彦根? なにそれ!!
ひこね?
ああ、『さわちゃん』と『ひこちゃん』が、住んでるところね。
『長浜ものがたり』 歴史探訪、彦根編
俺とねねが知り合って、ずいぶんと月日が経った。
まとまった休みが取れるたびに、俺は長浜を訪れている。
もちろん、ねねに会うためだ。
これは、何度か長浜を訪れたある日のことである。
― 遠藤家 -
「そうだ、彦根城に行きたいな」
遠藤家の居間で新聞を読んでいた俺は、彦根城の記事に目をとめた。
そういえば、彦根は近場なのに行っていない。
「は?」
いつも温厚なねねが、眉を顰めている。
あれ、どうしたのかな?
「だから彦根城」
「長浜市民として、それはありえないわ。
長浜の女の子とのデートで……。それは、東山動物園のボートに乗るような暴挙よ」
いかにも小さい子供に諭すように、教えてくれた。
しかも、カップルが必ず別れるという、曰く付きのスポットと同等だという。
そんなに嫌なのかな?
でもまあいい、いいことを聞けたし。
「デートだと思ってくれるんだ」
「例えよ、たとえ!!」
顔を真っ赤にして、ぶんぶんと手を振り回し慌てて否定しているねね。
「ふふっ」
かわいいではないか。
思わず、にやけてしまうぞ。
「とりあえず、佐和山城と安土城跡でいいわね」
ねねが、気を取り直してそう宣言した。
わざわざ居住まいを正すところに、育ちの良さがにじみ出ている。
あくまでも、『国宝彦根城』を無視したい様子だ。
だけれども、……国宝だぞ国宝。
「国宝の城がいい」
「うっわ~出た。 『にわか城おたく』 」
「え?」
心底いやな顔をするなよ、かわいい顔が台無しだぞ。
俺の戸惑いに気づいたのかねねは代案を出してきた。
「わかったわ、国宝ね。なら、姫路城と松江城ね」
「遠おっ!」
(ねねさん、それは遠すぎますよ)
「国宝だもんね~ぇ」
「近場でいいじゃん!」
「ならば、犬山城。でなければ、あきらめなさい」
「そこを何とか?」
「いやよ、一人で行って。近いから」
「なんでだよ~、いいじゃん近いんだろ」
俺は、ねねとお出かけしたいのに。
「ひとりで本丸まで登った後、彦根城天守閣の姿を見てガッカリすればいいのよ!!」
結局、佐和山城に行くことにした。
佐和山城ハイキングも、それなりに楽しかった。
噂の『三成CM』でも、出てきた佐和山城公園だ、地味に感動した。
遠くに見える『彦根城』が、カッコよかった。
いつか、ねねと行ってみたいものである。
※ ねねの発言は、彦根に限り二世代ぐらい古いです。
『敵を知り己を知れば、百戦危うからず』
と云うわけで、長浜市民も彦根に訪れます(敵情視察)。