ココの記憶の断片
「ママ!ひとつ聞いてもいい?」
「どうしたの?」
「あのねっ!私の弟ってどんな感しなのぉー?」
「またその話?結構可愛い子よ」
「そ、そうじゃなくて!名前だよ名前!」
「私が決めてない時に預けちゃったからねぇ....」
「ぶぅーっ。」
「ココはまだ7歳なんだから、そのうち、会えるかもね。」
「うううっ!またそれだぁ〜。」
私はココ。父親と母親。そして、一人の弟がいる。
名前は....父親がレス、母親はリア。
弟の名前は...覚えていない。と言うのも、弟は産まれてすぐ父の姉の家で暮らす事になってしまった為である。
母親に何度も弟の事を聴いたのだが一向に答えてくれない。
「おら!行くぞココ!そんな小さい事ばっか気にしてちゃ騎士にはなれんぞぉ?」
「わ、わかってるもん!今行く!」
「頑張ってね、ココ」
「うんっ!お母さんっ。行ってくるね!」
父は私が生まれる前から想像士として、この街を守っていて、母はそんな父に一目惚れをして、私が産まれた訳なのだが....しかし父より母の方が強いらしい。
ココは父と共に近所の空き地へ行き武具を想成する練習をしている。想成とは想像武具を作る事である。(想像武具は先生が間違って言っていたのが伝染してしまったらしい...。)
「うぅーっ!」
「だめだ。もっと物質や形をはっきりと細かいところまで想像しろ」
「で、きないよぉ....」
ココは泣きながら武具を想成しようと必死に努力している。この時のココは7歳なのだが、この歳で武具を想像するなどそれこそ至難の技である。
「頑張れ!形はできてきている。輪郭をもっとはっきり想像するんだ。」
「もぉっ!できないよぉ!」
とうとう諦めたココは実体化しかけていた武具を手放した。
「そうだなぁ...絶対、次には作れるさ。だから頑張ろ?」
「う、あぅ....」
武具を作れずに投げ出したココを怒ったり、咎めたりせず、ただ娘を励まし、優しく接する父をココはとっても大好きである。だからこそ嬉しい時はうまく言葉が出ないところがココは嫌だった。
「...絶対?」
「あぁ。もちろん。ココは絶対強くなれるし。想成しようとしてる武具も作れるさ。」
「...ありがとっ」
ココの胸には熱いものがこみ上げていた。幼いながら、それほどまでに父親が好きなのだ。
「ねぇ、パパっ」
不意にココは父に問いかけた。
「なんだい?」
「今日もつれてってくれるの?」
少し期待に胸を膨らましながらココは問いかけた。
「どこへ?」
少々意地悪そうに問いかける父にココは
「わかってるでしょ!パパのバカぁっ!パパの騎士団がみたいの!」
「さて問題。パパの騎士団の名前はなんでしょーっか!?」
「むぅーーーーっ!」
意地悪く問いかける父に彼女はこう答えた。
「虚無の十字団っっっっ!!!!!連れてけーーっ!!」
素直に答えたココに父は
「もちろんさ。」と父が答えた瞬間。
「わぁいわぁい!騎士団だぁああああっ!」
ココはとても嬉しいそうにしながら、抑え込もうとするが、浮き立つ気持ちを抑えられず、父と手を繋ぐと「騎士団だぁっ♪騎っ士っ団っだぁっ♪」と声に出し父親は「あんまり面白いところじゃないし、そんな浮かれるなよー?」と言いつつも、あまりに嬉しそうなココにつられて何故か父も嬉しくなる。二人はお互い顔を見合わせながら、虚無の十字団へ向かった。
形は国会議事堂をイメージしていれば良い。
楽しげに内部を覗くココにレスはちょっかいをだす。家で訓練をした後、騎士団に行っていろんなところを巡る。それがいつもの日常だったのだ。
そんな楽しげな日常はまるで藁の家を飛ばすかのように崩れ去った。
それは突然起きた。レスとココ、団員全員に襲ってきたのはまるでダイナマイトのような爆発を基地全体に薙いだような一撃。その一撃でこれまで勇ましく建っていた虚無の十字団の基地は一気に大ダメージを負った。
入口付近で見張りをしていた門番他何十名かはその一撃で重症を負った。幸いレスとココの親子は内部のさらに奥の奥。団員全員を守る部屋である「礼拝堂」にいたため助かった。
「ひっ....。」ココの目の前にあったそれはまるで、地獄絵図。ココには声を出すことすらままならなかった。
そんなココの前に巨大な何かが立っていた。ココはただ壁に背中を押し付け怯えることしかできない。
まさにその何か。「龍」が火炎をはいたその瞬間。何かが飛び込んできた。それは一人の騎士。
「パパ!?パパーーーーーーっ!」そこには...レスが大やけどを負った姿と...ココの泣き叫ぶ声だけがむなしく響いていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
なんでここで挙げたのかは言いませんが、そんなココの記憶の断片です。
ココの記憶はココで止まっていてなんで生きているかなんて自分自身で理解できていない。そんな存在なんです。