政くんには、まだ早かったかしら?」


そういわれて、後は本に掲載されている写真で観音様を見るのだった。

俄然興味が沸いたのに、なんだか肩透かしを喰らってしまった。


 高月に『観音の里歴史民俗資料館』があるらしい。

今日は、休館だというのが痛いな。

機会があれば言ってみたい。


豆知識だけれど、そういえばCanonは観音が由来だったな。



※注)写真撮影禁止の場合もあります。

マナーはお守りください。



~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ 




次に向かったのは『木之本地蔵』


田舎の街中を通り抜けて参道を少し登る。



 かつてはここの近くで、牛馬を売り買う市が開かれたらしい。

お地蔵様の御利益は、動物にまであったようだ。


ねねも『おじい様からの受け売りだから実際には見たことない』といっていた。


 市と聞いて一瞬食うのかと思ったが、乗用または農作業用だったのかな。

どちらかというと、バイクやトラクターの展示即売会場みたいな感じだったのだろうか?


バイク乗りとしては、実に興味深い。



 長浜にやたらと 『ヤンマー』 の看板を見かけると思っていたけれど。

ここ長浜が、ヤンマーの本拠地らしい。


きっとヤンマーの創始者は、その市を見たんだ思う。

牛や馬に変わる動力(労働力)を、ディーゼルエンジンに求めたのかもしれないな。


トラクターや田植え機に力を入れたのも、ここ近江の風土が関わってくるんだろう。

勝手な妄想だけれども、意外とありなんじゃないかな……。



 お地蔵様は秘仏で、公開されていないらしい。

特別ご開扉が、あるらしいが残念ながら日程があわなさそうだ。

(終了しています)


替わりに大きなお地蔵様を拝んだ。




 途中見つけた喫茶店で、すこし遅めの食事をとった。

結構ボリュームが多い。

後、ツーリングライダーが多い。


やっぱりバイクだよな!!

羨ましい。


ねねを乗せて愛車SR400で、琵琶湖畔を走りたくなってしまった。




とはいえ、向こうは男率が高い。


『ふっ、勝ったな』

心のなかで手を組み顎を乗せ呟く。



「どうかしたの?」

ねねが、キョトンとして尋ねてくる。



いかんいかん


「牛馬市のことをチョットね……」

先ほど思いついたことを、ねねに話してみると……


「さすが大学生、スゴい!」

と、手放しで褒められた。


胸の前で手を合わせ小さく拍手するしぐさが、メッチャかわええ。


いささかむず痒い。あわてて料理をかきこむ。



ねねに褒められ、料理がより一層おいしくなった気がする。


俺って単純だな。





※このあと、ヤローどもの視線が痛かった。




『長浜ものがたり』  歴史探訪、高月・木之本編 おしまい



湖北では、仏様が生活に根づいております。

戦火に遭い、世の中が激変し。

時代が変わっても、今なお大切にされております。



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