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長浜のまちをドライブ! (デートともいう)


長浜のまちをドライブ! (デートともいう)


                 歴史探訪、びわ・湖北編






 寝坊した!



 昨日はなかなか寝付けなかった。

人生始めて 『デート』 の約束をしたんだから、眠れなくても当然だろう。


 しかし、昨日入った 『太閤温泉』 の効能のおかげか。

はたまた、宿泊した 『豊公荘ほうこうそう』 の布団と枕が俺にジャストフィットしていたためなのか。

いつの間にか、ぐっすりと寝入ってしまった。


それはもう、ホント言い訳できないほど……。


ありがたい話なのだが、今の俺にはありがたくない。



「ありえねぇ~」


 宿で出された朝食を大急ぎでかき込むと、とりあえず荷物を預けたまま俺は約束の場所へと急ぐ。


「すみません少し出掛けます。すぐ帰ってくるんで~」



 すぐ目の前にある長浜城には目もくれず、走った。


約束の場所は、『豊公園の噴水』


昨日泊まった宿からは、およそ100m。

砂利を蹴飛ばし、車止めをヒョイッとすり抜けギヤを上げ全力で走る。

ものの1分とかからずに、ねねの待つ噴水にたどり着いた。


時刻は8時27分。

ギリギリセーフだ。


(ありがとう、豊公荘! 近くて助かった~。)




ねねは、すでに待っていてくれていた。


「はあはあはぁ、ごめん待った?」


「うん、待った!!」


「ホントごめん、寝坊しちゃって……」


「待つの楽しかったよ、それに長政くん遅刻していないし」

噴水わきの時計を見ながら微笑む。


「でも……」


「良いって、私が待ちきれずに早く来ただけ」



そういわれると嬉しいが、何だか俺が楽しみにしていなかったみたいで気が引ける。


「長政くん、荷物は?」


「ああ、宿に置きっぱなし」


「そんなに急いでくれたんだ、うれしいな~」



かわいい


見惚れていると、ねねに肩をこつんとつつかれた。


「じゃあ、荷物持って来て」


「え」


「私クルマで来たから、載せといてあげるよ」




噴水から駐車場までは、わずか数十m。

しかも、無料なのだそうだ。



 チェックアウトを済ませ、荷物を車へ積みこむ

いつもは愛車(SR400)に積載するのに苦労する『旅の荷物』なのだが、トランクに楽々と収まってしまった。


軽自動車恐るべし!!


「私もようやく免許がとれたんだよ、田舎じゃクルマがないと不便だからね」


「お邪魔しま~す」


「はい、おいでやす!!」

(東京の人に 『邪魔するんなら帰って~』 てギャグ使えないよね? ああっ、言いたい)



 初めて乗せてもらう、かわいらしい軽自動車。

そういえば、女の子の車に乗せてもらうって初めてじゃないのか俺?


「よっ(こいしょ)」

いかん、危うく”よっこいしょ”なんて言いかけた。



見た目は小さいのに中は意外と広い。

助手席を、あらかじめ後ろにさげてくれていた。

クーラーも程よく効いている。

芳香剤もいい香りだ。


”ねね”って細やかな心遣いが上手だな。


 デートだと、やっぱ男の方がこういう気合を入れるべきだよな?

男としてなんか負けた気がするが、都会暮らしの学生が自分のクルマを持つなんて不可能だ。



≪しばらく葛藤していた二人だったが、すぐに現実へと戻ってきた≫




「まずはコンビにね、飲み物を買いましょう」

「了解!」


お菓子や飲み物をあれやこれや言いながら買い込む。

ただの買い物なのに、なんだかウキウキする。


「それじゃあ出発進行~」


ドリンクホルダーに午後ちゃとコーラを装着し、ねねの軽自動車は軽快に走り出した。

(もちろんシートベルトもOK!)


カウンターのような小さなテ-ブルがあって、そこに引き出し式のカップホルダーがある。

小物が置きやすく、助手席が異常に快適だ。


(就職したら、車欲しいな~。 今度は俺が、エスコートしたい。)



~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ 



ねねが運転するクルマは、助手席ナビシートに長政を迎え、一路『小谷城跡』を目指す。




 少し回り道になるが、湖岸を通って景色を楽しみながら行くそうだ。


 湖岸(湖周)道路という広くて綺麗な道路を走り、左手に琵琶湖を望んで北へ向かう。

道路のびわ湖側は、公園として整備されている箇所が多い。

もちろん駐車場は、無料。

近隣の県から日帰りで多くの観光客がやってくるらしい。


「へぇ~、県外の人が利用してもタダなんだ」


俺は感心した。

これだけ広い場所を整備するのって大変なのにと思う。


「あたし観光地でお客を呼ぶくせに、クルマが止められないとか。駐車料金ボッタくりする所嫌い」


「そうだね」


「遊び半分にブラックバスを放流した人と、ゴミを持ち帰らないマナーの悪い人も嫌いよ自分勝手すぎるわ」


彼女が東京へやって来たら、ストレスを抱えそうだ。

(いかん俺、何を考えている。もちつけ、いや落ち着け。)


駅でもらった観光案内のマップと”ねね”から預かった戦国聖地マップを手に、キョロキョロと周囲を見回す。

しっかり前を向いて安全運転する『ねねの横顔』を時々、チラ見したのは内緒である。




 『びわ水辺の里』 という地元の直売場が見えてきた。

車を走らせたばかりではあるが、寄ってもらう。

すぐ近くには、南浜水泳場があるらしい。

琵琶湖岸には、小さな港があり船が止まっている。


「ぶどう狩りもできるのよ」

「へえ、おもしろそうだ」


 夏休みの間は早くから開いているらしい。

とりあえず、中へ入ってみる。

いろいろな物産が売られている。


花や野菜がたくさん売られている。

スイカやトマトキュウリになすetc。

八百屋よりも、品数が多いんじゃないか?

生産農家がわかる米まで、多数置いてある。



 シ-ズンによってなにが採れるかの掲示がおもしろい。


小さなワカサギみたいな魚が、ドカンとたくさん売られていた。


「子鮎よ」


「鮎?こんな小さいのを捕っちゃうんだ」


「馬鹿ねぇ、琵琶湖の鮎はこれ以上大きくならないのよ」


「川の鮎と種類が違うのかな?」


「一緒よ、この小さな鮎を他県は川に放流しているのよ」


「へえ、他所では大きくなるんだ」


「不思議でしょ?」


「ああ」


「そういえばもうしばらくすると、子鮎漁が禁漁になるわね」


ねねの話では、この沢山の子鮎を鍋で炊いて甘露煮にするそうだ。

近江の味らしい。



 見て回って感心したのは、近くの農業高校の生徒がいたことだ。

自分たちで作った花や苗を売っていた。

極めつけは、パンやジャム、ソーセージといった加工食品まで作っているらしい。


「いかがですか?私たちが作りました。美味しいですよっ!」


女子生徒が、一生懸命に慣れない客引きをしている。


作るだけでも大変な作業なのに、売るというのもまた別の意味で大変だ。

これは、そういった事を肌で学ぶための研修なのだろう。


よし!



「一つもらうよ」


「「ありがとうございます」」


かわいい女子生徒に勧められて、ジャムを買ってしまった。


ねねの視線が痛い。


「バイクなのにねぇ~」


いいではないか。

これはやる気を向上してもらいたい一心であって、下心などないぞ。


「どうだかね~」


心の声(言い訳)にまで、反応されてしまった。

顔に出ているのかな? 気をつけよう。



ねねの機嫌をなだめつつ、ドライブを再開した。




ぶどう畑を両脇に見ながら、川を渡る。


「この川が、姉川よ。この上流で、あの 『姉川の合戦』 があったの」


「教科書にも載っているから知っているぞ、織田・徳川vs浅井・朝倉だね」


「そうよ、遠藤直経のお墓もあるわ」






そんな話をしていると……



水辺に清らかなピンクの花が咲き誇っている。


「あれは何」


「蓮の花ね」


「はす?」


「蓮を知らないの? レンコンて知っているかしら、穴がたくさん開いているお野菜」


「レンコンくらい知っているよ」

心外である。


「それが蓮の根なの、草冠に連なるって書いて『蓮』その『根』だから『蓮根』」


名門◯◯◯大学の面目丸つぶれだった。



 俺が目にしたのは。

『奥びわスポーツの森』にある池だった。

この先にもあるらしい。


「もし良かったら、どこか駐車場で止まってあげるわよ」


「サンキュー」


竹生島神社辺津宮 などを横目に見ながらクルマはゆっくり進む。



ここら辺は、『早崎ビオトープ』 というらしい



ビオトープ(biotope:独)は知っている。

「(地域の野生)生物の生息空間」という意味だ。えっへん。


 ねねが、駐車場を見つけクルマを停めてくれた。

気を利かせてくれたのかな。


ねねが持ってきた、観光情報を見てみる。


「早崎内湖ビオトープ」は、干拓田の4分の1を灌水し調査をしている。

日本最大のビオトープ実験地。

長浜市早崎町の干拓田は、戦後の食糧増産の為、内湖を埋め立てて作られた水田になってしまっていた。

ひと昔前、生活廃水が直接琵琶湖に流れ込むようになったため、赤潮の問題が発生した。


現在は『美しく豊かな自然を取り戻す』ため、干拓田を元の内湖に戻そうとする動きが進んでいる。

ビオトープ実験調査がはじまってから、コハクチョウが年々増えている。

現在では、県内で有数の飛来地になっているそうだ。



水面に浮かぶ色鮮やかな緑の葉と、グラデーションがかかったピンクの花弁。


間近で見る 『蓮の花』 は綺麗だった。



俺は感動した。


これだけの土地を自然に返すとは、東京では考えられない。

やるな滋賀県、すごいぞ長浜、脱帽です住民の皆さん!!



「雪の中飛来する野鳥の姿は綺麗なんだろうな、冬にまた来たいな」

思わずつぶやいた。



「冬は寒いから、用事もないのに外になんて出ないわ」


「えっ、そんな。 もったいない!!」


「どうしても見たかったら、必ずスタッドレスタイヤとチェーンを装備しなさいね。もちろんクルマでね!バイクだったら死ぬわよ!!」


俺の雪をナメた発言が気に障ったのか、怒られてしまった……。



と思ったが、単に寒いのが苦手なのと、雪の怖さを教える為だった様子。


よかった。


その後、ひとしきり雪の恐ろしさについて説明された。



「いくら自分が万全の準備をしても、誰かが横着して立ち往生したらそれでお終いよ」


数日間動けなくなることも、昔はあったらしい。


「そういえば、たまにテレビでやっているな」


「そういうこと」



湖北の雪こえ~。



最大11mって、ウソだろ~。


それでも、地球温暖化で最近はかなり減ってきているらしい。




 水鳥公園の近くで、ねねは”ナビの指示”に従い細い道を右折する。



先ほどまで正面に見えていた ”おにぎりみたいな山” が、今度は左手に見える。

山本山だそうだ。


しばらくすると、道が広くなった。


おめあての小谷城を目指し、クルマ(ラパン)は軽快に駆けてゆく。






デート? は、まだまだ続きます。


ひさまさは、長政と違いたくさん買いましたよ。

ちょうどイベントをしていて、流しそーめんをしていました。


農高のソーセージがマジうまかった、鶏そぼろも夏の料理に最適。


下心はありませんよ!


でも一応、『紳士のたしなみ』として、女子高生にお金を払いました。

かわいい子でした。


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