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必殺断罪人  作者: 高柳 総一郎
蒐集不要
110/124

蒐集不要(Bパート)






 神父イオは天井を見上げていた。

 普段であれば寝転がって聖書を頭に被せて寝ているか、不在にしているかどちらかの彼だが、今日は珍しく立ち上がって、目を見開いて天井を見上げている。ウェーブがかった肩までかかる髪をかきあげながら、何かの間違いではないかと端正な顔立ちの中の目を必死に細める。結果は変わらない。

「おい、勘弁してくれよ……なんでェありゃあ。気づかなかったぜ」

 彼の見つめるその先では、なんと天井に穴が開き、そこから陽の光が差しているのであった。今は天気が良いので一向にかまわないが、これで雨でも降れば台無しである。そもそも、あんな穴が開き始めるようでは、他のところもあちこちガタが来ているに違いない。

「いくらかかるんだ、大工ってェのは……しかし金ねェしなあ……」

「神父さん、どうしたんですか?」

 そこに入ってきたのは、アクセサリー屋の少女フィリュネと、職人のソニアであった。二人は早めに店じまいして、グダグダとくだを巻きに、教会へ暇つぶしにやってきたのだ。

「なんだ、腰でも痛むのか? たまには女遊びもほどほどにしておくんだな」

 実に中年臭い年季の入ったジョークを飛ばすも、イオの興味を天井からそらすことはできなかった。フィリュネとソニアはお互いに顔を見合わせてから、イオと同じように天井を見上げる。穴から抜けるような青空が見え、鳥が勢い良く穴を横切った。

「冗談じゃねェよ。いくらなんでもこれじゃ、ミサの時不便だ。見栄えも良くねェし……何より神がお喜びにならねェ」

「直せばいいじゃないですか」

「金がねェんだよ。断罪の依頼でもありゃ、別だろうけどよ」

 ソニアは天井を見上げたまま、作りおきの紙巻たばこを取り出し、咥えた。

「いっそのこと、天井全部を壊して『青空教会』にでもしたらどうだ? ウケるかもしれんぜ」

 冗談じゃない、とイオはため息をつきながら、どっかとベンチに座り込んだ。一見普通の一般人のようであるが、彼らには裏の顔がある。断罪人。人々から復讐を請け負い、人殺しで金を稼ぐ裏稼業である。だがそうした復讐代行というような仕事で稼ぐ金も、生きるための出費で消える。加えて、こうした突然の出費にはなかなか対応できない。

「なあ、金貸してくれねェか。いやちょっとでいいんだよ。金貨二枚もありゃ、とりあえず穴は塞げるだろうからよ」

「嫌ですよ。私だってそんな余裕ありませんし。あったとしても、本当にお金をそれに使うかどうかわからないじゃないですか。大体、私知ってるんですからね! 一昨日、ソニアさんと色街に行ったでしょう。しかも朝帰り! なんかちょっと、いい匂いがしたから分かるんですよ。そのお金を回せば穴の一つや二つ塞げたはずでしょう? 自業自得じゃないですか」

 そう言われてはぐうの音も出ない。思えばこの教会も、前任の神父から譲り受けてずいぶん経つ。その前任の時代からボロかったのだから、今のボロさも推して図るべしだ。よく倒壊しなかったものだと感心するほどである。

「ま、諦めてミサの時寄付でも募れよ。さすがにこのままじゃ教会が壊れるとか何とか言いくるめりゃ、なんとかなるだろう」

 ソニアは若干面白がって言うが、当の本人は全くそんな気分にはなれない。なにせ神父にとって、教会はまさしく職場、役者で言うステージなのだ。そんな教会自体がボロければ、いずれ神を信じるものもその気を無くすだろう。由々しき事態だ。そうなれば間違いなく、イオは神父として食っていけなくなる!

「いつになるんだよ、そんなもん! 教会が壊れるまでに集まるかどうかも分からねェ。俺は嫌だぜェ、神父やめるのは」

「後は、ヒモになるとかですかね?」

「あのな、嬢ちゃん。ヒモってのは結構神経を使うもんなんだ。ぼーっとしてりゃ良いってもんじゃ……」

 その時であった。懺悔室へと向かう通路を隔てるカーテンが、俄に揺れだした。わずかながら足音も。誰かが懺悔しに来たのだ。

「……こうなりゃ、神より先に人に頼むしかねェ」

 カソックコートの襟をただし、イオはいつもより神父めいて精悍な顔つきを作ると、きびきびと懺悔室へと入った。中は薄暗く、相手の顔は見えづらい。こうすることで、懺悔するもののプライバシーを保つのだ。この中だからこそ話せることもある。自らの罪の告白や、内に抱えた想い、そして──恨みを。

「迷える子羊よ、何でも懺悔なさい。神はすべてをお許しになるでしょう」

 イオは大げさな舞台役者のように、いつもよりはきはきとお決まりのセリフを述べた。相手はどうやら男のようであった。

「神父様。私の告白をどうかお聞き届け下され」

「なんなりと」

「……実は私は、人を殺すよう頼まれたのだ」

 イオは何も言わなかった。いちいち台詞につっこみを入れるのも野暮と言うものだ。

「しかし、殺しには厳しい条件が」

「条件」

「ええ。『断罪人』。イヴァンにはそういう稼業があると。……そして、そういう稼業を生業にしている連中が、この教会にいると、そう伝え聞いた」

 イオは懺悔室のカーテンをわずかにあけると、ソニアとフィリュネに目配せをした。異常事態発生だ。フィリュネは聖堂の扉を締め、ソニアは裏口からそろりと足音を立てずに懺悔室へと滑り込み──男を羽交い締めにした! 手には、よく研いで鈍く光る折りたたみ式かみそりが、男の喉笛のすぐ上へと突きつけられている。

「ソニアよう。とりあえず、明るいとこに連れ出してくれ」

 彼は頷くと、男を羽交い締めにしたまま聖堂へと引きずり、男の尻を蹴った。男は何の抵抗もせぬ。それどころか、這いまわるようにソニアたちへ向き直ると、そのまま額を床にこすりつけたではないか!

「何卒……何卒、ご容赦の程を! け、決して他意があったわけでは無い! 私は、帝国貴族ナギト家家中、正騎士……キース・ガウェインと言う者!」

 男はそう言うが、とても騎士には見えなかった。麻でできているのだろう、粗末な服。使い込まれた革のブーツは底が薄く剥げかけだ。おまけに彼自身の顔が、伸び放題の赤毛と髭で隠れているというさまだ。帯びた剣も、古ぼけた鞘を見るにあまり良い物ではなかろう。

「き、貴殿らが噂のだんざ……」

「なんです」

 懺悔室からゆらりと現れた影がひとつ。憲兵団の白いジャケットを羽織る、寝ぐせだらけの男──ドモンがあくびをしながら突然出てきたのだ。

「どうして入り口を閉めてんですか。懺悔室から出るなんて気分良くないですよ」

 キースは新手に身を固め、なおも額を床に擦り付けたままだ。ドモンは冷酷にそれを見下ろすと、腰に帯びた長剣をすらりと抜き払い、キースの首後ろにぴたりと刃をつけた。刃を引けば、男の首と体に線が引かれることだろう。振り下ろせばまっぷたつだ。キースはドモンの一瞬の剣気と殺意を感じ取り、怖気だった。

「で……僕らが何ですって?」

「お、お頼み申し上げる! 何卒、何卒我らが家中の願いをだ、断罪人に!」

 ドモンは刃をなおも引かなかった。イオもソニアも、ただただ彼を囲み、冷たく見下ろすのみだ。フィリュネは、少しだけ回りの顔色を伺ってから、口を開いた。

「あの……ともかくいろいろ理由を聞きませんか? 何かあるみたいですし……」

 ドモンはじろりと視線を向けたが、ようやく刃を当てるのをやめると、剣を納めた。だがその視線はなおも油断なくキースの背中を見つめている。

「誰から聞いたんでェ」

 イオが最も聞きたかったのはそれだった。断罪人の事自体は、都市伝説めいたものではあるが、イヴァンの一般市民も知っている。しかもそれは、過ぎ去った過去の事件だ。悪いことをしたら、悪魔に食い殺される、というような児戯じみた伝説でしか無い。もちろん、裏の世界──それこそ最もこの世の仕組みの闇に近い人々──にとってみれば、存在を確信しているということもあろうが……それでも正体に迫る事はできないはずなのだ。なにせ、依頼人にもわからないように、相手を確実に葬る事こそ、断罪人の稼業なのだから。

「言えねェかい。言えねェなら構わねェ。……俺は神父だからよ。神に祈るのが仕事だ。あんたが神を信じているかは分からねェが……祈りたくなるほど痛めつけてやってもいいんだぜ。安心しろよ、墓なら教会の裏に腐るほどあるからよ」

 そう言うと、首に下げていた黄金のロザリオの持ち手を俄に捻った。ぜんまい仕掛けの音が鳴る。一回。二回。

「ヒッ!」

 情けない声を漏らすキースを哀れに思ったのか、フィリュネは神父をけん制するように声をあげる。

「ちょっと神父さん!」

「黙ってろよ、嬢ちゃん。俺たちゃ秘密厳守なんだぜ。穴ははえェとこ塞いどかないと……うちの天井みたいになりやがる」

 イオは少し楽しげな雰囲気すら漂わせながら言った。当然フィリュネはそんな気分になれず、パートナーたるソニアの顔を見る。サングラスに覆われた顔からは表情を伺うのは難しかったが、彼は咥えていたたばこをとり、哀れ少し震えだしさえしたキースの側に屈んだ。

「……俺達の事を言ってたのは、タッパのあるばあさんじゃ無かったかい」

 ドモンが、イオが、フィリュネが、まるで電流を浴びせられたかのようにソニアを見た。フィリュネはソニアと共にその老婆と出会い、イヴァンを目指した。そして、ドモンとイオは、その老婆の事を知っている。三年前に命を落としたはずの、断罪人の一人。しかしみんな、それ以上は反応しない。今はキースの反応が全てだ。

「そ、そ、その通りだ! 頬に大きなキズの有る……名前は教えてくれなかったが、とにかく貴殿らの事を教えてくれたのだ! ただ、自分の事は言うなと……」

 イオはドモンに目配せした。間違いない。頬に大きなキズの有るタッパのある老婆など、そう何人もいない。彼らの脳裏に浮かんだのはただ一人。かつてイヴァンに数十人存在した、断罪人の元締めに間違いない。三年前の一斉捜査で傷を負い姿を消したことから、死んだと思われていた。

「生きてやがったんだ、あのババア」

「しぶといですねえ、元締めも……というかソニアさん。元締めの紹介があるんなら、言えばよかったじゃないですか」

 口ではソニアにそういうものの、ドモンは彼が何故言わなかったのか既に把握していた。何しろあの元締めときたら、ここぞという時以外は絶対に姿を見せようとしないのだ。ソニア達を断罪人に引き込む口を利いたとしても、自分の事は極力黙っているように仕向けたに違いない。

「悪いな。……とにかく、旦那。ネタ元は間違いない。話を聞いてやろうじゃないか」

「ほ、本当か!」

 キースは今度はひっくり返るように顔を上げる。その目からは髭と赤髪で見づらいが、涙すら流しているのだった。

「こ、故郷を出て既に三月……食うものも食わず、この教会の事を知ってからは一心不乱に旅を続けたかいがあったという物!」

「……ナギト領ですよね? いくらなんでも一月歩きゃ、イヴァンにつくんじゃないですか?」

 ドモンはすっかりため息混じりにベンチに座り込みながら言った。

「実はわたしは方向音痴でな。件の老婆にも、迷いに迷ってようやく……ともかく、貴殿らにどうか殺しを願いたい。……家中一同の願いだ。ナギト家の汚点が流出する前に、どうしても……二人の女を殺さねばならないのだ」







「お嬢様、先ほどの娘ですが……お気に召しましたので」

 人の行き交う大通りを、シルヴィアは杖をつきながら歩く。それにぴったりと影のように追いかけるのは従者にして女騎士、ロゼ。シルヴィアは振り向きもしない。彼女は目を病んでおり、奇跡的に視力は残っているが、光に過敏なため昼間はほとんど目を開けることが出来ない。だが杖をつけばこうして外を歩くことはたやすいし、何より彼女の感覚は鋭敏だ。近くに誰がいるか、気配や声、息遣いなどといったもので感じ取ることができる。要は、話をするため他人に視線を合わせる事を必要としないのだ。

「ええ、とても。当たり前のことではないかしら。私はあなたを信用しています。そのあなたが綺麗な色だと言う。これ以上何か必要があって?」

 身震いがした。ロゼには、シルヴィアに仕える以外に何も無い。何が自分の首を絞めるか分からない。主人には、そうした得体の知れぬ闇のようなものがある。その闇を、ロゼは美しいものだと考えていた。自分の世界を救うに足る闇だと。自分を理解してくれる存在だと。そんな彼女から見捨てられると考えるのは、ロゼにとってまるで身を切られるような思いであった。

「……過ぎた口を申しました。お許しを」

 ロゼの謝罪に、シルヴィアは口元で微笑んでみせた。

「いいのですよ、ロゼ。しばらく、ここに滞在することになりそうね。宿をとりましょう。そうしたら、二人でお散歩しましょう? きっと素敵な出会いが待っているわ」

 石畳を鳴らしながら、人混みをまるで意に介さず、シルヴィアは進んでゆく。彼女を見て、誰が目が見えぬと思うだろう? しかし、イヴァンは大都市である。そこに住む人間たちは様々で、ひとくくりに善人だけしかいないとは言い切れぬ。目の見えぬであろう少女に、悪さをしようとする者も少なからずいるのだった。

「いってえ!」

 シルヴィアの側で、大柄な男が突然転げまわった。それを見て、大柄な男の連れ二人──小柄な男と不細工な女──が大げさな声をあげる。

「ああっ! ちょっと兄さん、大丈夫なの!?」

「大変だぜ! 兄貴、足が!」

「おおおーッ! 折れちまったッ! いてえよお~!」

 何たる古典的な芝居か! しかし、回りの人々は我関せずと言った様子で、足早に通り過ぎてゆく! この三人組は、こうした恐喝を生業にしているならず者なのだ! うまい具合に憲兵官吏のいない時間帯を狙って、こうしたこすずるい悪事を繰り返しているのだ!

「おう! てめえ杖が兄貴に当たったんだよォ! それで兄貴が転んじまって……どう落とし前つけてくれるんだ? エエッ!?」

 男が濁った鳶色の目を剥きながら、つばを飛ばした!

「そうよお。あたしも兄さんが杖をぶつけられるのを見たのよ!」

 謂れ無き非難を浴びるシルヴィアであったが、意外にも彼女は冷静であった。それどころか、困ったように口元で微笑んでみせさえしたのである。

「あらあら……困りましたわ。ともかく皆さん。ここは天下の往来……このような場所で大声を出しては迷惑でしょう。移動しませんこと?」

 気に食わないのは、ならず者の三人組である。彼らの想定では、泣いて謝って土下座して、許しを請うた後いくらか金を巻き上げて終了となるはずなのだ。それが全く意に介さない様子で、移動しろという。おつきの剣士も何も言わないのが不気味であり、腹ただしくもあった。

「あそこの路地裏、そこで少しお話を──」






 イオの教会で、断罪人達をベンチの両隣に囲まれながら、騎士キースは、そう淡々と述べはじめた。

「事の発端は、分からぬ。いつからそうなったのか……もしかすれば父親のエルヴィン卿は遥か昔から、そうであったと知っていたのかもしれない。だが、もはや何も分からぬ。エルヴィン卿は亡くなられたからな」

 シルヴィア・エスカランテ。いわゆる名門貴族のお嬢様で、目を病んでいる。生活に困るほどではないが、色々な面倒事をボディガード兼世話係の剣士・ロゼが担当し、穏やかに暮らしていた。少なくとも、表面上は。

「シルヴィア様は、聡明な方だ。いずれは、貴族としての地位をエルヴィン卿から譲り受け、家を継ぐのではないか……もっぱらの噂だった。だが、五年前のある時、彼女の本性が外に出る事件が起こったのだ」

 事の発端は、北の亜人の国において反乱の兆しありと、イヴァンへ各貴族が集結した際の出来事であった。当主、クシャナ・ナギトと筆頭家臣のエルヴィンは、私兵をいち早くイヴァンへ集結させるため奮闘した。それは、ナギト領の領土を統べる支配者が不在にする事態がおこった事を意味した。そんな中、事件は起こったのだ。

「あの事件……申し訳ないが家中の恥ゆえ詳しくは話せぬ。だが結果だけは述べよう。数人の男女が……目を、抉り取られたのだ」





 銀色の短剣の刃は、ねっとりとした赤に染まっていた。

 主人の顔に飛んだ返り血を、剣士ロゼはハンカチで拭う。なんと美しい姿か、と思わず嘆息する。闇まではいかずとも薄暗い影の中で、愉悦に歪むは暗いグリーンの瞳、何よりも美しい姿だ。シルヴィアの手の中には、赤黒く血で濡れた、男からえぐりとった鳶色の眼球! 抉り取られた男はすでにだらりと力が抜けており、口から血を流している。命を落としたのだ。ロゼは三人組を暗がりへと誘いこみ、人混みを避ける事ができたと確信した瞬間──腰に帯びた剣を抜き、三人共一気に斬り殺してみせた。ロゼにとって見ればこの行動に疑問など何もない。なにもかも主人のため。目を病んだことで、こうして暗い場所でしか目隠しをとることができず、何も見ることが出来ない──決して出られぬ闇の世界から、光ある世界を望む主人のために。

 そして何より、そのような闇の世界を美しいと──闇の世界の住人である主人・シルヴィアを美しいと思う、自分のために。

 つまり主従の間では、奇妙な合致が存在したのである。シルヴィアは手の中で眼球をもてあそぶ。美しい。このような美しい瞳で、この醜き男は世界を見ていたのだ。なんと不公平な世界なのだろう。

「ねえ、ロゼ。素敵な出会いがあったでしょう?」

「は、左様で。瓶にございます」

「あらあら。さすがね。手際がいいわ」

 ロゼは液体で満たされた大瓶をうやうやしく差し出す。シルヴィアは嬉しそうに、そしてどこか惜しむような表情で眼球から手を離し、瓶の中へと落とした。その中には、無数の眼球! 様々な色の瞳の眼球が、まるで積み上がるかのごとくシルヴィアを恨めしげに見ているのだ!

「ごめんなさいね、みなさん……実家にいた時のように、一人一瓶と言うわけにはいかないの。もっと落ち着いたら、過ごしやすいようにしますからね……」

 そう言うと、シルヴィアは大きな瓶をいとおしげに撫でる。眼球は何も答えぬ。暗がりと血の池に沈んだ死体達も、何も答えなかった。彼女たちにとって今は、それでよかったのだ。

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