模擬戦闘試験
「そろそろ『虚無の十字団・団長』の入場だ。諸君。礼儀を慎みたまえ。」
「「「はい!」」」
生徒は声を揃えて返事をした。虚無の十字団とは、この街にある騎士団の名前で団長はこの街を守る....,勇者みたいなもんだ。
「ここが校庭か。なんだか『決闘場』みたいですね。」
え....団長って女の人だったの!?、という俺の心のツッコミは声に出ることはない。団長と呼ばれるくらいだから鎧でも装備しているのかなと思ったら、彼女の服装はごく普通のセーラー服。一般的に美少女と呼ばれるであろうぐらい端正な顔たち、整った髪。そして大人しそうで、威圧感があり、かつ透き通るような綺麗な声。そして、気迫のある彼女のオーラが俺を支配していた。俺、これからこの人と戦うんだな......。
生徒のほとんどはその美貌に言葉を失っていて、中には「きれい」だの「かっこいい」などの言葉を口にしている。団長は生徒の目の前に立ち一礼する。
「この度は模擬戦闘試験に私を呼ばせていただき、誠にありがとうございます。私は『虚無の十字団・団長・ココ』申します。」
「ありがとうございます団長。さて、諸君らがつけているブレスレットは霊樹の力により想像武具で人体に傷を与える事ができないようになっている。これによって団長様と模擬戦闘を行う事ができる。ブレスレットは全ての攻撃を吸収しているため、一定量ダメージを喰らうと壊れてしまう。このテストは団長と決闘をし、3分間耐える事ができたら合格とする。」
ぇ?えぇ?この試験合格とかあったの!?
「さて、最初はメロだったな。前にでろ。お前は剣道をやっていたからまぁ、10分は保てるよな....?」
「こら先生。私を舐めているのですか?たかが剣道やっている奴なぞ簡単に始末できますよ?」
団長さん....こ、怖いこというなよ.....。
「俺だってこう見えて剣道では毎回全国大会へ進出するレベルです。そう簡単に始末はされませんよ。」
「....ほう。ひ弱そうに見えて威勢はいいな。」
ココはメロに興味を持ったような声でそう言った。
「よし。お前ら。3分やるから、団長とメロから50m離れろ。今から模擬戦闘試験1人目を開始する。気を抜くなよ?メロ。一応ここの卒業生であり、相手は団長だからな。」
「そんなのわかってますってば。」
ただでさえ威圧感で圧倒されているというのに、先生は余計な心配をし過ぎている。
そして先生の合図で決闘が始まる。
「2人とも。準備はいいな?」
「「はいっ」」
団長との間はおよそ10m離れている。互いに武器は生成していない。これが一応ルールなのだ。
「構え。」
先生の合図で互いに武器を想像する。想像するだけで実体化はさせていないのだ。
......あれ?団長....ブレスレットをつけて....いない!?
「始め!」
「貴方なんてこの程度の武器で充分です。」
団長が想像したのは刃渡り20cm程度のダガーナイフ。10mの間合いをわずか1秒たらずで縮め、俺に鋭い一撃を負わす。嗚咽を漏らして俺は吹き飛ぶ。...あれ?これ痛みも衝撃あるんだな。
ブレスレットには相当応えたのだろういくつもの傷がついている。
俺はすかさず武器を生成して反撃しにかかる。
「おぉ。あれで体制を整えまともな武器を生成し、なおも気絶しないとは。貴方なかなかやりますね。」
ココはダガーナイフで俺の普通の剣の攻撃を受け流し、そのまま反撃に差し掛かる。
俺はココの反撃の一突きを紙一重で切り払い、そのまま回るようにして横に切り払う。
「ふふふ。面白くなってきた♪」
ココは俺の切り払いをバックステップでかわし、そのまま前に突撃し、俺の横腹を刺しにいく。
「こんな単純な攻撃、かわせない方がおかしい!」
そう言って俺は横にかわし、ココの足を切りにいく。
「貴方は知っていますか。このダガーは投げるための物だと。そして想像で作った武具は、『手』に限らずあらゆる部位で生成できるということを。」
「....っ!」
まるで俺の攻撃を察したかの様にダガーナイフを顔スレスレ目掛けて投げた。俺の剣の先にあったのは俺の刃を受け流す程度の大きさの木製の盾。そしてその盾は俺が見た時までは存在していなかったということ。
.....正直。油断はしていた。ブレスレットをつけていないことに目がいったり、服はセーラーだったり。団長がこの少女って考えたら俺でも団長になれんじゃないかって思った。
剣はそのまま盾に『受け止められて』いた。本来受け流されていたはずの剣は、盾を受け止めていた。
「いくら団長といえど、俺は.....。」
なぜ盾を受け止めていたか。それは
「諦めない!」
「な....っ!」
想像の力とは『無限大』である、その可能性はきっと、無限大なのではないかと俺は思っている。
この一瞬で俺の剣の刃がノコギリ状に変化し、盾に刃が食い込んでいる。
俺はそのまま盾を抉るように切り裂き、ココの足にほんの少しの切り傷を負わせることができたのだ。
───しかし、気がついたら俺は何故か吹き飛ばされていた。
「ふぅ....流石に今のは私も油断しましたよ。しかし貴方。私が思った以上にやりますね。ホントはどこかの騎士団に入っているのでは?」
「......ぃったぁ...この運動神経と想像力は、親譲りなもんでね。」
ブレスレットを見る。いつ壊れてもおかしくないほど傷が入っている。
確かにブレスレットは想像武具の攻撃から人体を守る効力はあるが、もちろん。現実の傷から人体を守る事はない。吹き飛ばされる衝撃と、すり傷やら攻撃によって、俺の平衡感覚はとてもおかしくなっている。今にも気絶しそうだ。俺の想像武具は既に形をなくし、俺は無防備である。
「貴方をさっき切ったのはこの『妖刀・ムラマサ』。鞘も含め切れ味から刃紋まで。全て現物のままなのです。私のこの武具は本物とは違って少々曰く付きなの。使っている素材をほんのちょっぴりいじっててー♪でも、私はやっぱりマサムネもいいt────」
この団長....刀マニアだ!!!
多分ですけど、今回結構長くなったと思うんですよね。
団長さんの意外な一面!!もぉ登場時からバンバン出す!
ここで少しキャラ紹介をしたいと思います
メロ 2年生
容姿は地味で根暗な感じだけれど、中身は明るく穏やかで人と接するのがうまい。剣道・個人戦で何回も全国大会に出場している。実はクラスでも仲間が多かったり。結構博識で、想像力は人一倍ある。けれど、普通の剣は十字を描く程度の画力である。とにかく負けず嫌いで、負けた時の言い訳はとっても醜い。使用武器は『剣』。運動神経は比較的高いのだが、体力がない為、どうしても短期戦になってしまう。
メリー 2年生
容姿は、とっても可愛い女の子。メロの幼なじみでとても明るく活発な少女。しかし頭が悪く、知識はない。画力は『現代のピカソ』と言われるほどの逸材である。想像力は普通だが、弓と剣を間違えてしまうほど知識がない為、武器をまともにイメージすることができない。使用武器は一応剣らしいが『弓』である。運動神経はメロより体力がある程度で割と普通。
カイト 2年生
容姿は、太った感じの男の子。メロの同級生の友達。よく絡んでくるが、いいヤツである。さっぱりとした性格で、人当たりが良い。画力はムンクの叫びを模写して本物と見分けがつかなくなるほど。しかし、想像力が乏しく、武器を実体化させる事ができない。しかし彼は体格通りハンマーが使いたいらしい。運動神経は学校内では中の下らしい。体力があるので、メロとは逆に長期戦で彼の本質は現れるだろう。
ココ 虚無の十字団・団長
容姿は、本編に書いた通りの美少女である。性格は、比較的大人しいのだが、とある話題に触れると一変。凄まじいマシンガントークを、連発する。メロは知らないが実は何年か前に会った事があるらしい。刀について物凄く詳しく、そして何より大好きなのである。可愛いところがあり、意外にも猫が好きである(意外でもない)。使用武器は不明。運動神経が人並み外れている。団長だから当然だ。え?服も想像なの!?