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長浜ぶらり旅

『長浜の町』を、お楽しみください。

~ 街中散策 ~


 なぜか俺は、ねねに腕をひかれて街を散策することとなった。


まあ、確かに誰かを案内したくなる気持ちもわかる。

北国街道の面影が偲ばれ、なかなか風情のある街並みだ。

古い町屋が時代を経て、今なお残っている。


 長浜城の大手門通りとの交差点がとくに賑わっている。

『札の辻』というらしい。


ここら辺は明治期の建物が残っていて『黒壁スクエアー』と呼ばれている。

いかにも観光客が喜びそうだ。

(たぶん、喜んでもらおうとして古建築を改装して作ったのだろう。)


観光地として整備された箇所も見受けられるが、古いものを大切に残している姿が感じられ好ましい。

船板塀ふないたべい』とか感心してしまった。

琵琶湖で使った船の木材を、壁の腰板に再利用しているのだ。

独特の反りを持ち、船として湖上を活躍していた姿が忍ばれる。




 最近は観光地として、自治体が整備を主導したテーマパークもどきの古い街並みが数多くある。


が、長浜の町は一線を画すようだ。



そう思い、ねねに尋ねた。


「大事にされて残っていた建て物を、本当に丁寧に改装してあるの、造り物じゃないわ」


「確かにそうかもな、よく残っていたね」


「一時期取り壊そうという動きもあったそうよ、でも『町を博物館』にしようと長浜が頑張ったのよ」


「時代の先を読める人たちがいたんだね」


「そういうことね」


ねねさんは、ごきげんだった。




さあ、散策を続けよう!!



 長浜の人は、何というか”もてなし方”がうまい気がする。


「たぶん、お客さんに喜んでもらってこそ商売が成り立つと思っているんだと思うわ」


「なるほど」


「『近江商人の三方よし』。みたいなモノかな? 長浜は、そこまでは商売っ気はないけれどね」


「そうなんだ」




 街中に大きな蔵が散在する。


曳山ひきやま』を収める蔵らしい。


「なんのことだろう?」と案内板を見てみると、

『京都の山鉾』とか『高山にあるからくり人形の山車』と、同じくらい立派な『曳山』の写真が飾ってある。

今は残念ながら大きな扉が閉まっているが、この中に大切に保管されているそうだ。


ねねの受け売りだが、この曳山が春になると町衆の手によって勇躍引き出されるらしい。


『曳山祭り(ひきやままつり)』と言うんだそうだ。


近くにある八幡宮まで山車やまが曳かれ、境内や辻々で『子供歌舞伎』が奉納されるそうだ。

春になると、町じゅう『しゃぎり』というお囃子の笛の音が賑やかに聞こえてくるらしい。



「見てみたいもんだな」


「ぜひ見においでよっ! ただし、平日になるかもしれないからね」


「え?」


「だって、太閤さんのお子さんの誕生を祝う祭だからね。日程は4月13~16日、本日ほんびは15日なの。本来観光目的でやっているんじゃないんだから」


「いや、土日にやればスゴイ人出になるんじゃないの?」

観光地としてみれば、メインの日程を『金・土・日』にあわせるのがむしろ当然だと思う。


「それはそうなんだけれどね~。でも大丈夫!! その日は学校の方がお休みになるから」


「学校が休み?なんで?」


「だって、おめでたいお祭りよ!!」



そう言って笑う、ねねの笑顔がまぶしかった。


「会社だって曳山祭りの当番だったら、休んでいいんだよ」


「え!」


「普段絶対に休まない、仕事の鬼だって休むんだからねっ!」



なるほど、長浜の人は本当に『豊臣秀吉』が好きなんだなぁ~。



 さっきなんか案内看板の豊公園の文字を見て『ゆたか公園』て言ったら、鬼のような形相で

「 『ほうこうえん』だっ! 」って訂正された。

『豊(太閤秀吉)園』なのだそうだ。


なんか納得した。



 アーケード街に立ち並ぶ土産物屋を横目に眺めつつ、肩を寄せて歩いてゆく。

まるで恋人同士がデートしている様で、少しばかり面はゆい。


ねねが俺の袖を掴んでいるんだから仕様がないと、自分に言い訳をしつつ散策を楽しんだ。


『曳山博物館』を横目にアーケードを進む。

曳山を見るのは、後のお楽しみだそうだ。

かわいいらしい噴水がある、感じの良い広場を左に折れる。


 整備された参道の入り口、一風変わった狐のモニュメントが出迎えてくれる。

『お花狐』というらしい。

これにもまた、おもしろいエピソードがあるようだ。


『大通寺』とか言うお寺さんの参道に向かって歩いてゆく。

ねね的には、『ごぼ(う)さん』だそうだ。

(よくわからん!)




 観光地ゆえ人の数は多いが、都会ほどゴミゴミと混雑してはいない。

(都会の観光地は、さながら満員電車のようだからな。)


いろいろな物が売られている。

刀の柄をした傘。

(なぜか、心惹かれるものがある。男の子だもん)


ちりめんのハギレをつかった巾着や小物、扇に草履、お香、お箸etc


 他の観光客に紛れ、店をひやかしていても気持ちが良い。

イヤ、そばにねねが居てくれるからなのかな?



知り合ってまだ小1時間ほどしか経っていないのに、ごく自然に彼女がそばに居てくれる。

それが当然の様に錯覚してしまう。




俺は、彼女に恋をしてしまったのだろうか?

何冊か読んだライトな小説では、こんな風に男女が出会っていた。



親友の◯◯じゃ無いから、

”女の子が空から降ってくるような出会い”なんて夢想してはいないが……。


俺だってかわいい女の子との出会いを求めていたのは、事実(内緒)である。



 一生懸命に勉学に励んで憧れの大学に入った。一応名門である。

自慢じゃないが大学名を出せば、合コンしたら女の子が俺に寄ってくるんじゃないかと思う。


でも、お金持ちの良い所の奴みたいな”いわゆるリア充暮らし”はできないし、したくもない。


俺としては毎日遊び回るつもりもないし、そんなお金もない。

都会暮らしは何かとお金がかかるうえ、実家からの仕送りだってそんなに多くは無い。

次男だし、有名大学とは云え私立なんだから仕方ない。

奨学金だって貰っているし、バイトだってしている。



俺もこの2年で色々と世間を学んだ。

大学3年生ともなると少しは社会や現実が見えてくる。



『一流大学の彼氏』というステータスを求める女や。

男を『お財布代わり』に連れ回そうとする女が、現実に居ることだって知ってしまった。


多分このまま卒業して、一流と呼ばれる良い会社に入るんだろうけれど……。

最終的に、彼女や嫁さんにATM代わりにされてしまうのかと思うと少しばかり悲しくなってしまう。



そんな、つまらないことを思い悩んでいた去年の秋。


「就職活動をするから」と、先輩から格安でバイクを譲ってもらった。

愛車のSR400は、俺に自由の翼を与えてくれた。


関東近郊、そして東北。

色々旅をして、俺はソロツーリングに目覚めた。

バイクを相棒に風の向くまま気の向くまま、各地を巡り自由を満喫した。

卒業して社会に出てしまっては、なかなか味わえないだろう一人旅の楽しさを知った。



のだが……



すぐそばに人が居てくれることに、安らぎを感じるなんて……



~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ 



≪ねね≫



 観光客のかたに、長浜の町のことを知ってもらうのは楽しい!!


大好きな町だから、みんなにも好きになってほしい。



今、私のすぐそばを歩く ”小谷クン”


 名前を尋ねたら、小谷長政こたにながまさなんだって。

小谷城の浅井長政公みたいな名前で、とても親近感をもっちゃった。


遠藤音々(えんどうねね)という名前の私が言うのもたいがいなんだけれど、長浜に縁がありそう……。




(いつもは道やお店を案内するぐらいで我慢しているねねであったが、小谷クンのことを気に入ってしまい別れがたかった。)





~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ 



ー 大通寺 ー


「へぇ~思った以上に立派な門だね」


「この山門は昔の長浜城の門を移築したといわれているわ(真偽は不明だけれど)」

自分が褒められたかのように得意気に語る”ねね”


エッヘンといわんばかりに胸を反らし、小鼻を少し膨らませているさまはとてもかわいい。


(うぅ~いかん、どんな仕草もかわいく見えてしまう)


山門を一礼してくぐり抜け。

境内へと入る。


まずはお手水。


「この池には亀がいるの!」


「はとの餌も売っているわっ!!」



昔は”鳩は平和の象徴”ともてはやされたものらしいが、近年はフン害のせいで餌をやることなど無い。

俺にとって鳩とは、嫌われモノのはずであった。


「ほらっ」


ねねの指差す方に目をやると、小さな子供が鳩に餌をやっていた。

餌をくれる人が現れたからだろうか、たくさんの鳩がわらわらと寄っていく。


母親らしい人も、子供がたくさんの鳩がやってきて喜ぶ姿をみて微笑んでいる。




「ああ、平和だな~。いい雰囲気だ」


鳩が害鳥であると決めつけるのは、人間のエゴでしかない。


人間原理、人間至上主義。効率重視、お金至上主義……。


そんなのは、しょせん”まやかし”なんだな~と、今の俺はおもうのだ。


(いささか雰囲気に酔っている小谷君であった)





あとがき

長浜城の門は残っておりますが、別の門(脇門)です。

ねねさんもまだまだですね。


いやいや、ひさまさも子供時分は間違って覚えておりましたよ。



曳山は、寅さんも見に来たそうです。

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