表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
FastStage:滅霊士  作者: ツアンサ
第壱章:滅霊士
2/8

第弐話:神乃矢洸騎:神乃澪

「ちっ…酷いな」


突入して直ぐに洸騎は現状を見て呟いた。


高層ビル内部は外側より酷かった。


瘴気の濃度が極めて高くビル内部を捜査するにも、瘴気に視界が激しく制限され、苦しい捜査なのが現状なのだ。


「瘴気防御を発動しないと耐えられないわね」


滅霊士が突入し普通に活動出来るのは、身体に宿る退霊力を身体に纏わせる。霊纏で瘴気の影響を受けない様に出来るからだ。


「……聖なる空気よ。息吹きよ。害なる瘴気を祓え!!聖気解放(せいきかいほう)


印を結び高速詠唱した洸騎の陰陽術が発動する。


洸騎の手から眩い光が放たれ、100mの範囲の瘴気を消失させる。


「此で少しは捜査しやすくなる筈だ」

瘴気が消失した事で、ビル内部の状況を、より確認する事が出来た。


「流石は洸騎だね。さて、生存者が居ないか調べないとね」


そう言って小型端末の電源を、ピッと入れ起動させる。

その小型端末は人命器と呼ばれ生存者が居る場合、丸が点滅し教えてくれる優れ物なのだ。


「洸騎っ!!生存者が生存者が居るよ」


澪が驚いた様子で洸騎に伝える。


「あぁ、この奥の……くっ」


人命器を覗いていた洸騎が顔を歪める。


「どうしたの洸騎!!」


澪も洸騎の様子に心配の声を掛けるが、直ぐに歪めた理由は分かった。


「……瘴気が、また漂ったわね」


聖気解放によって消失していた筈の瘴気が、再び漂い始めたのだ。


「……もう一度、聖気解放を発動すれば消失させれる」


そう洸騎は何事も無い様に言うが、瘴気消失の術は身体への負担も大きい術なのだ。多用すれば倒れてしまう可能性が大きい。


「無理しないで大丈夫。生存者は、奥の角の小部屋に反応が有ったから」


私の記憶力に違いはないよ。

そう力強く言う澪に、洸騎も


「分かった。小部屋に向かおう」


そう言って軽く笑むと、奥の角の小部屋に向かい歩き出した。


ギイィィと扉を開き

洸騎と澪が辿り着いた小部屋は、スコップやら草刈り鎌等が置かれた物置小屋のようだ。


「此処だな滅霊士・神乃矢洸騎(かみのやこうき)だ。もう大丈夫だから出てきてくれ」


「滅霊士・神乃澪(かみのぜろ)もう大丈夫だからね。安心して出てきて」


安心させる様に生存者に繰り返し呼び掛ける洸騎と澪。


「……神乃矢洸騎。滅霊士…神乃澪」


そう、ボソッボソッと呟きながら社員服を着た35歳位の女性が隅から歩いて来る。


「……そう、神乃矢洸騎だ。大丈夫だからな」


女性は余程怖かったのか。顔色が白に近く足取りも覚束無い。


「助けに来てくれたんだね…キャッ!?」


そして女性は何かに足を取られ転倒してしまう。

しかも、どうやら足を挫いてしまった様だ。


「大丈夫か!?立てるか」

直ぐに洸騎が駆け寄り女性に手を伸ばす。


「……ありがとう神乃矢洸騎」


そして女性が洸騎の手を握り…


グンッ!!


「……なっ!?」


立たそうとした洸騎の手を、引っ張り転倒させた。


「……ぐあああ!!」


しかも女性の洸騎の手を握る手が、鋭利な手に変わり爪を洸騎の手首に食い込ませてきた。


「ぐぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!!」


手首に食い込む爪は、肉を抉り鮮血を噴き出させ更なる激痛が、悲鳴を上げる洸騎を襲う。


「…っ!!洸騎どうしたの!!」


洸騎の悲鳴に、澪は問いながら洸騎の側まで駆けて行く。


「ぐっ…離しやがれっ!!」


激痛に耐え反対の自由な手に握りしめ、退霊力を込めた。


神乃矢霊符(かみのやれいふ)を、自分の反対の手首を抉る手に押し当てる。


「ぎうぇぇええええっ!!」


霊符を押し当てられ女性は、人間とは思えない奇声を発し洸騎の手を解放する。

「うぐっ…随分と抉りやがって」


解放されると同時に、神乃矢霊符を女性に複数投げ放ち距離を取る洸騎。



「洸騎っ!?…酷い、左腕の肉を抉られるなんて直ぐに回復しないと」


澪は距離を取る洸騎の左腕の手首が、酷く傷を負わされてる事に、直ぐに気付き回復させようと術を詠唱する。


「ざぜねぇぇえええ!!死ね滅霊士!!」


だが、凶変した女性が一気に駆け寄り澪に鋭利な爪を振り降ろす。


「……っ!!」


澪は咄嗟に飛び退き、振り降ろされた爪を避け、気付いた。

(……あの爪に付着してる真新しい鮮血。洸騎の手首に負わされた傷…)

澪の頭の中で一説が浮かび上がった。


其を問うべく女を睨み付けようとしたが、既に女は洸騎に向かっていた。


「洸騎ーっ!!」

澪が叫んだ。


「……っ!!聖なる加護よ。我が魂を邪なる者から守りたまえ!!」


叫び声で女が向かってる事に気付き、高速詠唱する洸騎。


「無駄だ死ねぇぇえええ!!神乃矢洸騎ー!!」


間に合わせぬと女が跳躍し凶悪な爪を、洸騎に振り降ろした。


バチンッ!!


何かを弾き返した音が響き渡る。そして…


「ぎぃいいい!!」


女が悔しげな表情で弾き返された。其が意味するのは一つだけ…


「あの術は…洸騎ー!!」


洸騎の対霊魔結界術が間に合ったのだ。

黄金色に輝き浮かぶ神乃矢霊符が洸騎を囲んで展開し守っていた。


霊魔拒界(れいまきょかい)発動させてもらったぜ」


結界の先には不敵に笑う洸騎が立っていた。


「ちぃいいい…っ!!」


洸騎を睨み付けていた女だが、その場を飛び退く。

瞬間、閃光を放ちながら爆裂する床。


「貴女の爪の血は、洸騎が負わされた傷の血なのか。教えなさい!!」


ジャコッ!!と再装填し銀に輝くライフルを構えた澪が、女を睨み付け問い掛けた。

その澪の様子に女は、ニタァ〜と不気味に笑い答えた。


「あぁ、まんまと生存者だと騙され信じやがった。餓鬼の手首を抉った血」


ズガァァン!!


女の言葉は続かなかった。何故なら…


「この霊貫弾で貫かれた痛みはどう?くそ霊魔!!」


銀に輝くライフルが裁きの火を噴き、放たれし銀の銃弾が女の腕を貫いたからである。


「ぎゃああああ…っ!!死ね死なせてやる。貴様ら纏めて死なせてやるうぅぅ!!」


女の顔が、激痛に歪み澪と洸騎を射殺さんばかりの視線で睨み付けた……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ