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「・・・リリアン、たのむ目を開けてくれ。」
どこからか名前を呼んでいる声が聞こえた気がして目が覚めた。目を開けて周りを見てみると、私室のベットの上だった。
見慣れた天井が見えた時はさっきまでの出来事が夢だったのかと思ったが、なぜか自分の右腕に違和感があることに気付いた。
違和感を確かめようと身じろぎするとすぐ横で人の気配がした。
「リリアン!! 目が覚めたのか! 今すぐに治療師を呼んでくるからな!!」
お兄様の大声にちょっとびっくりしているうちに、お父様と治療師の先生が部屋に入ってきた。
体を起こしてもらい、治療師の先生がいろいろと診察と問診をして、数日体を休めれば大丈夫と診断してくれた。
お兄様が治療師の先生にお礼を言いつつ一緒に部屋から出て行き、お父様と部屋に二人きりになった後、心配そうな顔で言った。
「リリアン。大丈夫かい?心配したよ。二日も目を覚まさなかったんだ。」
「ごめんなさい。」
「責めてるわけじゃないんだよ。ただ、かわいいリリアンに何かあったとき、心配で胸を痛める人がいることを忘れてはいけないよ。」
「はい。これからはきちんと考えて行動することにします。心配させてごめんなさい。」
反省をしながら謝るとお父様は私の頭を撫でながら、いかに屋敷の人たちが心配したか、どれだけあわてたかを話して聞かせてきました。ちょっぴり心が辛くなってきたとき、お母様が私のためにブレンドしてくれた薬草茶を持ってきてくれました。
「さあ、トッド、そこまでにして。まだリリアンは目覚めたばかりなのよ。」
「む、そうか。ケイティ、ありがとう。」
お父様とお母様が何か真剣な顔で言葉を交わしているのを薬草茶を飲みながら見ていると、二人がこちらを同時に見ました。
あんまりにも真剣な眼差しだったので、さらに何かしてしまったかと考えていると、
「リリアン。聞きたいことがある。」
「はい、なんでしょうか?」
「リリアンは聖霊と契約をしたのかい?」
「ええと、今さっき夢の中でシルフィ様とお話をして、お友達にはなりましたが、・・・聖霊?契約?」
「・・・そうか。聖霊の事はきちんと学ばなければな。まずはリリアン、右の手首の内側を見てごらん。」
そう言われてみれば、夢の中でも右手首が熱くなったなと、見てみると風車のように三日月のような物が4つ、円を描くように並んでいて4ヶ所に小さな円がポツポツとある不思議な模様がありました。
「これは聖霊との契約の印と言われている。聖霊に選ばれた者の体のどこかに表れるものだ。
リリアンはどのような方と契約を交わしたんだい?」
「シルフィーナ様です。とても可愛らしい方で、背中から羽が6枚出ていますの。夢かと思っていたので目が覚めてしるしがあったので、うれしいです。」
その時のこと思い出しているとお母さまが頭を撫でてくれた。
いつかお母さまにシルフィを紹介する約束をして、お母さまはお部屋から出て行った。
お母さまと入れ替わるようにハンス兄様が入ってきましたが、あまりの勢いにベットに潜り込みたくなりました。
「リリアーン!!!大丈夫なのか?痛いところは?武骨な男が助けたんだ、どこかおかしいところがあるはずだ!」
「え?ハンス兄様、落ち着いてください。どこもおかしいところはありません。」
「落ち着けるわけないだろう!だって、僕のリリアンが儚くなるところだったんだよ!!」
「本当にごめんなさい、ハンス兄様。もう危ない所には近づきませんわ。反省しています。」
「ソレニ、ワタシがいるんだから、危険な目ナンテアワセナイワ!」
怒り心頭の様子で急に空中に現れたシルフィを見て、ハンス兄様とお父様は固まってしまいました。