第壱話:滅霊士
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ガタンゴトンガタンゴトン…何処までも続く線路を走る。電車に穏やかに揺られ少年と少女は向かって行く。
「おやおや彼女と旅行かい」
そんな少年と少女に話し掛けてきたのは、朗らかとした表情のお婆さんだった。
「……ふぇ…っ!!彼女って澪が彼女だなんて…っ!!」
「……えっ!!私が私が洸騎の彼女なんてーもう、お婆さんたらっ!!」
黒髪の少年。名は洸騎と言うらしい子は、あわあわと赤面し、
もう一人の少女、澪と言うらしい子は、嬉しそうに私の背を叩いてくれたよ。
お婆さんは、嬉しそうに交互に二人を見つめて――
「洸騎君と言ったね!!恋愛は少年がペースを取るんだよ。初心なのも可愛いがね」
最初に、洸騎にとっての爆弾を投下した。しかも爆発寸前の爆弾である。
「〜〜っっ!!」
プシュ〜〜頭から煙を噴き上げ、顔を真っ赤に染め洸騎は座席にKOされた。
「次は嬢ちゃんだね!!」
そして、色恋話に真っ赤に燃えたお婆さんの目が、
う〜んとダウンする洸騎に大丈夫と声を掛ける澪に向いた。
「澪と言ったね!!彼、洸騎君は間違いなく奥手の初心君だ。一気に攻めて落とせば、彼は君にモテモテになる筈よ!!頑張ってね」
お婆さんは、怒濤の勢いで少女、澪に言い切ると下車駅に着いたのか降りて行った。
「……(ありがとう名も知らないお婆さん。私、必ず洸騎を落としてみせるっ!!)」
と洸騎とは全く正反対に燃えているのだった。
ねぇ……騎…起き……洸騎
「……(誰だろう俺を呼んでる)……」
微睡む洸騎に呼び掛けて来る声。その声は徐々に大きくなっていく。
……きて…起きて…洸騎、起きてー!!
「うわぁぁぁ…っ!!耳元で叫ぶなよ。澪」
そして洸騎は眼を覚ました。耳が妙に、じんじんするのは気のせいでは無いだろう。
「ごめんーでも、そろそろ着くよ。私達の目的地」
そう言って流れ去って行く光景を目に焼き付けながら澪は言う。
「……そうだな俺と澪の目的地。常闇町にな」
そう目に映る明るい草原を瞳に焼き付けると、二人を乗せた電車が停車した。
「……相変わらず暗い町だぜ」
そう呆れ顔で呟く洸騎。
「ははっ…何時も雲に覆われてるからね〜」
日が差すのは稀だったからね。苦笑いしつつ返す澪。
お互い呆れ顔と苦笑いしつつも、目的の建物まで歩き出すのだった。
暫し歩き続けた洸騎と澪だったが、一軒の建物に入って行った。その建物は
【滅霊庁】
霊魔に対応出来る唯一の存在である。滅霊士達が集う建物である。
「……あぁ〜神乃矢洸騎〜と神乃澪〜久しぶり〜」
そう少年、神乃矢洸騎と神乃澪を間延びした声で呼ぶ女性。
「久しぶりだな。きだるさん」
「…相変わらず気怠そうだね。久しぶり、きだるさん」
淡々と返す洸騎と再び苦笑いしながら返す澪。
二者二色の返事を返された女性きだるさん事、本名。瞬気紅梅
《しゅんきこうか》
「しょうがないじゃないのー気怠いんだから〜」
洸騎と澪に気怠そうに返すのだった。
そんな中、きだるさんが手に取った電話で空気は一変した。
掛かってきた一通の着信。
「はぁ〜い――対策部署ですけど〜」
掛けてきた相手に対応するのも、何時も通りに、気怠そうな間延びした声で対応する。きだるさん。
掛けてきた相手は間延びした声に、真面目に聞いてくれ!!と言っていたが。
「はいはい〜分かりました〜派遣しますね。
二人が向かうから、頑張って下さいねぇ〜」
あくまでも、きだるさんは最後まで、話し方を変えずに対応するのだった。
「って訳で〜霊魔が出たらしいから〜二人で軽く滅して来てねぇ〜」
私は気怠いから戦えないんで〜
と洸騎と澪に言う。
きだるさんだったが……
「…既に向かってたわ〜早い事早い事〜」
既に洸騎と澪の姿は滅霊庁から去っていたのだった。
霊魔出現の報告を受け、向かった澪と洸騎の瞳に映ったのは異様だった。
その高層ビルは異様。その言葉しか考えられない程に異様だった。禍々しい瘴気が、高層ビル全体を覆う様に発生しているのだ
「警戒ご苦労だ。後は俺と澪に任せな」
ビルの周りで、警戒体制を取っていた滅霊士に任せなと言う洸騎。
「……はっ!特級滅霊士、神乃矢洸騎様と神乃澪様にご武運が有らん事を!!」
そう敬礼し下がって行く滅霊士を見届けて、二人は高層ビルに突入した。
「……キャハハハハ滅霊士、遊んであげなよ。僕の傀儡達。キャハハハハ」
高層ビルの最上階に、少女の笑い声が響くのだった。