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ステルス

作者: さきら天悟
掲載日:2015/07/20

最強の軍事兵器といえば何だろうか?


「核兵器ッ!」


確かに破壊力は凄い。

一つの都市を一瞬で消滅させ、一瞬で数十万人の人間を殺すことができるのだ。

しかし、その凄すぎる威力のため、実際には使用できず、

抑止力としての機能しか果たさないのである。


「じゃあ、ミサイル?」


いや、そうではない。

現在の技術では撃ち落とすことが可能である。


「まさか、戦闘機?」


そう戦闘機である。

しかし、ただの戦闘機ではない。

「目に見えない」ステルス戦闘機だ。


「本当に見えないの?」


そんなはずもない。

決して透明ということではない。

レーダーで発見できないということだ。

機体の特殊装甲がレーダー電波を吸収するため、

敵は発見できないのだ。

ということは相手国の領海に侵入しても発見されず、

敵戦闘機にスクランブル発進されないのである。

またミサイル攻撃のロックオンのされないのだ。

でも、少し問題がある。

飛行距離が短いことだ。、

しかし、攻撃・防衛には欠かせない戦力なのである。


テレビを見終えた男は一つ頷いた。

その番組は、N国の「軍事」をテーマにした討論番組だった。

「よしッ」

そう言うと、男は部屋の隅で控えていた秘書官を呼んだ。






「ステルス軍隊を作れ」

かの国の最高指導者は側近を集め、言い放った。


参列しているメンバーは誰も顔をそらさずに言った。

「分かりした、将軍様」

反対することはできなかった。

拒否すれば地位を失うだけでは済まない。

突然、行方不明になってしまうのだ。


最高指導者はそれだけ言い、会議室を後にした。


メンバーらは耳を澄ませ、足音が完全に遠ざかったのを確認した。

彼らは緊張から解放され、弛んだ顔を寄せ合った。


「なんとかしろ」

No2の男がメンバーらを見渡した。


彼らは下を向いた。

技術的に無理だと分かっていても、

「できない」とは言えなかった。


新たな技術を確立するにも、実験の予算がなかった。


「分かりました。

N国に潜入しているスパイに使える技術がないか、至急確認させます」


そう発言するのが精一杯で、他に手がないことを全員分かっていた。


一人の若い男が手を上げた。

会議のメンバーではなく、記録係だった。


「N国にはステルス軍隊があります」


メンバーらは怪訝な顔をした。

彼らは、一生懸命にN国の軍備を思い起こした。

しかし、彼らは小首を傾げたままだった。


「私の作戦ならN国を手に入れることができます」

記録係の顔は自信に満ちていた。


「最初に言っておく。

金はないぞ」

No2の男が念を押した。


「大丈夫です。

お金はまったくかかりません」

記録係の男は微笑んだ。


「そんなに凄い兵器ならA国を攻撃しよう」

No5の男が提案した。


「残念ながらA国には効果がありません。

でも、N国にはまず見えません」

記録係は微笑んだ。




3年が経った。

最高指導者は記録係だった男を呼び出した。

「お前のお蔭でN国を手に入れることができた。

お前を国のNo7に任命する」


No7になった男に勲章を授与した。


No7の男は部屋に戻った。

椅子に深々と座り、1年前のN国のA新聞を手に取った。


「憲法第9条、かの国に輸出!」


それが1面のタイトルだった。

かの国が憲法第9条を導入し、軍隊を持たないと宣言したのを絶賛していた。

A新聞は、A国と自国には厳しいが、かの国にはなぜか厳しくない新聞だった。


「最高の呪文だな」

No7となった男は呟いた。


『ケンポウダイキュウジョウ』と唱えると、軍隊はN国では見えなくなるのだ。

もし軍隊だと認めてしまうと、憲法違反で捕まってしまう。

だから同様に、憲法第9条を導入したかの国には軍隊があってはならない。

つまりN国ではかの国の軍隊が消えるのだ。


そして、N国はかの国のステルス軍隊に占領されたのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おー、なるほど、という終わり方。憲法どうのの旬のネタですね。起承転結もはっきりしていて短い時間でほっこり楽しめました! [気になる点] 僭越ながら悪い点というか気になった点、最後の一行。“…
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