ステルス
最強の軍事兵器といえば何だろうか?
「核兵器ッ!」
確かに破壊力は凄い。
一つの都市を一瞬で消滅させ、一瞬で数十万人の人間を殺すことができるのだ。
しかし、その凄すぎる威力のため、実際には使用できず、
抑止力としての機能しか果たさないのである。
「じゃあ、ミサイル?」
いや、そうではない。
現在の技術では撃ち落とすことが可能である。
「まさか、戦闘機?」
そう戦闘機である。
しかし、ただの戦闘機ではない。
「目に見えない」ステルス戦闘機だ。
「本当に見えないの?」
そんなはずもない。
決して透明ということではない。
レーダーで発見できないということだ。
機体の特殊装甲がレーダー電波を吸収するため、
敵は発見できないのだ。
ということは相手国の領海に侵入しても発見されず、
敵戦闘機にスクランブル発進されないのである。
またミサイル攻撃のロックオンのされないのだ。
でも、少し問題がある。
飛行距離が短いことだ。、
しかし、攻撃・防衛には欠かせない戦力なのである。
テレビを見終えた男は一つ頷いた。
その番組は、N国の「軍事」をテーマにした討論番組だった。
「よしッ」
そう言うと、男は部屋の隅で控えていた秘書官を呼んだ。
「ステルス軍隊を作れ」
かの国の最高指導者は側近を集め、言い放った。
参列しているメンバーは誰も顔をそらさずに言った。
「分かりした、将軍様」
反対することはできなかった。
拒否すれば地位を失うだけでは済まない。
突然、行方不明になってしまうのだ。
最高指導者はそれだけ言い、会議室を後にした。
メンバーらは耳を澄ませ、足音が完全に遠ざかったのを確認した。
彼らは緊張から解放され、弛んだ顔を寄せ合った。
「なんとかしろ」
No2の男がメンバーらを見渡した。
彼らは下を向いた。
技術的に無理だと分かっていても、
「できない」とは言えなかった。
新たな技術を確立するにも、実験の予算がなかった。
「分かりました。
N国に潜入しているスパイに使える技術がないか、至急確認させます」
そう発言するのが精一杯で、他に手がないことを全員分かっていた。
一人の若い男が手を上げた。
会議のメンバーではなく、記録係だった。
「N国にはステルス軍隊があります」
メンバーらは怪訝な顔をした。
彼らは、一生懸命にN国の軍備を思い起こした。
しかし、彼らは小首を傾げたままだった。
「私の作戦ならN国を手に入れることができます」
記録係の顔は自信に満ちていた。
「最初に言っておく。
金はないぞ」
No2の男が念を押した。
「大丈夫です。
お金はまったくかかりません」
記録係の男は微笑んだ。
「そんなに凄い兵器ならA国を攻撃しよう」
No5の男が提案した。
「残念ながらA国には効果がありません。
でも、N国にはまず見えません」
記録係は微笑んだ。
3年が経った。
最高指導者は記録係だった男を呼び出した。
「お前のお蔭でN国を手に入れることができた。
お前を国のNo7に任命する」
No7になった男に勲章を授与した。
No7の男は部屋に戻った。
椅子に深々と座り、1年前のN国のA新聞を手に取った。
「憲法第9条、かの国に輸出!」
それが1面のタイトルだった。
かの国が憲法第9条を導入し、軍隊を持たないと宣言したのを絶賛していた。
A新聞は、A国と自国には厳しいが、かの国にはなぜか厳しくない新聞だった。
「最高の呪文だな」
No7となった男は呟いた。
『ケンポウダイキュウジョウ』と唱えると、軍隊はN国では見えなくなるのだ。
もし軍隊だと認めてしまうと、憲法違反で捕まってしまう。
だから同様に、憲法第9条を導入したかの国には軍隊があってはならない。
つまりN国ではかの国の軍隊が消えるのだ。
そして、N国はかの国のステルス軍隊に占領されたのだった。




