第七話:生還少年
洸騎「・・・随分と放置してくれたな!刧霊炎破!!」
ツアンサ「ギャァアアアア!!」
薄暗い異様な雰囲気に包まれた部屋。
「どうやら、パフォメットは彼等に滅されたようです。」
電話相手から伝えられた事を口答で伝える。覆面の者。
「……そうか、パフォメットは滅されたか。で、向かった彼と彼女は無事なのかね?」
感傷気に滅されたかと言う覆面の者。そして、彼と彼女は恐らく向かったであろう洸騎と澪の事だろう。
「えぇ、神乃矢洸騎と神乃澪の内、神乃澪は外傷無し、神乃矢洸騎は脇腹及び両足を銃弾が撃ち抜いたらしく出血多量で重体の様ですね」
そう、淡々と伝える者には、心配と言う様子が微塵も感じられない。
「……パフォメットは銃火器は扱わない筈だが何故、彼は洸騎は重体なのだ」
パフォメットを見た訳でも無いのに扱わない筈だが、と断言し問い掛ける覆面。
「……どうやら人形遊びの罠に神乃澪が掛かり、彼女の武器である銀狼が彼を撃ち抜いたらしい。そうです」
電話相手は一体何故、澪が罠に掛かり洸騎を撃ち抜いた事を知っているのだろうか?
「……そうか了解した。重鎮共には」
「神乃矢洸騎は療養期間の為、戦闘は無理」
病院には
「神乃矢洸騎を最優先で療養させろと伝えておけ。私は少し出る」
「……御意」
そう控える覆面の者に命じ大総統は、異様な部屋を後にした。
手術中のランプが点灯する中、澪は通路の椅子で待っていた。
「………洸騎」
手術が成功するかは五分五分だと、医者に言われた時は一瞬世界が止まった気がした。
(成功するかは五分五分。失敗したら洸騎は……。)
そう思うと恐怖が再び蝕んでくる。身体が震えるのが止まらない。失敗したら洸騎に待つのは死だけだ。
あの声が永遠に聴けなくなる。
あの私を優しく微笑んで見てくれる顔を見れなくなる。
お願い神様、洸騎を連れて逝かないで。と恐怖に震えながら心の中で澪は祈るのだった。
パフォメットを撃破し直ぐに、私は医療部署に洸騎が重体だと連絡した。
「重体の要因は、霊魔からの攻撃ですか?其とも別の要因ですか」
「………っ!!」
連絡して、数秒後に医療部署の対応班の人達が駆け付け洸騎を担架に乗せ運んでいく。
そんな中、重体の要因を聞かれた澪は正直に答えた。
……パフォメットに操られた私が、神乃矢洸騎の脇腹を両足を銀狼で撃ち抜いたと……
「了解しました。喩え故意にじゃないにしろ、神乃矢洸騎を撃ち抜いた事は中央司令部にお伝えします」
そう医療対応班の者は澪に淡々と告げた。
中央司令部……其所は私と洸騎、特級滅霊士すら立ち入りは許されない場所。
「(私、滅霊士、辞めさせられちゃうのかな。)」
味方を撃ち抜く何て、言語道断。辞めさせられる可能性は十分にある。
「私は洸騎と別れたくないよ……」
そう、寂しく呟く澪に
「じゃあ、病院まで一緒に向かいましょうか」
「………えっ」
と、先程の対応班の者が澪に言うのだった。
ピッピッピッピッ……
無機質な電子音が手術室に響き渡る。
その心電図に生きる証を、鼓動させるは手術台で麻酔を打たれ眠る神乃矢洸騎の姿があった。
「……メス」
緊迫した空気が手術室を包む中、メスを渡された医者が洸騎の脇腹を切開し銃弾を探す。
何故、治癒術を使わないのか。其は治癒術が効力を発揮するのは負傷後5分いないであり、以降は治癒術を幾ら使っても発揮されないのだ。
「体内の……銃弾摘出完了」
そう男が言い、
ピリピリと緊迫していた雰囲気が徐々に和らいだ。
「後は裁縫するだけだ」
術式で切開した脇腹を縫い切開を閉じ6時間30分の手術は終了した。
ガーと手術中のランプが消え、医師が通路に出てきた。
「洸騎はっ!!先生、神乃矢洸騎、洸騎の手術は成功しましたよね!!」
澪は、先生が来るなり直ぐに駆け寄り問う。その姿は洸騎を失うのは認めない。と自分に言い聞かせてる様にも喪う恐怖に怯えてる様にも見えた。
「……安心して下さい。神乃矢洸騎の手術は無事成功したよ。彼が目が覚めるまで一緒に付き添ってあげると良いよ」
そんな心中を読み取ったのか先生は、穏やかに笑み澪に伝えるのだった。
「………ううっ」
うっすらと徐々にゆっくりと目蓋が開いていき、深紅の瞳と銀の瞳を覗かせる。
「……此所は」
視界が靄に霞んで良く見えないが、心電図が洸騎の瞳に映る。其と鼻を突く薬品の匂い。病院だと理解するのにそう時間は掛からなかった。
「……どうやら、生きていられたみたいだな」
俺も中々しぶといね。と洸騎は苦笑いしつつ、違和感を感じた。
「あれ……腕が動かせねぇな。どうして…」
洸騎は腕が動かせない事に気付き、自分の腕に視線を送っていく。
「あっ………澪、ありがとな」
洸騎は自分の手を澪が握っていてくれたのだと気付き、微笑する。
俺が目を覚ますの、録に寝ないで待っていたんだろうな。目に浮かぶ隈が、その証拠だ。
「……ずっと、俺に付き添ってくれたんだな」
そう感じた洸騎の心は穏やかに、ただ穏やかに目の前で眠る澪を見詰め心の中で、
(……澪、ありがとう)
そう呟き再び穏やかな眠りに意識を飛ばすのだった。